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優秀なのに、なぜ活躍できない?0→0.01、0.01→1、1→10、10維持で考える人材配置

「あんなに優秀で、社内MVPまで取った先輩が、新規事業部に異動した途端、結果を出せずに苦戦している」

「同期で一番仕事ができたはずのアイツが、部署が変わっただけで精彩を欠き、最後は転職していった」

そんな場面を、会社の中で見たことはないでしょうか。

あるいは、あなた自身が今、こんなモヤモヤを抱えているかもしれません。
「前のプロジェクトでは高く評価されたのに、なぜ今の仕事ではうまくいかないのだろう」「自分の強みが、急に仕事と噛み合わなくなった気がする」

人が活躍できなくなったとき、周囲や上司は、つい本人の能力やモチベーションに原因を求めます。「最近、あいつもやる気が落ちているな」
そう片づけられてしまうこともあります。

しかし、本当にそうでしょうか。
本人の能力が急に衰えたわけでも、仕事への意欲がなくなったわけでもない。見落とされているのは、「その人の才能」と「任されている事業フェーズ」のミスマッチかもしれません。

会社には、さまざまな仕事があります。
まだ見えていない可能性を探す人。
小さな可能性を商品やサービスにする人。
生まれた事業を成長させる人。
多くの顧客に価値を提供し続ける人。

今回は、一般に「0→1」とひとくくりにされる仕事を、可能性を発見する「0→0.01」と、それを具体的な価値に変える「0.01→1」に分けます。
そのうえで、会社の仕事を「0→0.011」「0.01→1」「1→10」「10維持」という4つの局面から整理し、「なぜ、優秀な人が配置によって力を発揮できなくなるのか」を考えてみたいと思います。


第1章 優秀さは、置かれる局面によって変わる

ビジネスの世界では、「0から1を生み出す人」という言葉をよく聞きます。世の中にない商品やサービスを考え、不確実な状況でも最初の一歩を踏み出す。0→1人材が希少であり、重要な存在であることに異論はありません。しかし、企業活動は0→1だけで成り立っているわけではありません。新しい技術や顧客ニーズの可能性を探る人も必要です。生まれた商品を市場に広げ、生産や供給の仕組みを整える人も必要です。一度生まれた価値を、安定的に提供し続ける人も必要です。

つまり、一つの会社の中に、異なる事業フェーズが同時に存在しています。

だからこそ、ある局面で高い成果を出した人が、別の局面では力を発揮できないことがあります。能力がなくなったのではありません。その局面で求められている能力が変わったのです。

第2章 会社を動かす「4つの仕事の才能」

1.0→0.01【探索】まだ見えていない可能性を探す

0は、ある日突然1になるわけではありません。その前には、「ここに何かあるのではないか」と、小さな可能性を見つける人がいます。
企業や大学で基礎研究を続ける研究、新薬や新素材の研究では、何年取り組んでも、すぐに商品につながる成果が出ないことがあります。
生まれるものは、1ではなく、まだ0.01かもしれません。

顧客との会話から、まだ言葉になっていない不満を拾う営業担当者。大量のデータの中から、これまで見過ごされていた異変を見つける人。現場の作業を見て、「なぜ、こんな非効率を続けているのだろう」と疑問を持つ人。こうした小さな違和感の発見も、0→0.01です。

0.01とは、小さな成果ではありません。
無数にある可能性の中から、進むべき方向を見つける仕事です。

2.0.01→1【創出】可能性を、使える価値に変える

発見された0.01の可能性を、具体的な商品、サービス、仕組みとして形にするのが0.01→1です。

一方、実際のビジネスでは、すでにある技術やサービスを新しく組み合わせ、これまでになかった価値を生むケースも多くあります。
農業とITを組み合わせる。
金融とITを組み合わせる。
既存の商品に、新しい用途を与える。
100円ショップに並ぶ便利グッズの中にも、日常の小さな不便と既存の素材や技術を組み合わせた「小さな0.01→1」があります。

0.01→1に必要なのは、発想力だけではありません。
まだ正解がない中で試作品をつくり、失敗し、顧客の反応を見ながら、価値を形にしていく実行力が必要です。

3.1→10【拡大】需要と供給を同時に成立させる

商品が一つできても、それだけで事業が完成したわけではありません。
次に必要なのは、その価値を多くの顧客へ届ける力です。
1→10というと、マーケティングや営業を思い浮かべる人が多いでしょう。市場を分け、狙う顧客を定め、販売チャネルを広げる。もちろん、それらは重要です。しかし、1→10とは、単に売る力ではありません。需要をつくり、それに耐えられる供給能力を同時に整える力です。

製造業で注文が10倍になっても、工場でつくれなければ事業は成長できません。部品を調達できない。品質が安定しない。物流や保守サービスが追いつかない。人材の採用や教育が間に合わない。売上が急増した結果、資金繰りが苦しくなることもあります。

1→10とは、ヒットを生むことではありません。
ヒットしても壊れない事業をつくる仕事です。

4.10→10【継続】変化の中で価値を出し続ける

事業が一定の規模に達した後は、その価値を継続的に提供する人が必要です。顧客の期待も、社員も、設備も、システムも、法規制も変わります。何もしなければ、10の価値は自然に9、8、7へと下がっていきます。人が替わっても品質を保つ。設備やシステムを更新しながら、サービスを止めない。事故や不正、供給停止を防ぎながら、日々の業務を回す。

10→10とは、同じことを繰り返す仕事ではありません。
中身を変えながら、価値を出し続ける仕事です

この10→10の才能については、別の記事で、もう少し深く考えてみたいと思います。

問題は、この4つの才能のどれが優れているかではありません。
事業の局面と、任せる人の強みが合っているかです。

第3章 なぜ、人材配置のミスマッチが起きるのか

会社に必要な才能がわかっていても、人材配置は簡単ではありません。

① 過去の成功が、役割を固定してしまう

0.01→1で新しい商品を生み出した人が、その後も事業責任者を任され続ける。しかし、事業が1→10へ移れば、必要なのは、生産、販売、品質、人材、資金を組み合わせる力です。発明する才能と、大規模な事業を運営する才能は、必ずしも同じではありません。ところが会社は、過去に成功した人へ、そのまま次のフェーズも任せがちです。こうして、事業フェーズは変わっているのに、配置だけが変わらない状態が生まれます。

② 役職や職種だけで、人を見てしまう

同じ「営業マン」でも、顧客のまだ言葉になっていない課題を見つける人、最初の顧客と解決策を形にする人、販売チャネルを広げる人、既存顧客との関係を維持・発展させる人では、必要な才能が違います。

同じ「技術者」でも、新しい技術を探索する人と、試作品を製品に変える人、量産品質を高める人では強みが異なります。

職種や肩書だけではなく、その人がどの局面で成果を出してきたのかを見る必要があります。

③ 優秀な人に何でも任せる「万能幻想」

ゼロから考えることも、事業を拡大することも、安定運用することも、すべて一人でできるスーパーマンはまれです。一人の万能人材を探すより、それぞれの局面に強い人を組み合わせるほうが現実的です。

④ 会社自身が、事業の現在地を見誤っている

もう一つの原因は、会社自身が、その事業がいまどのフェーズにあるのかを正しく認識できていないことです。経営は1→10の拡大を求めているのに、現場ではまだ0.01→1の顧客検証が終わっていない。反対に、すでに標準化すべき段階なのに、いつまでも少数の優秀な人の個人技に依存している。

こうした事業フェーズの認識違いが、人材配置のミスマッチを生みます。
そして、最も難しいのが、次の人へ役割を渡すタイミングです。

第4章 人材配置で大切なのは「バトンパス」である

人材配置というと、誰をどのポストに置くかという話になりがちです。
しかし、本当に難しいのは、役割を次の人へ渡す設計です。

リレーでは、速い選手を集めるだけでなく、スピードを落とさずにバトンを渡さなければなりません。

事業でも同じです。
バトンとは、単なる業務の引き継ぎ資料ではありません。顧客理解、技術、判断基準、失敗の記録、未解決の課題、権限、人材、予算まで含みます。

また、バトンパスは一瞬では終わりません。リレーには、前の走者と次の走者が重なりながらバトンを受け渡す「テイクオーバーゾーン」があります。

事業の引き継ぎにも、前任者と後任者が一定期間重なる区間が必要です。
このテイクオーバーゾーンを設計できる会社は強いと思います。
そして、価値創造のリレーは、一方向とは限りません。

10→10の運用現場で見つかった顧客の変化や小さな違和感が、次の0→0.01のタネになることもあります。

会社の強さは、各人の才能の優劣ではなく、異なる才能をつなぐ「バトンパスの巧拙」で決まります。

第5章 自分は、どの局面で力を発揮しやすいのか

人材配置は、経営者や人事部門だけの問題ではありません。働く側も、自分がどの局面で力を発揮しやすいのかを知っておく必要があります。

これまでの仕事を振り返ってみてください。

  • まだ誰も注目していない問題を見つけるときに、面白さを感じるか

  • 小さな可能性を、商品や仕組みとして形にするときに力が出るか

  • 生まれたものを、多くの人へ広げるときにやりがいを感じるか

  • 混乱した仕事を整理し、安定して価値を出せる状態にするときに達成感を覚えるか

これは、固定的な性格診断ではありません。一人の人が、複数の局面で力を発揮することもあります。経験やキャリアステージによって、得意な仕事が変わることもあります。それでも、自分が自然に力を出せる局面を知ることには意味があります。新規事業で苦戦しているからといって、あなたの能力が低いとは限りません。いま任されている仕事と、自分が得意とする事業フェーズがずれている可能性があります。

逆に、これまで得意だった仕事に飽きや物足りなさを感じているなら、次のフェーズへ挑戦する時期なのかもしれません。

まとめ: 会社は、異なる才能のリレーで動いている

「優秀なのに活躍できない」というミスマッチを減らし、組織の力を引き出すためのポイントは、次の3つです。

1.優秀さの定義は、一種類ではない

事業の各場面で求められる「優秀さの形」は異なります。

  • 0→0.01:可能性を探索する

  • 0.01→1:可能性を価値として形にする

  • 1→10:需要と供給を整え、事業を拡大する

  • 10→10:変化の中で価値を継続する

2.能力不足の前に、フェーズのミスマッチを疑う

成果が出なくなったとき、本人の能力やモチベーションの低下を疑う前に、現在の仕事と、その人が得意とする事業フェーズが合っているか、置かれている局面を確認する必要があります。

3.バトンパスを仕組みにする

適切なタイミングで、次の人へ顧客理解、判断基準、権限、失敗の記録、未解決の課題を渡すことです。一人の万能人材に依存せず、前任者と後任者が重なるテイクオーバーゾーンを設ける。

それが、事業の成長を止めないマネジメントです。
優秀な人を集めるだけでは、強い会社にはならない。
異なる才能を見つけ、適切な場所に置き、互いの仕事をつなぐ。
それが、人材配置の、そしてマネジメントの本当の仕事ではないでしょうか。

あなたが最も自然に力を発揮できるのは、どのバトンを持っているときでしょうか。

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