感謝をゴールにしない人──10年ぶりの2PM東京ドームで感じた、私にとってのジュノさんらしさ
「今日初めての人ー?」
さまざまなライブでおなじみのこの問いかけは、メンバーが会場内にいるご新規さんを確認する、定番のあるあるMCです。
2026年5月9日と10日、10年ぶりに東京ドームで開催された2PMの日本デビュー15周年を記念する公演でも、この質問がオーディエンスに投げかけられました。
この2日間で動員された観衆は約8万5千人。
2023年の有明アリーナでのチケット争奪に弾かれたファンも、この日は東京ドームという巨大な会場で、念願のお席をご用意された人も多かったと思います。
また、たとえハレス歴10年でも、兵役やコロナ禍を経て、この日初めて6人そろった2PMに会えたという人も少なくなかったでしょう。
メンバーの問いかけに応じて挙がる、きらきらのペンライトの群れを見て、最後のドームから10年という年月が経ってもなお、「2PMに初めて会う人」がこれだけいる──その光景は、このグループが今も現在進行形であることを雄弁に示していました。

もちろん、メンバーたちは口々に「ありがとうございます」と感謝を伝えます。会場に来てくれたことや、それ自体を歓迎する言葉は、大きな会場の空気を一気に温める、自然で肯定的な反応です。
そんな流れの中、ひとりだけちょっと違う方向を見ている人がいました。ジュノさんです。
「もっとがんばらないと」
この言葉を聞いた瞬間、私の口角はにやりと上がりました。そこには、私の好きなイ・ジュノという人の本質が凝縮されていたからです。
初めて来てくれた人がいる。
その事実はもちろん嬉しいはずです。けれど同時に、その人がファンとは限らない。友人に誘われて来ただけかもしれないし、完全体の2PMをよく知らないままこの場にいる人もいるかもしれない。
つまりこの日は、「関係の完成」ではなく、あくまで「関係のスタート地点」でしかない。そう考えた瞬間、喜びより先に「責任」が立ち上がる。
それが、あの一言の正体だったように思います。
ジュノさんはいつも、「来てくれた事実」より先にある「これからどうなるか」に意識が向いているというか、「今の自分はベストを尽くせているか」「初めての人にも伝わっているか」「次につながる体験を手渡せているか」という、つねに与える側の意識が先に動いているような印象があります。
これは、決して感謝していないという意味ではなく、感謝をゴールにしてしまわないという反応です。

そしてそこには、ファンという存在を安易に扱わない、ある種の倫理観のようなものも感じられる気がしました。
会場にいるからといって、応援が前提にあるとは限らない。初めて来てくれたからといって「ぼくたちのファン」と短絡的に結び付けるのではない。
オーディエンスは当然の存在ではなく、ファンと呼べる関係は、自分の手で勝ち取り、時間をかけて積み重ねていくものだと捉えている。
そんな、一歩引いたメタ認知的な感覚が無意識に働いているようにも見えました。これは、アーティストであると同時に、徹底して職業人的なスタンスでもあります。
つまり、好きでいてくれているかどうかは問題ではなく、来てくれた事実がスタート地点であり、その後どうなるかは自分の責任だという思考回路です。
「初めての人が多い=嬉しい」ではなく、「初めての人が多い=責任が重い」という感覚は、お互いの関係がまだ始まったばかりという、ある種の緊張感すら孕んでいるのかもしれません。
そんなジュノさんに対してチャンソンさんが主語を取り違え、「がんばらないと」をファンに対するメッセージだと受け取ってしまう一幕もありました。
「僕たちがだよ…!」とタメ口で詰め寄るジュノさんに誤解は解け、すぐに完全体ならではの笑いに変わりましたが、このやり取りも含めて、象徴的なエピソードだったように思います。
グループの中に、「ありがとうございます」と受け取れる人がいる一方で、立ち止まって「もっとがんばらないと」と言ってしまう人がいる。その両方が同じステージに並んでいるからこそ、2PMは強い。
東京ドームで改めて感じたのは、そんなバランスの美しさでした。

人は誰かから好意や評価を向けられたとき、「ありがたい」と素直に受け取れる場合と、「自分はそれに値するのか」と条件反射で考えてしまう人がいると思います。
後者は正直しんどいです。初めて来てくれた人がいるということは、今日、自分たちは試されているということでもある。ここで手を抜いたら、次はないかもしれない。だから喜びきれないし、喜ぶ前に自分を振り返ってしまう。
それは、「今日が最初で最後かもしれない」という前提があるからこそ生まれる、誠実で、臆病で、そしてプロフェッショナルな優しさなのだと思います。
演出でもファンサービスでもなく、「もっとがんばらないと」と反射的に言葉にしてしまうところに、イ・ジュノという人の誠実さと、プロとしての価値観や在り方が、そのまま表れているように感じました。
こんな瞬間に、いつも私はこの人を好きだなと感じるのです。
