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訪問利用者が自宅で死亡。バケツに頭を入れた刑事の話。

今から15年ぐらい前の話。

訪問介護の職員から、
焦った様子で連絡が入った。
「利用者さんが、明らかに息をしていません」

すぐに救急車を呼ぶよう伝えました。

救急搬送されましたが、
その利用者さんは亡くなりました。

こうなると、警察の出番です。
突然の死亡ですから、現場検証が行われます。

訪問介護の職員が「一人での対応が不安です」と言うので、私も現場検証に同席することになりました。

そこで、なかなか強烈な光景を目にしました。

その利用者さんは足が悪く、
普段からベッドの横に置いたバケツで排尿していたそうです。

そのバケツが長年使われていたためか、
バケツの中で尿の成分でかなり石灰化していました。

そして、亡くなっていたとき、
その利用者さんは、

ベッドの下に置いてあった、
そのバケツの中に頭を突っ込んだ状態だった。

ということでした。

現場検証が始まります。
そこには、ベテランと思われる刑事と若い刑事がいました。

ベテラン刑事が、
「で、どうだったんですか?」と
発見した訪問職員に質問があったので
職員はバケツに頭を突っ込んでいた事を説明しました。

そうするとベテラン刑事は
若手刑事に「やってみて」と指示。

若手刑事は一瞬
「えっ」という表情の後
「・・・わかりました」との返答。

若手刑事が、そのときの状況を再現します。
ベッドの下にバケツを置き、
「この位置だったんですか?」
「もう少しこっち?」

と確認しながら、実際に頭を入れてみる。
すると、ベテラン刑事の顔が、
明らかに面白がっている。

いや、笑ったらダメなのは分かっている。
でも、顔がもう、今にも吹き出しそうなんです。
周りにいる人たちも、みんな同じ。
誰も笑ってはいけない。
でも、みんな吹き出しそう。
そんな、なんとも言えない空気になりました。

もちろん、人が亡くなった現場です。
決して笑っていい話ではありません。

でも、あまりにも状況が状況だった。
若手刑事も、真面目な顔で仕事を続けています。

私はその様子を見ながら、
「刑事って大変な仕事だな……」と思いました。

そして、現場検証が終わったあと、
若手刑事に声を掛けました。

「大変ですね」

すると、その刑事は苦笑いしながら、
「仕事ですから」と。

その一言が、なんとも印象に残りました。
介護の仕事も大変です。
警察の仕事も大変です。
それぞれの仕事には、それぞれの大変さがあります。
普段は見えないだけで、
「こんなことまで仕事でやるのか」
ということが、世の中にはたくさんある。
今回の現場検証で、そんなことを改めて感じました。

どんな仕事も大変だな。
そんなことを思った、ある日の出来事でした。

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