第672回 最悪の結果と安心感
前回までで、「超短期投資」で成功するための5つの条件の説明が終わりました。
そこで今回からは、それらの条件の知識の中で、更に深めるべき部分を説明したいと思います。
今回は、「結果が確定すると出て来る安心感」です。
- 大大暴落・・・・・・ -
- 幾らの損失になるか分からない・・・・ -
損失が確定するまで強い不安に苛まれても、例えそれが最悪の結果であっても、確定した途端に安心する・・・・。
この心理は、「かくてい決定的思考」の罠に囚われている典型的な状態です。
ですから、この苦しみから抜け出し、より合理的でリラックスした意思決定を行うためには、「確率的思考」へのシフトチェンジすることが不可欠になります。
実は、人間の脳は、本質的に「不確実性」を嫌います。
原始時代において、茂みの奥に肉食獣がいるかどうかわからない状態は、即座に命の危険につながるため、脳は不確実性を「最大のストレス」として検知するように進化しました。
「不確実からは逃げることが生存戦略として確立された事実」なのです。
ですから、損失が確定していない状態は、「更に悪化するかもしれない」、「もしかしたら助かるかもしれない」という未確定の情報が脳内で渦巻いています。
このとき、脳の感情を司る扁桃体が過剰に働き、常に警告音を鳴らし続けます。
この為、脳は休むことが出来ず、ヘトヘトに疲れ果ててしまうのです。
ですから、例え予想された中での最悪の結果であっても、それが確定した瞬間、未来の分岐は消滅し、将来は「1つ」に固定されます。
これにより、脳は「これ以上、不確実な未来をシミュレーションしなくてよい」と判断し、エネルギーの消費をストップします。
心理学でいう「認知の閉鎖欲求」が満たされるため、結果の良し悪しに関わらず、脳は一時の「安心感」を覚えてしまうのです。
不確実な現実を「100%こうなる」、「0%あり得ない」というように、デジタル的な2択で考えてしまう癖を「決定論的思考」と呼びます。
この思考法には、次のような重大な欠点があります。
1つ目は、「精神エネルギーを浪費する」ことです。
決定論的思考の人は、「成功するか、破滅するか」の両極端な予測を立てがちです。
そのため、結果が出るまでの間、過度な恐怖や期待に感情が激しく揺さぶられ、メンタルが摩耗します。
その揺さぶりに耐えられなくなると、メンタルが病んでしまいます。
2つ目は、「判断の先送りばかりをする」ことです。
「失敗したら終わりだ」と考えるため、損失を途中で食い止めるという考えが生まれません。
奇跡的な逆転を夢見て現実を直視せず、手遅れになるまで問題を放置してしまう原因になります。
3つ目は、「思考が停止する」ことです。
結果が確定して安心すると、「なぜその最悪の結果になったのか」という原因の検証作業を放棄してしまいます。
「終わったことだから仕方ない」と安易に片付け、次の機会に活かすことができません。
このように、「決定論的思考」には、問題が多々あります。
多くの人も、心当たりがあると思います。
だからこそ、この決定論的思考から脱却するための特効薬が、物事を「0%から100%の間のグラデーション」で捉える「確率論的思考」になるのです。
確率論的思考とは、未来を「当たるか外れるか」の2択ではなく、「複数のシナリオが、それぞれ何%の確率で発生するか」というセットで捉える姿勢を指します。
決定論的思考
未来の捉え方:白か黒か(100% または 0%)
不安への耐性:曖昧さに耐えられずパニックになる
最悪の事態:恐れるべき「破滅」
失敗した時:運が悪かった、もう終わりだ
確率論的思考
未来の捉え方:グラデーション(30%、50%など)
不安への耐性:確率の範囲内として冷静に受け止める
最悪の事態:事前に想定された「選択肢の1つ」
失敗した時:確率が低い事象が起きただけ(検証可能)
「確率論的思考」を身につけると、「最悪の結果」が発生しても、それは「事前に想定していた20%のシナリオが、現実になっただけだ」と冷静に受け止めることができるようになります。
結果が出る前から心の準備ができているため、確定した瞬間に奇妙な安心感を覚えるような、感情の乱高下がなくなります。
損失が確定するまでの不安と、確定した後の安心感。
このループに苦しんでいるのは、自分の心が弱いからではなく、脳の原始的な防衛反応に振り回されているからです。
ですから、最悪の状況で損切りという行動を選んでしまうのです。
未来は、誰にも100%予測することはできません。
しかし、「世界は不確実であり、全ては確率で動いている」という前提を受け入れることができれば、心の平穏は保たれます。
まずは、直面している不安に対し、「最悪の結果が起こる確率は何%だろう?」、「それが起きても死なないための準備は何ができるだろう?」と確認してみて下さい。
そうすれば決定論的思考の呪縛を解き放つことになり、パニック売りをする「risk」は大きく下がるはずです。
