脳梗塞日記⑤
8月12日水曜日
今日は横浜から弟が来る。
病院の面会は一日2人までなので
母は今日は家で休んでもらうことにした。
私は朝一で弟に病院の面会者用の受付までの道筋を教える動画を撮りながら面会に行った。
弟は自分で聞きながら行くというが
医大は広くてわかりにくいので
少しでも道案内があるとスムーズだろう。
父の病室に行くと、カテーテル同意書があった。
今日は検査で朝は絶食だったらしいが
カテーテルは延期になってそうだ。
そこに病名が書いてあった。
『脳底動脈狭窄症』
難しい名前。

思わずググる。
焦っていて、わたしは入力した文字をしっかり確認せずに調べた。
そこには、脳梗塞の中でも、命に関わるきわめて重篤な病気としての記載があった。
カテーテル手術をした場合でも、90日以内の死亡率40%とある。
私はそこで言葉を失い呆然としてしまった。
父にも母にも言えないと思った。
「、、、先生と話せませんか?」
看護士に聞くと主治医が不在だという。
「家族は容体についてこの説明をずっと聞いてないんです。この書類の病名を見ると深刻な症状なのかと」
看護師は軽く返した。
「そうですよね。でも何かあればご家族に連絡がありますから、今のところは特に大丈夫です。」
「何かあれば、、、それは」
私は相当焦りで納得いかない顔をしていたんだと思う。
「先生が戻ったらご家族にお話していただけるようお伝えしておきますね。」
これから検査だというので私は半ば追い出される形でその場を出た。
下で弟を待ちバトンタッチする。
弟だけには伝えておかねばと
病名と症状の深刻さを話した。
弟も絶句していた。
モヤモヤしながら帰宅してもう一度検索しようとすると、そこでようやく入力していた文字が少し違うことに気づいた。
『脳底動脈閉塞』
わたしはその病名で検索していた。
本来の病名は
『脳底動脈狭窄』
閉塞と狭窄では症状の重篤さが全く違うらしい。
閉塞は閉じてしまった状況
狭窄は狭くなった状況
似ているが予後は全く違う。
バカな私、早とちりして1人でパニックになっていた。
いや、でも紛らわしくない?!
私は弟に謝罪のLINEをした。
「今父と先生と話を聞いてるよ」
と弟。
父も
弟と話しができて気持ちが和らいだ
と。
そうか、よかった。
そう思う反面、私も聞きたかったのにな、と思った。
毎日毎日近くで悩んだり心配したりしているのに
あんなにひつこく聞いたのにな
肝心なところはやっぱり私ではないのだな
よく思うと執拗に聞いたからこそ
先生があの後対処してくださり
そこにいたのがたまたま弟だったんだとは思う。
この期に及んで
大人気ない気持ちになる自分が情けないのだ。
ありがたいと思うことなのに。
その後弟から容態を聞く。
救急で聞いた通り、
父の脳内の太い血管が、長年の加齢で狭くなっている。
血栓かと思っていたがそうではなく、コレステロールなどがへばりついて道筋を細くしているのだという。
だから、父がこれまで水を飲んで楽になっていたのはどうやら理に適っていたらしい。
水分で流すことが応急処置。
だから点滴でずっと体液を循環させていたらしい。
栄養のためと思っていたが、しっかり意味があったのか。
といっても、脳梗塞がないわけではなく
小さな血管があちこちで詰まっているのも見受けられる。
前回のMRIでは父が検査中少し動いたようで、写真がぶれていたのか、その状況が確認ができなかったと。
え、そんなことあるの?
わたしはそこが少し解せなかったが
医療技術も万全ではないから仕方ないのか。
とにかく太い血管が閉塞してしまえば
私が取り違えした症状のように死に至ることもある。
今はそうならないようカテーテルを流して血管の様子を調べてから今後の治療を考えるらしい。
あくまで今は検査用のカテーテルであり
それを使って治療するには血管が破けるなどリスクがある。
なので慎重に検討が必要とのこと。
概して納得のいく内容だった。
水を飲みなさいと言ってくれた
スタバの貴婦人、神様だったのか。
出会いとは大事なものだな、とつくづく感じた。

