夏が終わる前に
途方もなく長いと感じていたはずの夏も、もうすぐ終わろうとしている。あっという間に曼珠沙華が咲き、すぐあとを追うように、コスモスが咲くのだろう。
夏の間、ずっと伝えなければならないと思っていたことがある。僕たちは、呆れるほど長い時間を共に過ごしてきたよね。くだらない話を延々としたかと思えば、お互いの人生に関わるような話もたくさんしてきた。その一つ一つが、僕にとって掛け替えのないものであったように、君にとっても大切な時間であって欲しいと願って止まない。
夏が始まる前、台風が列島を覆った夜に、日本を離れようと思うと話したことを覚えているだろうか。
「あなたの思い付きには慣れたから、そんな話は驚かない」と君は言ったよね。その言葉には、「自分を置いて異国へ行くなんて、バカなことはしないでしょう」という信頼が込められているようにも感じて、実は少し嬉しかったんだ。
もちろん、君が一緒に行ってくれるなら僕は大喜びだけれど、これまでがそうであったように、どちらかの決断によって、どちらかの人生が変えられることを僕は望んでいない。だからあえて、出発の直前にこんなメールを打っている。
明後日、僕はパリに旅立つ。
僕は知っているよ。
君がこのメールを読んで、慌てて電話を掛けてきたり、この部屋に突然現れたりする女性ではないこと。きっと君は「祝福あれ」と言って、僕を見送ってくれる。そして、空港に見送りに来ることもなく、君は君にしかできない仕事を淡々とこなすのだろう。
パリの滞在は、3年を予定している。長いようで、あっという間かもしれない。それでも、日本での最後の時間に、君に大切なことを伝えておきたい。
僕が帰国したら、結婚してくれないか?
この3年は、僕と君をどう変えるだろうか。不安がないと言ったら嘘だけれど、その先にある君との人生をとても楽しみにしている。これからはずっと、僕の帰る場所が君であって欲しいんだ。
Bonne chance!
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