【ブックガイド】これを読まずに年は越せない!! 2017年ベストミステリ《海外編》
年間数百冊の新刊を読んでいる書評家・大矢博子さんが選ぶ、「絶対読むべきベストミステリ」海外編。
今回は2017年のダ・ヴィンチ本誌から抜粋して、これを読まずに年は越せない10冊をご紹介します!
※「ダ・ヴィンチ」2018年1月号より転載
選・文:大矢博子
■ 旅する少年の成長譚
『東の果て、夜へ』ビル・ヒバリ―:著 熊谷千寿:訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)

LAの黒人少年たちが組織に命じられ、人を殺すために2千マイルの旅に出る。狭い世界しか知らなかった彼らがその過程で出会ったものは……。ロード・ノベル、クライム・ノベル、成長小説が切なく融合した物語。
■ 騙し絵のような技巧的ミステリ
『黒い睡蓮』ミシェル・ビュッシ:著 平岡敦:訳(集英社文庫)

後半生のモネが過ごしたジヴェルニーの村で絵画コレクターの眼科医が殺された……。おとなしく進んでいくかに見える物語だが、終盤の仕掛けには呆然とすること請け合い。技巧だけでなく、その後に残る思いに注目。
■ 華文ミステリの大収穫
『13・67』(上・下)陳浩基:著 天野健太郎:訳(文春文庫)

卓越した推理能力で〈天眼〉と呼ばれた香港警察の名刑事・クワン。彼が出会った6つの難事件を、2013年から1967年まで遡る形で綴った連作ミステリ。逆順に込められた仕掛けと、香港警察の闇を描く手腕に瞠目。
■ 干魃の町での息詰まる事件
『渇きと偽り』ジェイン・ハーパー:著 青木創:訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)

旧友が妻と息子を撃ち、自殺したと聞いて20年ぶりに故郷に戻ったルーク。彼を待っていたものは……。干魃が続くオーストラリアの片田舎が舞台。空気も人の心もどんどん渇き、発火点が近づく。緊迫のサスペンス。
■ 驚きのポーランド・ミステリ
『怒り』(上・下)ジグムント・ミウォシェフスキ:著 田口俊樹:訳(小学館文庫)

10日前まで生きていた人物が白骨死体で発見された? そんな奇妙な謎で幕を開けるこの物語は、いつしか思いも寄らない領域まで読者を連れていく。著者の企みが満ちたダークかつスピーディな展開に一気読み必至だ。
■ 時と思いをつなぐモートンの真骨頂
『湖畔荘』(上・下)ケイト・モートン:著 青木純子:訳(創元推理文庫)

1933年のパーティの夜に、忽然と姿を消した赤ん坊。いったい何が起きたのか? 現実と二つの過去を行き来しながら物語は進む。作中にばらまかれたピースがひとつにまとまるときの驚きと恍惚。これぞモートンだ。
■ 正統派英国本格ミステリ
『雪と毒杯』エリス・ピーターズ:著 猪俣美江子:訳(創元推理文庫)

世界的オペラ女優の最期を看取った一行が雪嵐に見舞われ、小さな村のホテルに閉じ込められることに。そこで公開された遺言書が騒ぎを呼ぶ。巨匠の手による王道の犯人当てが、半世紀を経てようやく訳出された。
■ 圧倒的リーダビリティ
『失踪者』(上・下)シャルロッテ・リンク:著 浅井晶子:訳(創元推理文庫)

友人の結婚式に出席するため空港へ向かったエレイン。だが彼女の行方はそれきりわからなくなった……。彼女を探すうちに、周囲の人々のドラマが浮かび上がる。謎やトリックではなく物語の力で読者を虜にする絶品。
■ 謎、驚愕、そして慟哭
『コードネーム・ヴェリティ』エリザベス・ウェイン:著 吉澤康子:訳(創元推理文庫)

ナチ占領下のフランスで捕虜となったイギリス特殊作戦執行部員の若い女性。彼女の手記は、まるで小説のようだった……。謎解きもさることながら、物語の展開とその真相に落涙必至。本国ではYAとして刊行された。
■ 名シリーズの幕引き
『フロスト始末』(上・下)R・D・ウィングフィールド:著 芹澤 恵:訳(創元推理文庫)

下品でいい加減でワーカホリックのフロスト警部もこれで読みおさめ。ユーモアとドタバタに笑っているうちに、複数の事件が思わぬ形でつながっていくという、ハズレなしの伝説的シリーズだ。フロスト警部よ永遠に!
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