スタートアップの「フラットな組織」は、3年で必ずJTC化する。
お前の会社も、もう始まってるぞ。
「うちはフラットだから」――創業3年目くらいの会社でよく聞くセリフだ。役職じゃなく役割で呼び合う。誰でも社長に直接DMできる。意思決定は爆速。会議は最小限。
JTCを下に見てるスタートアップ界隈の人間ほど、この言葉を得意げに使う。
でも俺は知ってる。これは「フラットな組織」じゃない。「まだ人数が少ないだけの組織」だ。時間の問題でしかない。
「フラット」の正体は、ただの人数不足
フラットな組織が機能する条件は一つだけだ。「全員が、全員の状況を把握できる」こと。
人数が少なければ、誰が何をやってるか、誰に何を頼めばいいか、自然と頭に入る。評価も「あいつ頑張ってるな」で済む。意思決定も「ちょっと集まって決めよう」で十分だ。
これがだいたい7〜10人くらいまで。それを超えると、頭の中だけで組織を把握するのは無理になる。脳のキャパの問題で、文化とは関係ない。
JTC化のスイッチは、5つ。順番に全部入る。
ここからは構造の話だ。会社の業種も文化も関係ない。人数が増えれば、次の5つが、順番に必ず来る。
1. 評価制度
「あいつ頑張ってるな」で給与を決められる人数を超える。誰かが評価のルールを作る。ルールができれば、人はそれに合わせて動き始める。
2. 階層
評価する側と評価される側に分かれる。「マネージャー」という役職ができる。最初は「呼び方だけだから」と言われる。半年後、その呼び方に給与も決裁権もぶら下がっている。
3. 派閥
創業メンバーは、会社を自分のものだと思っている。あとから入ったメンバーは、職場だと思っている。同じ「うちの会社」でも、意味が違う。これが社内最初の派閥になる。
4. ガバナンス
投資家が入る。取締役会ができる。「なぜその判断をしたのか」を説明する義務が発生する。説明には、プロセスが必要だ。そして一度できたプロセスは、二度と消えない。
5. 根回し
組織が部門に分かれ、それぞれにKPIがつく。やがてKPI同士がぶつかる。会議の場で正面からやると面倒だから、誰かが先に話をつけにいく。根回しの始まりだ。
もう始まってる。何個刺さった?
「うちはまだ大丈夫」と思ってるなら、一度数えてみてほしい。
- 会議の数が、半年前より増えた
- 「これ誰が決めるんだっけ」が口癖になった
- Slackでは本音、DMでは本音、会議では建前――でも誰もそれを変だと思わない
- 「あの人を通さないと話が進まない」人が、役職とは関係なく、もう存在する
- OKRはある。でも、誰も本気で見てない
- 新人がもう「空気を読む」を覚えている
これ、JTCの新人研修でやってることと、全く同じだ。
JTCは「病気」じゃない。「サイズ」だ
ここが一番言いたいことだ。
JTCを下に見てる人間は、原因を「文化」とか「経営陣の無能さ」だと思ってる。でも俺はJTCもベンチャーも両方の内側から見てきた。それは違う。
JTCの面倒くさい仕組みは、ほとんどが「大量の人間を、ある程度公平に動かすために、過去の誰かが考えた答え」だ。承認プロセス、稟議、根回し、評価制度――全部、根っこは同じだ。
スタートアップが今フラットなのは、文化が良いからじゃなく、まだその問題に出会っていないだけだ。人数が増えれば必ず出会う。そして、同じ答えに、ゼロから、しかも下手に辿り着く。
JTCが嫌いなら、JTCを再発明するな
避けられないなら、道は二つだ。
一つ。JTC化が始まってから、後手後手で対応する。これが大半のスタートアップの末路で、「いつの間にか大企業病になってた」というやつだ。
もう一つ。人数が増える前から、評価・権限・意思決定のルールを、薄くてもいいから先に作っておく。JTCみたいに重くする必要はない。ただ「ゼロ」のままにしておくと、組織は勝手に、一番ダサい形でルールを作り始める。
JTCの仕組みは重すぎる。でも「ルールはゼロでいい」というのも、同じくらいヤバい。
「うちはフラットだから最高」と思ってるなら、それは今が一番幸せな瞬間だ。その幸せには、賞味期限がついてる。
