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yukitaka_sawama
夜の牙
片思いしていた先輩の結婚式の帰り道、雨が落ちてきた。
傘を忘れた私は、一粒の冷たさに涙が混ざり、ゆっくりと歩いた。
ヒールが濡れて動けなくなった頃、ふと見上げると、薄暗い通りに小さなバーが灯っていた。
扉が開き、見知らぬ男性が現れた。
切長の瞳の奥に、どこか影のような静けさがある。
私の姿を見ると、ためらいもなく駆け寄ってきた。
抱き上げられるように店へ入ると、コーヒーの香りで指先に温度が戻る。
「……あなた、夜の匂いがするね」
彼がそう呟いた。
理由は分からない。ただ、その声音が胸の奥を震わせた。
失恋の涙が乾くより先に、私は新しい鼓動を知った。
