[映画]『DUNE 砂の惑星 (ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督/2020)』

データ
原題: Dune: Part One
監督: Denis Villeneuve
製作年度: 2020
製作国: アメリカ=カナダ合作
アスペクト比: 1:2.35f
上映時間: 2h35
公開日: 2021年10月15日
鑑賞日: 2021年10月31日
配給: ワーナー・ブラザース映画
はじめに
2026年もいろいろと良い映画に巡り会ったが、今一番期待しているのは12月18日に公開予定の『デューン 砂の惑星 PART3 (Dune: Part Three)』。
「砂漠の救世主 (Dune Messiah/1969)」の映画化ということで、公開までに上下巻の原作を読み直し、そして映画版の1作目と2作目も観直そう…と思った。
今回は2020年の1作目の見直し。
概要
ワーナーのカンパニーロゴの前に重低音の不気味な声が流れる。サウダーカーの司祭のものとのこと。
夢は深淵からのメッセージだ
Dreams are messages from the deep.
プロローグ
フレメン族のチャニ(ゼンデイヤ)のナレーションで"それまでのこと"が語られる。
砂の惑星アラキスの領主ウラジミール・ハルコンネン男爵(ステラン・スカルスガルド)と兵士たちによるスパイスの略奪、そしてフレメン族の抵抗。フレメン族はハルコンネン家には勝てなかったが、ある日、皇帝の命令でハルコンネン家は突然アラキスを去っていった。
"なぜ皇帝はハルコンネンを去らせた? 次の抑圧者は誰だ?"
眩い太陽光線の反射の中、タイトル("DUNE PART ONE")が出る。
惑星カラダン
ポール・アトレイデス(ティモシー・シャラメ)が目覚める。寝室の暗闇に"10191年(Year 10191)"と表示される。
そして厚い雲(その下で稲光がみえる)がかかった山脈に「惑星カラダン アトレイデス家の領地 (Caladan Homeworld of House Atreides)」と表示される。

ポールと母親ジェシカ夫人(レベッカ・ファーガソン)の食卓。ジェシカは皇帝の使いを出迎えるために礼服に着替えるように話し、そして"ボイス"を使うように指示する。ポールは"ボイス"を使いこなすための訓練をしているところだった。さらにジェシカは夜な夜な見るという息子の悪夢を心配する。ポールはジェシカを気遣ってか、"見ていない"と答える。
"ボイス"はベネ・ゲセリットの修業で会得する能力で、声を使って相手を意のままに操ることができる。
ポールは自室で次の居住地である惑星アラキスについて学んでいる。高温と荒々しい気候で金属も切り裂くような砂嵐の中、先住民のフレメンだけが生態系に適応し、"シャイー=フルード"と呼ばれる巨大な砂虫(サンドワーム)が住む砂漠の奥地に隠れ住んでいる。健康維持や宗教儀式の幻覚剤としてスパイスを日常的に使用しているため目が青く変色し、それは"イバードの目"と呼ばれている。そしてスパイスは帝国にとって重要な資源となっている。
ポールの脳裏にいつも見るビジョンが浮かぶ。
岩の上にしゃがむフレメンの兵士、逆光の中でポールを見つめる青い目の少女、砂漠の中できらめくスパイス…クライマックスのポールとジャミスとの死闘のシーンをポールは予知夢として見ている
皇帝の使節団がカラダンに到着し、調印式が執り行われる。パーディシャー皇帝シャダム4世の使いである"変革の使者 (Herald of the Change)"がレト・アトレイデス公爵(オスカー・アイザック)に即時のアラキス統治を命令する。受け入れるレト。調印式を証人として見届けるベネ・ゲセリットのシスター(スアド・ファレス)。

使者を演じているのはストリート・ミュージシャンのベンジャミン・クレメンタイン。
ポールはレトの側近で、先遣隊としてアラキスに向かう準備をしているダンカン・アイダホ(ジェイソン・モモア)に自分も同行させてほしいと頼む。軍法会議ものだと笑って断るダンカンにポールは自分の夢の話をする。
それはアラキスと青い目をしたフレメンの少女、フレメンと行動を共にするダンカン、そして戦死したダンカンの姿だった。
心配するポールにダンカンは答える。
夢は物語を作るが
人は起きている時に大事を成し遂げる
Dreams make good stories,
but everything important happens when we're awake.
ポールは父レトに直談判するが許されなかった。そしてアラキスの"政治的リスク"について語る。
アトレイデス家は多くの大領家(貴族)の信頼を得て勢力を拡大しており、危機感を覚えたシャダム4世は、ハルコンネンからスパイスの利権を奪い、アトレイデスに与えることで両家を反目させ、結果、両家の勢力を失わせようとしている…とレトは推測していた。
そしてレトはこれを機会とみなし、スパイスの利権を手に入れるだけでなく、フレメンを味方につけることでアトレイデス家の勢力のさらなる拡大を目論んでいた。ダンカン達の先遣隊はまさにその目的を担っていた。
レトの側近のガーニー・ハレック(ジョシュ・ブローリン)はダンカンに代わってポールに剣術を指南することになる。
稽古後にガーニーは80年間スパイスの利権を手にしていたハルコンネンの反攻を必至であり、アラキスでは大変なことになる…とポールに警告する。
惑星ジエディ・プライム
「惑星ジエディ・プライム ハルコンネン家の領地 (Giedi Prime Homeworld of House Harkonnen)」の字幕。

ラッバーン(デイヴ・バウティスタ)は叔父であるハルコンネン男爵にアラキスからの最後の船が出発したことを説明する。ラッバーンは皇帝の指示に納得できず激高する。男爵は甥に「皇帝は危険で嫉妬深いお方だ」と答える。
惑星カラダン
夜中、寝ていたポールを母ジェシカが起こす。ジェシカが卒業した"ベネ・ゲセリット学院"の恩師で現在は皇帝の"読真師"である教母、ガイウス・ヘレン・モヒアム(シャーロット・ランプリング)が急遽やってきたという。目的はポールへの面会だった。
ジェシカと入れ替わりに家族医のウェリントン・ユエ(チャン・チェン)が現われポールのバイタルを測る。そしてジェシカに聞こえないような小声(中国語)でベネ・ゲセリットには企みがあるから注意するように伝える。
ポールは教母と面会する。教母は最初から高圧的な態度で"父親と同じ反抗的な目つきだ"という。教母は"ボイス"で無理やりポールをそばに引き寄せ、箱に手を入れさせる。ポールが手を入れると教母はすかさずポールの首元に毒針(ゴム・ジャッバール)を突きつけ、箱から手を抜くと即、死に至ると警告する。箱の中身を聴くと"苦痛だ"と答える。
そして"試練"が始まる。箱の中は"強烈な痛み(の幻覚)"だった。そしてポールは耐え切る。教母は夢の話(青い目の少女)を聞くとポールを解放する。
ジェシカに宇宙船まで見送る際に、教母はジェシカが禁止されているベネ・ゲセリットの修行をさせ、ポールを"クウィサッツ・ハデラック"に仕立て上げようとしていることを詰る。教母はアラキスでの下準備を終えたことをジェシカに告げ去っていく。
道筋はつけた
踏み外さぬとよいが
A path has been laid
Let's hope he doesn't squander it.
"試練"はベネ・ゲセリットの能力を授けるのに値するかを見極めるテストだった。ポールは母親から学んだ「恐怖を消す祈り(Litany Against Fear)」を駆使し最高度の激痛に耐え、教母もポールに"クウィサッツ・ハデラック"の素質があることを認めざるを得なくなる。
教母との話を影で聴いていたポールはジェシカからベネ・ゲセリットの真の目的を聞く。それは数千年に渡り血統を念入りに操作し、人類を未来に導く強靭な精神を持つ救世主を生み出すことだった。自分も"計画"の一部と知り衝撃を受けるポール。
惑星アラキス
アトレイデス家が到着する。迎えるダンカン率いる先遣隊。宇宙船のゲートが開くと輝く太陽と砂塵が目に入る。ポールは出迎えの中に一家のメンタートであるスフィル・ハワト(スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン)を目にする。ハワトは先遣隊が一部を除き現地の治安を確保したことをレトに報告する。
現地民はポールに向かって口々に"リサーン・アル=ガイブ"と叫ぶ。ジェシカとポールはハワトの案内でオーニソプター(小型飛行艇)に乗り込み移動する。ポールは現地民の叫んでいた言葉の意味をジェシカに尋ねる。言葉は"外世界から来た救世主"という意味のフレメンの伝説だった。ジェシカはベネ・ゲセリットの何世紀にも渡る裏工作で浸透させたと説明する。そして現地民にとっての救世主はポールだった。
オーニソプターは砂嵐や砂虫から都市を守る暴嵐壁を越えて都市へ。
レトはガーニーにハルコンネンの残していった工場や空港の整備を急がせ、ジェシカは現地人の使用人候補からシャダウト・メイプスを選ぶ。ジェシカはメイプスがフレメンであること、さらに衣服の下に武器を隠していることも見抜いた。メイプスが取り出したのはクリスナイフで、"リサーン・アル=ガイブの母と息子"への貢ぎ物と説明しジェシカに差し出す。クリスナイフはシャイー=フルード(砂虫)の歯で作られた聖なるナイフだった。
ポールが部屋で砂虫や砂漠の生態について学んでいるとハンター・シーカーに襲われそうになる。ハンター・シーカーは遠隔操作で空中を移動する超小型の暗殺装置だった。操作していたのは何カ月も屋敷に潜んでいたハルコンネンの残党だった。
惑星ジエディ・プライム
教母はハルコンネン男爵とメンタートのパイター・ド・ヴリース(デヴィッド・ダストマルチャン)と会合を開いている。教母は皇帝が親衛隊のサーダカー部隊をハルコンネンのアラキス攻略に協力させる旨を伝える。そして男爵に母と息子はベネ・ゲセリット側の人間なので殺さないようにと男爵に約束させる。教母が去った後、男爵は不満げなド・ヴリースに"砂漠が皆殺しにする"と話す。
惑星アラキス
レトとポールはダンカンと再会する。ダンカンは数カ月、砂漠の地下都市でフレメンと生活を共にし信用を得ていた。
そして族長スティルガー(ハビエル・バルデム)と面会する。スティルガーはスパイス採掘は構わないが、砂漠とフレメンに関わるなと釘をさし帰っていく。スティルガーはポールを見て"お前を知っている"と呟く。
ダンカンは月の磁場で役に立たないコンパスの代用品のバラコンパス、保水(スティル)スーツ、そして砂圧縮機などフレメンの道具をポールに説明する。そしてダンカンはフレメンが砂漠と一体化した誇り高い一族であることを語る。
一行はスパイスの採掘場で帝国の監察官リエト・カインズ博士(シャロン・ダンカン=ブルースター)と会う。監察官は保水スーツの着方を説明するが、ポールが既に完璧に着こなしているのを見て驚き、フレメン語で呟く。彼女もフレメンに受け入れられた異国人だった。
生来、この地の生き方を知る
He shall know your ways as through born to them.
一行は空中から巨大なスパイス採掘機DA9を見守っているとそこへ巨大な砂虫が現れる。カインズが連絡をすると採掘機を引き上げる飛行船が到着する。しかし採掘機を引き上げるワイヤーが一本装着できず、レトはDA9を捨てオーニソプターに採掘機にいる職員を分乗させることにする。ポールは砂漠に降り立ち職員に脱出を呼びかけるが、その時、頭の中に声が響く。
クウィサッツ・ハデラックが目覚める
Kwisatz Haderach awakes.
ポールはしゃがみ込み"足音で君だとわかる…"と呟く。そこへガーニーが救いにくる。そして採掘機は砂虫の巨大な口に飲み込まれる。

帰還後、ポールはジェシカに声が聞こえたときのことを話す。ポールの目にはいつも夢に出てくるフレメンの少女、クリスナイフで刺される自分自身もしくは誰かなどが見えた。そしてポールはジェシカが妊娠していることも見抜く。驚くジェシカ。
惑星サルーサ・セクンドゥス
「サルーサ・セクンドゥス 帝国軍の惑星 (Salusa Secundus Imperial Army Planet)」の字幕。

司祭がサーダカーに祝福をしている。その光景を見ながら高級将校のバシャール(ニール・ベル)とハルコンネン男爵のメンタートのド・ヴリースが話し合っている。バシャールはハルコンネンの軍隊だけでもアトレイデス家を倒せるのになぜ自分たちが…と不満を言うが、ド・ヴリースはアトレイデス家の軍隊はダンカンとガーニーによって鍛え上げられ、強力なものとなっていると説明する。
惑星アラキス
夜、レトは異変に気付き屋敷内を調査をしていると毒針に刺され身動きが取れなくなる。ハルコンネンに妻を人質に取られたユエの裏切りだった。ユエはアラキーンのシールドを無効化しハルコンネンとサーダカーの侵攻が始まる。
ユエはレトに裏切りを詫び、家紋の入った指輪を抜き取りポールを守ることを約束する。そしてレトの奥歯に毒ガスを仕込み、ハルコンネンの暗殺を計画する。
バシャール率いるサーダカーに捕らえられたポールとジェシカはオーニソプターに乗せられ、空から砂漠に捨て去られそうになる。ジェシカが"ボイス"を駆使してバシャールやパイロットを殺し無事に地上に降り立つが、彼方で王宮が炎上しているのを目にする。オーニソプターにはユエが用意したサバイバルキットが残されていた。
一方麻痺して動けないレトの前にはハルコンネンが居た。ユエはハルコンネンに妻の解放を要求するが、刺し殺される。ハルコンネンはアトレイデスに止めをさそうとした際に奥歯をかみ砕き毒ガスを噴出させる。ハルコンネンはシールドに守られていて、すぐ浮揚装置(サスペンサー)で部屋の上部に逃げたことで直撃は免れるが、メンタートのド・ヴリースは即死する。
母とともに砂漠に潜むポールは漂う砂漠のスパイスの中、幻想を見る。自分が指導者となって聖戦が起き大勢の命が失われる"未来"がやってくることを恐れる。ポールは母親にベネ・ゲセリットが自分を怪物に変えた、となじる。
ジェシカとポールはダンカンとカインズと合流する。カインズは帝国の生態学試験所に一行を案内する。カインズはかつて地下水を利用してアラキスを緑豊かな惑星に作り変えようとしたが、スパイスが発見されてからは計画は挫折したという。ポールは皇帝がサーダカーを使って大領家を取り潰そうとしており、それに抵抗するためには大領家の共闘が必要だと説明し、カインズに皇帝の裏切りを大領家に証言するように依頼する。そして帝国と大領家の全面戦争を避けるために、男系の跡継ぎの居ない皇帝の娘と結婚し、自らが皇帝になると宣言する。
まともに取り合おうとしないカインズにポールは自分がリサーン・アル=ガイブなら?と問う。自分が皇帝になれば、カインズの夢(アラキスの緑化)も実現できる。
そこへサーダカーが襲撃する。ダンカンはカインズに頼み、ジェシカとポールを脱出させ、自身はサーダカーと刺し違える。それはポールが見た夢の光景だった。
カインズはサンバーを使って砂虫をおびき寄せる。そこへサーダカーが現われ、カインズを裏切者として殺害する。カインズは"我が主人はただ一人、その名はシャイー=フルード"と言い、息絶える。カインズはサーダカー達とともに砂虫に飲み込まれる。
ジェシカとポールはオーニソプターで逃げるが追手が迫ってくる。ジェシカは"コリオリの嵐"の中に飛び込んでいく。ポールの頭の中にフレメンのジャミス(バブス・オルサンモクン)の声が響く。ジャミスもまた夢で見ただけの存在だった。
生命の神秘は解くべき問題ではない
The mystery of life isn't a problem to solve..
経験するべき現実
but a reality to experience.
止めては理解できぬひとつの過程だ
A process that cannot be understood by stopping.
その流れと共に動くのだ
We must move with the flow of the process.
その過程に加わり流れるのだ
We must join it. We must flow with it.
ポールは"任せろ"という心の声に合わせてオーニソプターのスイッチを切る。嵐の中で揉みくちゃになるオーニソプター。
惑星ジエディ・プライム
ラッバーンは解毒治療中のハルコンネンにポール達が"コリオリの嵐"に入ったことを伝える。時速800kmの暴風の中では生き残れないというラッバーンにハルコンネンは隠していたスパイスの在庫の販売の再開を指示する。
惑星アラキス
ポールはオーニソプターを無事に砂漠に着陸させる。二人はダンカンが過ごしたというフレメンの居住区を探し求めて砂漠を彷徨う。そしてフレメンに遭遇する。しかし彼らはポール達を殺し体内の水分を抜き取ろうと考えていた。ポールはフレメンの中にスティルガーがいることに気づく。スティルガーもポールを認め仲間を制する。そこでポールはフレメンの中に夢の中で何度も目にした少女、チャニと出逢う。
しかし戦士ジャミス(バブス・オルサンモクン)はスティルガーの指示に従わず、ポールは決闘することになる。そのときチャニが手渡したクリスナイフもまた夢で何度も目にしたものだった。ポールの脳裏に自分が刺殺される幻影が浮かぶ。
ポールは何度も優勢になるがとどめを刺さない。スティルガーはジェシカに殺すか殺されるしかない決闘なのになぜ殺さないのかと問う。ジェシカは"ポールは人を殺したことが無い"と答える。
突然、ポールの脳裏に声が響く。
クウィサッツ・ハデラックよ、 出でよ 立ち上がれ
Kwisatz Haderach. Climb up. Rise.
そしてポールは一瞬にしてジャミスを殺す。
スティルガーと仲間達はポールを受け入れ、タブールの群居洞(シエチ)へ連れていこうとする。ジェシカは密輸船を手配してもらい脱出しようとする。
しかしポールは父親レトの目的がスパイスや富ではなく、フレメンとの共闘であったことを伝え、自分たちを受け入れるなら共に戦おうとスティルガーに伝える。
群居洞に戻る途中、砂虫を操るフレメンの姿を目にし"砂漠の力だ (Desert power)"と呟くと、チャニが振り返り微笑みながら"まだ始まったばかり (This is only the beginning)"と口にする。
チャニの顔は太陽の光で逆光となるが、これもポールが見続けた予知夢の1シーンだった。

ポールは何かを悟ったかのようにスティルガー達についていく。
感想
原作と映画
『Dune デューン 砂の惑星』は原作を知らない人間にはかなり不親切な映画だと思った。原作も独特な用語に溢れ、読み進めるのに相当な体力を要したが、ヴィルヌーヴの映画はその原作を通ってきた読者を第一に考えた作品だった。
原作の映画化は①原作を忠実に映画化②原作のエッセンスを活かして自由に映画化、そして③原作のネームバリューに乗っかっただけの全くの別物の三種類に分けられると思う。
『Dune デューン 砂の惑星』は①にあたるが、その中で①観客が原作を知らないことを前提としたアプローチと②その逆で観客が原作を読んでいることを前提にしたアプローチに二分する。
ちなみに1984年のデヴィッド・リンチ版は②だと思う。リンチ自身はもしかしたら画家としてのセンスをもとに"忠実な"映画化を目指したかも知れないが。ただ私はこれはこれで好きな作品である。最初観たとき(新宿ピカデリーで70mm上映)はヘンな映画…と思ったが、その後、10数年後にDVDで観直した際に意外と楽しんだ。リンチ自身、忌み嫌っているらしいがリンチらしさが滲み出るセンスのある作品だと思う。
①の場合、セリフが説明口調になったり、解説画像が増えたりするものだが、この作品は②。"クウィサッツ・ハデラック"、"ベネ・ゲセリット"、"リサーン・アル=ガイブ"など、台詞等で簡単に説明はあるが、次々とオリジナルの言葉が飛び出すので、やはり事前に押さえておかないとついていけなくなる恐れがある。
ヴィルヌーヴ監督が目指したのは、フランク・ハーバートのとてつもなく巨大な原作の世界を映画というたかちで忠実にで再現したものであり(馬鹿正直に一から十まで映像化したという意味ではない)、原作を知らない観客にもストーリーが理解できるように作りつつも、原作のエッセンスを損なわない(=原作のファンを怒らせない?)作りを目指した。観客に解りやすくするような改変はせず、そのうえで原作のいくつかの要素を削ったり簡略化している。それでも原作の持つエッセンスがしっかりと息づいていると感じさせられた。
生半可に映画化しない、という監督の覚悟を感じられた。
スペーシング・ギルドや航宙師の扱いは大幅に削られて台詞で簡単に語られるだけだが、この作品ではアトレイデス家とハルコンネン家の勢力争い、裏で手を引くのが皇帝ということは解るし、それで十分だろう。
原作はコリノ家のパーディシャー宇宙皇帝、大領家の貴族たち、そして宇宙航行ギルドの3勢力が対立していて、その裏でベネ・ゲセリットが暗躍している。ギルドが管理するチョム公社でスパイスが売買されているため、実は皇帝も迂闊に手を出せない強力な組織となっている。
そのスパイスは恒星間移動時に航宙士(ナビゲーター)が安全な航路を計算するためには不可欠であり、それゆえにスパイスの唯一の産出星のアラキンは権力の象徴となった。
過去にAIと人類の間で戦争があり、その後、人類はAIを一切廃棄したことから、スパイスに頼ったり、人間計算機であるメンタートが誕生するに至った。
と言った話が省略されたり、一言、二言で片付けられているのは、映画を楽しむうえで必要ないから、と判断したためだろう。
一方、デヴィッド・リンチはグロテスクな航宙師(ナヴィゲーター)をわざわざ登場させた。自身のイマジネーション欲を満たすためだと思った。
ベネ・ゲセリットも狂信的な宗教組織ではなく、数千年に渡り"クウィサッツ・ハデラック"を生み出すために血統のコントロールをしてきており、アラキスのフレメン族にも"救世主の到来"を伝説として根付かせる裏工作をして、"クウィサッツ・ハデラック"たるポールがその"救世主"となることを期待されている…も、ジェシカが簡単に説明しているだけだが、それでもなんとなくポールのジレンマを感じることはできる。
そしてポールも単純な悩み多き若者ではない。『フォルスタッフ 真夜中の鐘』で悪ガキのハル皇太子がドライなヘンリー五世に変わっていく様を重ねることもできるが話はそんなに簡単ではない。
ポールは昔から予知夢に悩まされ、母ジェシカからベネ・ゲセリット仕込みの英才教育を受け、父親からはアトレイデス家の跡継ぎを期待され、挙句、自分の存在はゲセリットの計画の一部に過ぎないことを知ってしまう。
ポールはこのまま救世主になるしか道は無いのか苦悶する。予知夢では救世主である自分に熱狂するフレメンの民と大量の死者(山のように積み上げられた死体が炎上する光景が繰り返される)が交互にフラッシュバックする。
一方で直接的な敵、父の仇であるハルコンネン男爵や、大領家を取り潰そうと画策する皇帝との対決(復讐)は避けて通れない。そのためにはフレメンの協力が必要で、フレメンの救世主にならなければならない。
ポールが下した決断はハルコンネンを倒し、皇帝の娘婿となり皇帝を引退させ、自身が皇帝となることだった。これが大量の死者を出さずに目的を達成する方法だった。
そして砂漠で浴びたスパイスと初めての殺人がポールの覚醒を後押しする。特に後者は、クリスナイフで殺される自分、誰かを殺す自分という、予知夢で見たぼんやりした未来を自らの意思で主体的に確定させた、重要な出来事となる。
この第一作はポールの覚醒(と覚悟)によって、ベネ・ゲセリットも想定していない未来が動き出すという、壮大な序章となった。
おわりに
改めて鑑賞すると二作目への種まき的な作品であるのは間違いないが、それでもひとつの作品としての完成度が高かった。二作目を再見するのが楽しみ。

