【創作コント】走るヘビースモーカー
【はじめに】
これは…【ランマッスル】様の記事からインスピレーションを得て考えた寸劇なのですが……もちろんボクは【ランマッスル】様にお会いしたことはありません。たま~に【スキ】と【コメント】での接点があるだけなのですが、妄想力を駆使してこんなコントを考えました。
▼コチラの記事からインスピレーションを頂いて
※ 着想のきっかけとなった記事【ランマッスル】様からのクレームが入った場合は速やかに削除いたしますが、とりあえず…試しにこんな話
【創作コント】走るヘビースモーカー

【登場人物】
宮本:毎日ジョギングに勤しむ、高身長のイケメン、実年齢は45歳くらいらしいが、見た目は20歳代のスーパーモデル風、大手企業に勤務。
またの名を【SMOKINGランナー宮本】という。
佐々木:この寸劇の語りべ、20歳代後半フリーター、学生時代陸上競技で1500メートル走が専門だった。実家はリバーシティ近くにある△△△町のタバコ屋。(実家がたまたまタバコ屋だっただけで、喫煙反対派)
【本編】
休日の午前四時。
中央区の高層マンション群、リバーシティ周辺は、まだ夜明け前だというのにランナーで賑わっていた。
健康のためにゆっくり走る人。
マラソン大会を目指して追い込む人。
犬より速そうなおじいちゃん。
そんなランナーたちの中に、一人だけ明らかに場違いな男がいる。
煙を吐きながら走る男だ。
その名は、スモーキングランナー宮本。
「やあ、佐々木君。」
煙草をくわえたまま爽やかに笑う。
身長は一八〇センチを超え、彫りの深い顔立ちはモデルのようだ。
四十五歳とは思えない若々しさ。
しかも一流企業勤務。
美人の奥さん。
子ども二人。
人生のステータスを全部コンプリートしたような男である。
唯一の欠点が――
異常なほど煙草を吸うことだった。
「宮本さん。」
「なんだい?」
「走る前に一本…」
「うん。」
「走りながら一本…」
「うん。」
「走り終わって三本って…」
「うん。」
「……おかしいでしょう!そんなランナー聞いたことがない!」
宮本さんは首をかしげた。
「いや、君。"聞いたことない"って言うけど、現にここにいるじゃない。」
「そこじゃないんですよ!」
思わず叫んでしまう。
学生時代、僕は1500メートルを専門に走っていた。
肺活量。
心肺機能。
乳酸。
酸素摂取量。
散々勉強してきた。
その知識のすべてを、この男は煙とともに吹き飛ばしてくれる。
タバコを吸うランナー。な~んてデタラメが、許されていいはずがない!
「宮本さん、本当に陸上経験ないんですよね?」
「ないよ。」
「じゃあ何でそんな速いんです?」
「四十歳からダイエットで走り始めた。」
「そんな人が僕より速いわけないでしょう!」
「才能かな…………
自宅では許可が下りないからね。」
「え…許可って?」
「いや、なんでもないよ。こっちの話し……
でもねぇ。」
宮本さんはタバコを一本取り出した。
背中のランニングウェアのポケットは、エナジージェルではなくタバコで膨らんでいる。
普通のランナーなら補給食が入っている場所だ。
この人の場合はニコチンが補給食だった。
「私もやめたい気持ちはあるんだ。」
「本当ですか?」
「もちろん。」
「じゃあ勝負しましょう。」
「ほう?」
「今日僕が勝ったら禁煙してください。」
宮本さんは少し考え、
「じゃあ私が勝ったら。」
胸ポケットから銀色のライターを取り出した。
カキーン。
金属音が夜明け前の遊歩道に響く。
「デュポン。」
「え?」
「これ、十二万円した高級ライターだよ。」
「ライターが!?」
「君が勝ったら、このデュポンをあげるよ。」
「そんなもの持って走ってるんですか!」
「私が転んだら、先にライターを拾ってくれ。」
「嫌ですよ!」
宮本さんは笑った。
「それと。」
「私が勝ったら、キミの実家のタバコ屋から五カートン。」
「そこまで話が大きくなります!?」
実はこれが三度目の勝負だった。
一回目は一箱。
二回目は一カートン。
三回目は五カートンものタバコを、かすめ取るつもりなのだ!
気づけば僕は、宮本さんの喫煙生活を全力で支援していた。
「負けられない。」
皇居外周五キロ。
スタート。
……
……
結果。
また負けた。
「なんでだぁーーっ!!」
僕は歩道に倒れ込んだ。
煙草を吸いながら走る四十五歳に。
陸上経験者が三連敗。
神様は平等ではない。
「約束だ。」
宮本さんはニコニコしながら言う。
「五カートン。」
僕は実家のタバコ屋へ向かった。
その日一番の売り上げは、宮本さんに献上するための五カートン。
そして、このタバコ代金、払ったのは僕です。勝負に負けたから…
ぐうの音も出なかった。
◆ ◆ ◆
翌朝。
店番をしていると、スーツ姿の宮本さんが飛び込んできた。
顔色が真っ青だった。
「佐々木君。」
「おはようございます。」
「これ、返す。」
例の五カートンだった。
「え?」
「妻に見つかった。」
「……はい。」
「今週中に禁煙しなければ離婚だそうだ。」
僕は少しだけ安心した。
「じゃあ禁煙ですね。」
「もちろん。」
宮本さんは胸ポケットから例のデュポンを取り出した。
カキーン。
そして、
ズボンの反対側のポケットから百円ライターを取り出した。
「デュポンは妻に没収されそうだから、今日からこっちで吸う。」
超人的な脚力を持つ男でも。
奥さんには勝てないらしい。
――いや。
というか、この人、タバコやめる気ゼロだ!
【おしまい】
※ 登場人物の苗字は有名な二人の剣豪から拝借しました。
