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「借入を減らしたい」から始まった会社で、本当に変わったこと

「借入がかなり増えているので、将来心配にならないように減らしたいんです」

ある会社の後継経営者から、そんな相談を受けました。

長く事業を続け、一定の規模まで成長してきた会社です。

外から見れば、順調に経営されているように見えました。

私自身も最初は、
「これだけ事業を続けてきた会社なら、経営管理もしっかりしているのだろう」

と思っていました。

ところが、実際に数字を見てみると、少し印象が違いました。

借入の負担は小さくありません。

本人が将来を心配するのも理解できました。

ですから私も最初は、
「これは財務をどう改善するかという話かな」

と思っていました。

でも、話を聞き、数字を見ていくうちに、少し違うことが気になり始めました。

数字はある。でも、会社の実態がよく見えない

各事業は、どれくらい利益を出しているのか。

その利益は、どのような活動から生まれているのか。

現場では、誰が何をしているのか。

どこに負荷がかかっているのか。

そんなことを一つずつ確認していきました。

もちろん、何も管理していなかったわけではありません。

管理会計の仕組みもありました。

会議もありました。

数字も出ていました。

ただ、その数字を詳しく見ていくと、少しずつ違和感が出てきました。

長年運用していく中で、管理上の数字と、実際に現場で起きていることとの間にズレが生まれていたのです。

資料はある。

数字も並んでいる。

でも、
「この数字を、そのまま経営判断に使っていいのだろうか」

という状態でした。

借入が多いこと自体は、貸借対照表を見れば分かります。

でも、なぜその状態になっているのか。

どの事業が本当にキャッシュを生み出しているのか。

何を変えれば財務が改善するのか。

そこが分からなければ、
「借入を減らしましょう」

と言ったところで、具体的に何を変えるのか決められません。

この頃から私は、
借入だけを見ていても、この問題は解けないかもしれない。

と思うようになりました。

過去の経営を否定しても意味がない

こういう話を書くと、
「それまでの経営が間違っていたのではないか」

と思われるかもしれません。

私は、そうは考えていません。

会社には、その時々に合った経営があります。

経営者自身が強いリーダーシップを発揮した方がいい時期もある。

人に任せることで会社が伸びる時期もある。

この会社も、その時々の判断を積み重ねながら成長してきました。

だから、今があります。

ただ、会社の規模が変わる。

人が増える。

事業が増える。

そして、経営を次の世代へ引き継ぐ。

そうなると、
これまでうまくいっていた経営の仕組みが、そのまま次の10年にも合うとは限りません。

これは事業承継でよく起こることだと思います。

先代のやり方を全部否定する必要はない。

でも、全部そのままでもいけない。

何を残すのか。

何を変えるのか。

そして、自分はどんな会社にしたいのか。

それを決めるのは、今の経営者です。

最初の3か月は、かなり話しました

そこで私は、いったん借入の話から離れました。

「これから、この会社をどうしたいですか?」

「何を残したいですか?」

「何を変えたいですか?」

そんな話を何度もしました。

支援を始めた頃は、一度に5時間ほど。

月に複数回、かなり長い時間を使って話すこともありました。

特に最初の3か月は濃かったと思います。

すぐに改善策を並べたわけではありません。

私自身も、この時点で、
「これをやれば全部解決する」

という答えを持っていたわけではありません。

話を聞く。

数字を見る。

仮説を立てる。

確認する。

違っていたら戻る。

また考える。

その繰り返しでした。

そして少しずつ、後継者が本当に実現したいことが見えてきました。

単に借入残高を小さくしたいわけではない。

この先も会社を維持できる体制をつくりたい。

そのために、
自分たちが生み出せるキャッシュに合わせて、借入をコントロールできる会社にしたい。

そこが見えてくると、経営全体を一本につなげられるようになりました。

一つ変えると、次の問題が見えてきた

会社として目指す方向を整理し、それを具体的な経営目標に落としていきました。

次に、管理会計と資金繰りを見直しました。

すると、各事業の実態が少しずつ見えてきます。

そこで、各部門の責任者と定期的に話をするようにしました。

「この数字は、なぜこうなっているんですか?」

数字から業務へ遡っていく。

すると今度は、現場の仕事が見えてきます。

特定の人に仕事が集中している。

その人がいないと止まる。

同じ仕事でも、人によってやり方が違う。

では、業務の流れを整理しよう。

現場の人たち自身に業務フローを作ってもらいました。

一人しかできない仕事を洗い出す。

複数の人ができるようにする。

できる仕事を増やしていく。

すると、今度は人の育成や評価について考える必要が出てきます。

つまり、
一つの問題を解いたら、全部うまくいったわけではありません。

一つ見えるようになると、その奥にあった次の問題が見えてくる。

その繰り返しでした。

社員が休めるようになった

こうした取り組みを続ける中で、現場にも変化が出てきました。

その一つが、有給休暇でした。

特定の人しかできない仕事を減らし、複数の人が対応できるようにしたことで、以前より休みを取りやすくなりました。

さらに、
「誰が、どの仕事を、どこまでできるのか」

も見えやすくなりました。

すると、人を見る視点も変わります。

年数や印象だけではなく、
「以前より、何ができるようになったのか」

で見ることができる。

現場にとっても、自分が次に何をできるようになればいいのか分かります。

少しずつ、
「経営から言われたからやる」

だけではなく、
「自分たちの仕事を、自分たちで良くする」

という動きが出てきました。

経営者自身の現場との関わり方も変わっていきました。

今では、幹部が部門を越えて、
「会社全体として、どう売上を作るか」

を考える活動もしています。

もちろん、すべてが一気に変わったわけではありません。

ここまで数年かかっています。

そして、今でも課題は出てきます。

会社が変われば、考えるべき問題も変わるからです。

だから現在も、定期的に話を続けています。

「お金を減らす」から、「どこに使うかを決める」へ

財務面でも、数年かけて資金繰りは改善していきました。

利益構造が改善したことで、社員への分配とのバランスを取りながら、給与も上げられるようになりました。

そして、もう一つ大きな変化がありました。

この会社では、後継者が以前から新しい事業を育てていました。

新規事業は、すぐに利益を生むとは限りません。

時間もかかる。

失敗する可能性もある。

だからこそ、既存事業がキャッシュを生み出せることが重要です。

既存事業の経営を整えたことで、そこで生まれたキャッシュを新しい事業へ継続的に回せるようになりました。

その事業も数年かけて育ち、今では会社を支える新しい収益源の一つになっています。

さらに現在では、既存事業についても、将来を見据えた新たな投資を進めています。

ここで大事なのは、
「借入を減らせたから成功した」という話ではない

ということです。

最初に相談を受けた頃は、
「借入が増えているので減らしたい」

という話でした。

でも、目指していたのは、
「借入をしない会社」

ではなかったのだと思います。

必要なときには投資する。

その投資を支えられるキャッシュを生み出す。

そして、
自分たちが、どこまでリスクを取れるのかを自分たちで判断する。

キャッシュを残すのも、そのためです。

キャッシュがあるから、次の投資ができる。

投資したものが、新しい利益とキャッシュを生む。

そのキャッシュを、また次へ回していく。

数年前と比べて変わったのは、財務の数字だけではありません。

「お金が心配だから減らす」から、
「自分たちで判断して、どこにお金を使うかを決める」へ。

経営そのものが、少しずつ変わっていきました。

あなたの会社にも、似たことはないでしょうか

今回の相談は、
「借入を減らしたい」

から始まりました。

でも、実際に一緒に考えてきたのは、借入だけではありません。

もし今、
売上はあるのに、思ったほどお金が残らない。

管理会計はある。でも、その数字が本当に経営判断に使えるのか自信がない。

社員は頑張っている。でも、なぜか会社全体が噛み合わない。

先代の経営を否定したいわけではない。でも、そろそろ自分の経営に切り替えたい。

新しいことに投資したい。でも、どこまでお金を使っていいのか判断できない。

そんな感覚が一つでもあるなら、

今「問題だ」と思っていることの、もう一つ手前を見てみてもいいかもしれません。

私も最初から、本当の問題が分かっていたわけではありません。

話を聞く。

数字を見る。

現場を見る。

仮説を立てる。

違っていたら、また考える。

そうしながら、

「本当に考えるべきことは何なのか」

を一緒に探していきます。

だから、相談する前に問題をきれいに整理しておく必要はありません。

「何か変えたい」

「このままでいいとは思っていない」

「でも、何から考えればいいのか分からない」

それで十分です。

経営の整理60分

今回の会社も、最初から数年にわたる支援を決めていたわけではありません。

始まりは、
「借入が気になっている」

という一つの相談でした。

そこから話を聞き、数字を見ながら、
「本当に考えるべきことは何なのか」

を一つずつ整理していきました。

「経営の整理60分」も同じです。

60分で会社の問題を解決するための時間ではありません。

また、最初から長期の支援を前提にするものでもありません。

まず、

  • 今、何が気になっているのか

  • 本当はどうしたいのか

  • 何が事実で、何がまだ分からないのか

  • 次に何を確認し、何を決めるべきなのか

を一緒に整理します。

相談する前に、問題を整理しておく必要はありません。

むしろ、
「何か変えなければいけない気はする。でも、何から考えればいいのか分からない」

という段階で構いません。

今、会社で一番気になっていることを、一つだけ持ってきてください。

それが本当に最初に考えるべき問題なのかも含めて、一緒に整理します。

その先も継続して整理する必要があるのか。

自社だけで進められるのか。

別の専門家が必要なのか。

それも、整理してから考えればいいと思っています。

「経営の整理60分」の詳細・ご相談は、下記のお問い合わせフォームからご連絡ください。

お問い合わせ|実戦経営アドバイザー 熊谷篤


※本記事は、実際の経営支援事例をもとに、個社が特定されないよう業種・規模・時期その他の情報を一部変更・抽象化して再構成しています。

熊谷 篤
実戦経営アドバイザー/中小企業診断士

事業承継後の後継者、第二創業、新規事業責任者を中心に、経営者の意思決定整理と実行接続を支援しています。

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