週末日記 ひとりを味わう
珍しく月曜日から金曜日までフルで働いた。
それなりにバタバタとしていたため、土曜日はあえて予定を入れずにいた。
朝起きても疲れが残っており、体がだるかった。何度寝かを繰り返し布団を出たのは9時頃。腹が減った。
モーニングをしようと思っていたけど、冷蔵庫の食材のことが気にかかった。この1週間は忙しくほぼ自炊ができていなかったので、食材たちが傷む前になんとかしてやらなければ。
何はともあれ味噌汁を作る。キャベツと舞茸とトマトを食べやすく切り、水とともに小鍋に入れ火にかけた。具材が煮立ったら出汁の素と豆腐も入れた。少しだけ煮てから火を止め味噌を溶いた。
あとは賞味期限を3日ほど過ぎている卵と納豆で、納豆オムレツをつくった。冷凍玄米もあたためて食卓についた。
味噌汁は、春キャベツの甘味とトマトの酸味、舞茸のうまみがよく合っている。しみじみとおいしい。納豆オムレツもふわふわにつくることができた。ふわっとした卵は温度を食べているようなものなので、熱いうちに急いでかきこんだ。
こういう、自分のためだけに作るごはんが大好きだ。誰かのために作ったらもう少し丁寧になるだろうけれど、同時に少し窮屈にもなると思う。たとえばトマトを味噌汁に入れるのはわたしの中で少し冒険なので、ほかに食べる人がいたら少しためらう。ただ切ってポン酢と大葉で和えて出したかもしれない。
それはそれで素敵なのだけど、今日のトマト味噌汁は確かにおいしかった。この程よく雑でのびのびとしたご飯は、今のわたしがわたしのためにしか作れない。
食器を洗ってシャワーを浴びて出かけることにした。
「食器を洗ってシャワーを浴びて出かける」と書けば一言で終わるのだけど、ご飯を食べ終えてから出かけるまでに2時間くらいかかった。スマホをだらだらとみて、また少しうたたねしてを繰り返しながら支度をした。時間の約束がないとどうしてこうもぐずぐずとしてしまうのだろう。子育てをしている人からしたら考えられないタイムスケジュールなんだろうな。ちょっと自己嫌悪だ。
電車に乗る。今日は音楽を聴きたい気分だった。先日結婚を発表されていた関取花さんのアルバムを再生。不思議な説得力を持つ優しい声をじっくりと味わった。スマホの画面を見ず、音楽を見ながら外の景色を眺められたのは久しぶりだったことに気づく。
夢中でスマホを見るというのは、わたしにとって心の中に向き合いたくない事象があり、そこから逃避するためにとっている行動だと解釈している。今はそんな事象が少ないのかもしれないと思った。
関取花さんの「二十歳の君よ」という曲にじんとする。三十路だけど、響く。お母さんが布団の中で話してくれているみたいなあたたかさがある。あまりにも良かったので友人にラインで共有する。
時刻は15時。小腹がすいてきた。今日の目的地の、土日しか開いていないお店に向かった。オーストラリアのいろんな種類のミートパイを食べられるお店だ。ちょっと値段は高いけど満足感は半端じゃない。わたしの仕事が土日休みなことは多くないので、貴重な機会だった。
今日はラムの煮込みのパイとホットコーヒーにした。
パイとコーヒーを持ってテラス席へ。今日は風も少なくて気持ちがよかった。
ひとりでの食事のときはついスマホを見たりテレビを見たりしてしまうけど、ゆっくりよく噛んで食べることに集中した。ラム肉のかたまりを見つけ、これは最後に味わおうとよけて食べ進めていったら同じようなかたまりがいくつも出てきて心が躍る。ほろほろのラム肉は臭みはないけど優しいラムの風味があってうれしい。
何より、抜けるような青空の下にいることが本当に幸せだ。日差しの下はだいぶあたたかくて、長い冬が終わりそうなことが泣けるくらいうれしかった。(わたしは冬が苦手だ)
店員さんとあいさつを交わし、少し歩く。岡崎体育と池田綾子さんの「リボン」を聴いていた。この曲の冒頭の岡崎体育の声は、ベースの音を聴いているみたいだなと思った。優しい低音が心地よい。
歩いていると少しだけさみしくなる。一人で歩き、帰っても当然一人だ。心には、自分でしか満たせない部分と、他人にしか満たせない部分が存在していると思う。一人を味わう休日は大好きなんだけど、なんだか後者の方がヒリヒリしてきた。
それでもわたしは今日は一人だ。二人になることも三人になることもできないので、それを受け入れるしかないのだ。
そんなことを考えながら歩いて、第二の目的地の近くの古着屋さんに行った。古着屋さんというか、おそらく普段は古着の倉庫で業者の方しか出入りできない場所が一般開放される日だった。
大量の古着を漁るのが楽しくて大興奮。ざくざくと1時間くらいかけてまわって古着を4着も買ったけど、5000円ちょっとだった。こんなお値段で春の色の服と動きやすいパンツを買えて満足。
まだ早い時間だけど、明日からまた連勤。このへんでお出かけはやめにすることにした。
帰り道、家の近所のクラフトビール屋で少しだけビールを飲んだ。優しい店員さんの声が響く店内は本当に気持ちがよかった。歩いて帰れる距離に好きな飲み物を確実に飲むことができるお店があるのは本当に幸せだ。
音楽を聴きながら歩き、かなり遠回りをして帰って、家路についたのは18時半頃。それでもまだ空は明るい。友人とわいわい過ごすのもいいけれど、土曜日の夕方に家に帰るのは良いな。自分がまっとうな人間だと感じて安心する。別に遅くまで外にいてもまっとうではあるのだけど。
風呂に入り明日に備える。音楽をたくさん聴いて想いを巡らせる休日を、久しぶりに過ごせたことがうれしかった。
