35年来の親友と決別した夜
Sと出会ったのは大学のゼミだった。本格的に仲良くなったのは社会人になってからだ。お互いが人生の岐路に立ったとき、必ず報告しあった。彼を死ぬまで親友だと信じていた。
それは、一昨年のことだった。
Tの転職祝いにSを呼んで妻と4人で焼肉をした。一足早く親戚の同族中小企業に転職したSは忘年会で吐露した葛藤を漸く振り切った様子。
聞くと腹いせに私用のガソリン、ETC、駐車場に洗車、挙げ句の果ては嫁のホームセンターの買い物まで会社の経費で落としているという。
流石に呆れて「倫理観の欠如はあなたの品格まで落とすから一線を引いたほうがいい」と諭すと「社長のブルーノートや甲子園はどうなる?」と来た。
しかも「それが社員みんなのガス抜きになってるから」って、それは論点が違うだろう。周囲が過ちを犯しても踏み留まるのが我々の人間としての矜持ではないのか。
年収800万貰った上にそこまでしないと割りきれないような会社ならしがみつかずに潔く辞めたら良いのにと思った。Sに落胆した。率直に言って軽蔑した。
正義って何だ?
倫理観って何だ?
あの夜以来、Sとは連絡を取っていない。
Tとの新年会を控えて、
私はSとの35年間の友情を振り返る。
ーーお互い、いろいろあったよな。
今までありがとう。
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