JTC技術者が破滅する典型的パターン

性格の悪い筆者が毎月密かに楽しみにしているものがある。それは会社で公開される懲戒処分者一覧の更新である。訓告から出勤停止、降格、懲戒解雇まで、その月に発生した懲戒事案が簡潔に掲載される。

もちろん個人名は伏せられている。しかし何年も見続けていると、どのような行為が重く処分されるのかという傾向が見えてくる。

技術力とは全く関係なく、自らキャリアを終わらせてしまう人には一定の共通点が存在するのである。

①原価・人件費の付け替え

技術系で比較的多いのが、工数や原価の付け替えである。

例えば、本来はA案件へ計上すべき工数をB案件へ付け替えたり、予算超過を隠すために別案件へ振り替えたりする行為である。

本人は「少しくらいなら」「後で戻せばいい」と考えていることも多い。しかし会社にとって原価管理は経営そのものであり、不正経理に近い問題として扱われる。内部監査や内部通報で発覚することも少なくなく、懲戒処分は比較的重くなりやすい。特に課長職でのやらかしが多い。

②ハラスメント

近年、最も増えていると感じるのがハラスメント事案である。特に管理職の中でも上位の者や一騎当千クラスの課長が処分対象となるケースが目立つ。

部下への暴言、人格否定、威圧的な指導、飲み会への参加強要など、以前なら熱血指導で済まされていた行為も、現在ではコンプライアンス違反となる可能性が高い。

役職が上がるほど数多くの部下との接点が増えるため、気を付けすぎることはない。

③異性間トラブル

社内恋愛自体は珍しいものではない。問題となるのは、

  • 相手が望まない言動

  • 立場を利用した接触

  • 執拗な誘い

  • 不適切なコミュニケーション

などである。

一度問題になると、本人だけでなく部署全体へ悪影響を及ぼすこともある。社会人になれば、誤解されない距離感を保つことも重要な能力の一つである。

実体験で本当にしょうもないと感じた事例があり、男性技術者と派遣女性の業務中の恋愛であり、カードキーが無いと入れない部屋で仕事をほっぽり出してイチャついていた。なお、その派遣女性はすぐ居なくなり、男性技術者は出世の芽が消えたものの、管理職で定年までしがみ付いたようである。

④金銭に関する不正

昔からなくならないのが金銭問題である。代表例として、

  • 出張旅費の水増し請求

  • 通勤交通費の不正受給

  • 経費の私的利用

  • 領収書の改ざん

などが挙げられる。

金額が数千円程度であっても、会社を故意に欺いたという事実そのものが問題となる。定期券を買っていないにもかかわらず、定期券代を会社に請求し、人事から「定期券を出して」と抜き打ちチェックが入って青ざめるというのが本当に情けない。

他にもカラ出張は論外として、食事代を多く請求するのも控えた方が良い。出張が終わって17時に帰宅したにもかかわらず、夕食代にチェックを入れて2,000円弱請求するのもやめるべきである。

⑤刑事事件につながる行為

最も重い処分となるのは、刑事事件へ発展するケースである。

  • 酒に酔った状態での暴行

  • わいせつ行為

  • 未成年者に対する犯罪

  • 窃盗

  • 薬物犯罪

などは、会社の信用を著しく失墜させるため、一発で懲戒解雇となる可能性が極めて高い。会社員である前に、一人の社会人として法令を守ることが大前提である。

意外と懲戒になりにくいもの

一方で、社内では問題視されるものの、直ちに懲戒解雇へ結び付くとは限らない事例もある。

①ローパフォーマー

仕事ができないこと自体は懲戒理由にはなりにくい。成果が出ないことは人事評価へ影響するが、それだけで解雇されることは少ない。

ただし、上司の業務命令を繰り返し拒否したり、改善指導にも従わなかったりする場合は別である。最初は訓告でも、繰り返すことで処分は徐々に重くなる。

②遅刻・早退・私用外出

現在はフレックスタイム制度や裁量労働制を導入する企業も多い。そのため、昔ほど数十分の遅刻だけで問題になることは少なくなった。もちろん無断欠勤や慢性的な遅刻は別である。

しかし勤務制度の範囲内で適切に労働時間を管理している限り、懲戒へ直結するケースはそれほど多くない。

③一般社員による情報漏洩

近年ではSNSによる情報漏洩が目立つ。例えば、社内設備や資料が背景に写り込んだ写真を安易に投稿してしまうケースである。

最近ではSNSアプリを利用した社内情報の流出も話題となった。企業トップが謝罪会見を開くような事態へ発展することもあるが、一般社員の場合は、故意性や漏洩した情報の重要度などを総合的に判断し、訓告や始末書などに留まるケースも少なくない。

もちろん、処分が軽いから大丈夫という話ではない。

昔ながらの技術者を真似してはいけない

工場や製造現場では、昔ながらの気質を持つベテラン技術者や職人と仕事をする機会がある。口数が少なく、ぶっきらぼうで、敬語もあまり使わない。新人から見ると、これが現場の文化なのだと感じることもあるだろう。

しかし、その振る舞いまで真似するべきではない。

ベテラン社員は長年積み重ねた技術力や実績、人間関係という土台があるからこそ許容されている面がある。一方で、若手社員が同じ態度を取れば、「協調性がない」「コミュニケーション能力に問題がある」と評価されかねない。

さらに現在のJTCは、コンプライアンスやハラスメント防止を重視する時代である。昔なら許容された厳しい言動も、今では処分対象となる可能性がある。学ぶべきなのは技術であって、時代遅れになりつつあるコミュニケーションではない。

おわりに

毎月の懲戒処分一覧を眺めていて感じるのは、会社を去る人の多くは技術力が低い人ではないということである。

むしろ、処分理由の大半は技術とは無関係である。原価管理、不正経理、金銭管理、ハラスメント、情報管理、そして法令遵守。JTCで長く働くために本当に重要なのは、突出した技術者になることだけではない。

「信用を失わない社会人」であり続けることである。

仕事で失敗しても、多くの場合はやり直す機会がある。しかし、コンプライアンス違反によって失った信用は、一度でキャリアそのものを終わらせることがある。技術は時間をかけて身に付けられる。しかし、信用は一瞬で失われる。それが、毎月更新される懲戒処分一覧から筆者が学び続けている、最も大きな教訓である。

以上。

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