レモンが消えた
我が家のベランダで育てているレモンの木。
もう10年くらいになる。
なのに、これまで実が採れたのは、たったひとつ。
昨年のことだ。
それはもう、大事に大事に使った。
そして今年。
小さな実がひとつだけついた。
少しずつ大きくなって、3cmくらいまで育っていた。
「今年は収穫できるかな」
毎日、密かに楽しみにしていた。
ところが今日。
レモンの木を見てみると……
ない。
レモンが、ない。
枝には、ポロッと取れたような跡だけが残っている。
ベランダを探してみた。
ない。
どこにもない。
そこで、ふと思い出した。
少し前、ベランダの縁にセミの死骸が落ちていた。
私は虫が苦手なので、怖くて触れない。
「そのうち、風で飛んでいくだろう」
そう思って、そのまま放置していた。
そして数日後。
「あれ? セミがいない」
きっと風で飛んでいったのだろう。
よかった。
触らなくて済んだ。
……と思っていた。
でも、今になって考えると。
セミが飛んでいくほどの風が吹いたってことだよね?
ということは……
レモンも?
まさか。
いや、でも。
レモン、3cmあるよ?
……飛ぶ?
飛んだの?
私がセミを放っておいたから?
セミの呪い?
いやいや、そんなことはない。
たぶん。
きっと。
そう思いたい。
でも、今年のレモンはもう採れません。
10年育てて、昨年やっとひとつ。
今年も、たったひとつ。
それなのに。
消えた。
悲しい。
でも、来年こそは。
たくさん花が咲いて、 たくさん実がつきますように。
そして今度は……
レモンが飛んでいかない程度の風でありますように。
