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売上高より利益を見る理由|企業分析では「どれだけ売れたか」だけでは不十分

企業の決算を見るとき、最初に目に入る数字のひとつが**「売上高」**です。

「売上高が過去最高!」

「売上高が前年比20%増!」

このようなニュースを見ると、

売上が増えているなら、この会社は成長しているのでは?

と思うかもしれません。

もちろん、売上高は企業分析において重要な数字です。

しかし、売上高が増えている=会社が儲かっているとは限りません。

企業分析では、売上高だけでなく、むしろその先にある**「利益」まで確認することが重要**です。

今回は、

  • なぜ売上高だけでは企業を評価できないのか

  • どの利益を見ればよいのか

  • 売上高と利益をどう組み合わせて見るのか

を初心者向けに解説します。


そもそも売上高とは?

売上高とは、企業が商品やサービスを販売して得た金額です。

たとえば、1個1,000円の商品を10万個販売した場合、

1,000円 × 10万個 = 売上高1億円

となります。

つまり売上高を見ると、

その会社のビジネスの規模

をある程度把握できます。

基本的には、売上高が継続して増えている企業は、商品やサービスの販売規模が拡大していると考えられます。

ただし、ここで注意したいポイントがあります。

売上高からは「どれくらい儲かったのか」が分からないということです。


売上高が増えても利益が増えるとは限らない

簡単な例を考えてみましょう。

A社の業績が次のように変化したとします。

前年今年売上高100億円120億円営業利益10億円6億円営業利益率10%5%

売上高は、

100億円 → 120億円

と20%増えています。

一見すると好調に見えます。

しかし、営業利益は、

10億円 → 6億円

と40%減っています。

なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?

たとえば、

  • 原材料価格が上昇した

  • 人件費が増えた

  • 広告宣伝費を大量に使った

  • 値下げして販売数量を増やした

  • 利益率の低い商品の売上が増えた

といった可能性があります。

つまり、

売上高は「どれだけ売れたか」
利益は「売った結果、どれだけ儲かったか」

を表しています。

売上高だけを見ていると、こうした収益性の悪化を見逃してしまいます。


投資家が注目したいのは「利益の成長」

株式投資では、売上高の成長も重要ですが、最終的には利益をどれだけ成長させられるかが非常に重要になります。

なぜなら、企業が生み出した利益は、

  • 事業への再投資

  • 新規事業への投資

  • 配当

  • 自社株買い

  • 借入金の返済

などに使えるからです。

そして、利益が継続的に増えれば、長期的にはEPS(1株当たり利益)の成長にもつながります。

たとえば、発行済株式数が変わらないと仮定して、

純利益100億円 → 150億円

となれば、EPSも基本的には50%増加します。

株価を考える代表的な式に、

株価 = EPS × PER

があります。

PERが変わらなければ、EPSの成長は株価上昇につながる可能性があります。

そのため投資家にとっては、

「売上高が何%増えたか」だけでなく、「その売上から利益をどれだけ生み出せているか」

が重要なのです。


では、どの利益を見ればいい?

決算書には、いくつかの利益が登場します。

代表的なのが、

営業利益・経常利益・純利益

です。

初心者の方が企業の本業を分析するのであれば、まず注目したいのが営業利益です。

営業利益は簡単にいうと、

本業でどれだけ利益を稼いだのか

を見るための指標です。

たとえば、小売企業であれば、

商品を販売して得た売上高から、商品の仕入原価や店舗の人件費、家賃などを差し引いて残った利益が営業利益になります。

そのため、

売上高と営業利益をセットで見る

だけでも企業分析の精度はかなり上がります。


「増収増益」だけではなく利益率も見る

さらに一歩進んだ企業分析では、

営業利益率

も確認してみましょう。

営業利益率は、

営業利益 ÷ 売上高 × 100

で計算できます。

たとえば、

売上高100億円
営業利益10億円

なら、

営業利益率=10%

です。

翌年、

売上高120億円
営業利益18億円

になったとすると、

営業利益率=15%

まで上昇します。

これは非常に良い変化です。

売上高は20%増加していますが、営業利益は80%増加しています。

つまり、

売上の成長以上のスピードで利益が成長している

ということです。

このような企業では、

  • 値上げが進んでいる

  • 高利益率商品の販売が増えている

  • 固定費の負担が相対的に小さくなっている

  • 生産性が改善している

  • 事業の規模拡大によるメリットが出ている

などの可能性があります。

企業分析では、こうした変化を見つけることが重要です。


売上高が増えていない企業でも利益が伸びることがある

逆に、売上高がほとんど増えていなくても、利益が大きく伸びる企業もあります。

たとえば、

前年今年売上高100億円105億円営業利益5億円10億円営業利益率5%9.5%

売上高はわずか5%しか増えていません。

しかし、営業利益は、

5億円 → 10億円

と2倍になっています。

これは、

  • 値上げ

  • 不採算商品の縮小

  • 高利益率商品の拡大

  • コスト削減

  • 稼働率の改善

などによって、企業の**「稼ぐ力」そのものが改善した**可能性があります。

こうした変化は、売上高だけを見ていては気づきにくいポイントです。


特に注目したい「営業レバレッジ」

企業分析でぜひ覚えておきたい考え方が、

営業レバレッジ

です。

固定費の割合が大きい企業では、ある程度まで売上が増えると、追加の売上が利益に大きく貢献することがあります。

たとえば、

売上高が10%増えたのに、

営業利益が30%、40%と増える

ケースです。

これは、すでに人件費や設備費などの固定費を負担しているため、売上増加分の一部が大きく利益へ落ちてくるからです。

株式市場では、このような**「利益成長が加速するタイミング」**が注目されることがあります。

そのため私は、決算を見るときに、

売上高成長率 < 営業利益成長率

となっている企業には注目する価値があると考えています。


ただし「利益だけ見ればいい」わけでもない

ここまで読むと、

それなら売上高は見なくてもいいのでは?

と思うかもしれません。

しかし、それも違います。

たとえば、

売上高 ▲10%
営業利益 +20%

という企業があったとします。

一見すると利益が増えているので良さそうです。

しかし、利益増加の理由が単純なコスト削減だった場合、それを何年も続けることには限界があります。

一方、

売上高 +15%
営業利益 +30%

であれば、

事業を拡大しながら収益性も改善している

可能性があります。

そのため重要なのは、

売上高か利益か、どちらか一方を見るのではなく、両方の関係を見ること

です。


決算ではこの順番で確認しよう

初心者の方であれば、決算短信を見るときは次の順番がおすすめです。

① 売上高は増えているか

② 営業利益は増えているか

③ 営業利益は売上高より速く増えているか

④ 営業利益率は改善しているか

⑤ なぜ利益率が改善・悪化したのか

特に重要なのが⑤です。

数字を見るだけではなく、

「なぜ利益が増えたのか?」

まで考えてみましょう。

値上げなのか。

販売数量の増加なのか。

高利益率商品の拡大なのか。

コスト削減なのか。

新規事業なのか。

この理由まで確認すると、企業の利益成長が一時的なのか、今後も続く可能性があるのかを考えられるようになります。


まとめ

今回は「売上高より利益を見る理由」について解説しました。

重要なポイントをまとめると、

  • 売上高は「ビジネスの規模」を表す

  • 利益は「どれだけ儲かったか」を表す

  • 売上高が増えても利益が減ることはある

  • 本業を見るなら、まず営業利益に注目する

  • 営業利益率を見ると「稼ぐ力」の変化が分かる

  • 売上高より営業利益が速く伸びる企業は要注目

  • 最も重要なのは「なぜ利益が増えたのか」を考えること

です。

企業分析を始めたばかりの頃は、どうしても「売上高○%増」という数字に目が行きがちです。

しかし、一歩進んで、

「その売上から、どれだけ利益を生み出せているのか?」

と考えてみてください。

さらに、

「なぜ利益率が変化したのか?」

まで考えられるようになると、決算を見る視点が大きく変わってきます。

企業分析とは、単に数字を覚えることではありません。

数字の変化から、その会社のビジネスで何が起きているのかを考えることが大切です。

この視点を身につけると、決算短信を読むのが少しずつ面白くなってくると思います。

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