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【短篇小説】クズ


クズ男とは、一体どういうやつを言うんだろうな。
女を次々に取り換え、使い捨てるように繰り返すやつだろうか?
だとしたら、俺は決してクズではない。

なぜなら、俺は付き合った女を大事にするからだ。

付き合いが長くなって、飽きてきたころには他の女と付き合うが、
今まで付き合ってきた女を捨てるようなことはしない。
だから、俺は断じてクズではない。

だが、気がつけば俺の家には女が三人いる。
どれもこれも若く美しい。

おかげで俺は働かなくても、女が俺を食わせてくれる。
ならば家事くらいはやるのかというと、俺はこまごましたことが嫌いだ。
だから、家事なんてしない。

大体女が三人もいるのに、男の俺がやる必要なんてないじゃないか。
俺は、女たちに笑顔を振りまき、疲れた女に甘い言葉をかけるだけだ。
それが俺の仕事だと思っている。

女たちも仲良くやっているし、何も問題はないだろう。
ところがある日、一人の女が言った。

「ねぇ、誰と結婚するの? もちろん私よね?」

俺は驚いた。どうして俺がひとりだけのものにならないといけないのか。
まったく理解できない。

ところが、他の女も同じことを言う。
付き合いが長くなると、独占欲も強くなるものなのか?
俺は内心、そろそろ新しい女が必要だと思った。

新しい女が入れば、必然的に俺はそいつに気持ちを持っていかれる。
そうなれば、古い女は騒げない。
騒げば、俺を失うと分かっているからだろうな。

結婚を迫る女に、俺は笑顔を向けながら、頭の隅でそんなことを考えていた。
だが、さすがに三人もいると、女たちも考えるらしい。

「決められないなら、一番最初に子供が出来た人と結婚するというのはどう?」

二人の女が頷いた。
俺は目を見開いたが、確かにそれは名案だ。

「そうだね、子供が出来ちゃったら。そりゃあ、結婚しないとダメだよね」

とはいっても、いくら頑張っても子どもなんてできやしない。
出来るはずがないんだ。
そして思った通り、誰も妊娠なんてしなかった。
女たちは首をひねった。

俺は腹の中で笑っていた。その理由を知っているからだ。
どんなに頑張ったところで、妊娠なんてするはずはないのだと。
もちろん、その笑いを女に悟られるようなことはしない。
女が気が付けば、俺の生活は破綻する。

「あれから半年よ。誰も妊娠しないなんておかしいわよ」

俺がいないところで、女たちが相談していた。
そして、俺の精子を調べようということになったらしい。
だからといって、俺がそんなものを受け入れるはずはない。

ところが女たちは、俺の精子を採取してしまった。
まさか、そんなことをするなど思ってもいない俺は、眠りについたわけだが。

それからしばらくして、封筒が女の元に届いた。

「なにこれ……」

結果を見た女が青ざめた。

「だから、余裕かましてたのね!」

そこに書かれていたのは――無精子症――。
もちろん、俺が無精子症だということは知っていた。

しかし、女たちは違った。

三人は、俺に騙されたと知ると、怒りに燃えた。
こんな男の為に、自分たちの大事な時間を費やしたのかと思ったら、
許すことが出来なかったのだろう。

その夜、女たちはいつになくご機嫌だった。
旨い料理を並べ、俺の好きな酒をテーブルに乗せた。
俺は女たちに笑顔を向け、料理を平らげ、気分よく酒を飲んだ。
その先に何が待っているのか、俺は知らずに。

俺が眠りにつくと、女たちが俺の足元に立った。
俺は脱がされた股間に快感を覚え、やりたいようにやらせながら、
眠りに落ちて行った。

女たちの楽しそうな笑い声が聞こえていた。

その翌朝のことだ。
どういうわけか女たちを呼んでも誰も来ない。

時計を見れば、まだ仕事に行く時間ではない。
一体、どうして誰もいないのだろう。

そう思った時、股間に痛みが走った。

どうして痛むのか分からない俺は、パンツの中を覗いてみた。
そこには、腫れあがった俺の息子が、紫色に変色していた。

なんでこんなことになっているのか分からず、触ってみると激痛が走る。
驚き焦った俺は、病院に行こうと立ち上がる。
熱があるのか、身体がふらついた。
歩きたくても、股間の痛みで歩くことが出来ない。

やっと着替えたものの、まだ病院がやっている時間ではない。
俺は、額に汗を浮かべながら、病院が始まる時間まで待つことにした。

その間、女たちへと電話をし、助けを求めようとしたものの、誰にも電話が通じない。
一体どうなっているのだろうか?

それから3時間ほどして、タクシーを呼んだ俺は、何とか病院へと行くことが出来た。しかし、俺の股間を見た医師は、眉を寄せてこういった。

「壊死してるね。これは切断するしかないだろう」

俺は耳を疑った。

「どうして壊死なんて。お、俺の息子は、なんでこんなことになってるんですか?!」

医師は笑いをこらえるように、肩を震わせながら答える。

「輪ゴムだからね……可哀そうだが……」

俺は息子を見下ろした。
そこには食い込んだ輪ゴムが、肉に埋もれていた。

「そんな……切断なんてしたら……もう、女を抱けないじゃないか!」

俺は喉から声を絞り出した。


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