「いくら貯めれば安心か」に答えがない理由 ── お金の計画より先にあるもの
その数字は、誰の人生の数字ですか
「20代の貯蓄額は平均74万円」
こういう数字を目にしたとき、あなたはどう感じるでしょうか。
自分はそれより多いと少し安心する人もいれば、まったく届いていないと胃のあたりが重くなる人もいると思います。
同じ調査には、もう一つ気になる数字があります。
20代の人たちが「仕事をリタイアする年齢までに、これくらい貯蓄があれば安心できる」と答えた金額は、平均で2,214万円。
前年の調査からは245万円増えています。
ゼロの数を確認したくなる金額です。
ただ、続きがあります。
その前年の調査では、同じ数字が前々年から226万円減っていました。
安心できる金額そのものが、毎年上下しているのです。
ここで多くの人がぶつかる壁があります。
数字を見て焦るところまではいく。
でも、明日から何をすればいいのかが分からない。
これは気のせいではありません。
マイナビが20代の正社員に行った調査では、人生に葛藤を感じていると答えた人の悩みの内容は、「十分に稼げていない」が56.2%で最も多く、「今後の人生のために次に何をすべきかわからない」が40.9%、「行き詰まりを感じている」が37.3%と続いています。
お金が足りないという感覚と、何をすべきか分からないという感覚が、ほぼセットで存在している。
私はここに、順番の問題があると思っています。
足りないのはお金そのものではなく、その金額が自分に当てはまるのかを判断する基準の方ではないか、ということです。
私も「適齢期」という平均値に動かされた
偉そうに書いていますが、私自身が平均値に動かされて人生を決めた人間です。
結婚を決めたとき、年齢がいわゆる適齢期から外れていくという感覚があって、そろそろだろう、と決めました。
今になって思うのですが、「適齢期」とは要するに平均値のことです。
多くの人がこのくらいの年齢で結婚しているという統計が、いつの間にか「そうすべき年齢」という顔をして、私の背中を押していた。
その選択を後悔してはいません。
ただ、その決断がその後の家計をどれくらい動かすことになるのか、当時の私にはまったく見えていませんでした。
必要な金額は、人生の選択で桁が変わる
象徴的な数字を二つだけ挙げます。
細かい話は各回で扱うので、ここでは振れ幅だけ見てください。
教育費:幼稚園から大学卒業までの費用は、子ども1人あたり840万円から2,450万円(三井住友信託銀行の試算)。
同じ「子ども1人」でも1,600万円ほどの幅があります。世帯の働き方:妻が働き続けた場合と出産を機に仕事を離れた場合とで、世帯の生涯収入には2億円近い差。
受け取る公的年金の総額でも約3,000万円の差が出るという試算があります。
共働きが正しいとか、教育費をかけるべきだという話ではまったくありません。
言いたいのは、「いくら必要か」は人生の前提が決まって初めて答えが出る、ということです。
平均値が役に立たないのは、まさにここです。
結婚した人もしていない人も、子どもが3人いる人も0人の人も、全部足して割ったのが平均です。
先ほどの74万円も、極端な値を除いて計算し直された数字でした。
自分に当てはまる確率は、かなり低い。
これから決まっていく、七つの項目
私が振り返って、お金の計画を左右する項目は、次の七つに整理できると思っています。
結婚するかどうか(いつ頃かでも変わります)
子どもを持つか、教育にどこまで関わるか(人数と方針の二つが効きます)
世帯として、誰がどう稼ぐか(自分だけでは決められない項目でもあります)
持ち家か、賃貸か(住む場所を固定するかという意味を持ちます)
都会に住むか、地方に住むか。車を持つか(この二つはほぼセットです)
保険をどう考えるか(1〜5が決まらないと決まりません)
会社員という立場を、どう使うか(給与以外の機能がいくつもあります)
「今すぐ全部決めろ」という話ではありません。
20代でこれを全部決められる人は、まずいないでしょう。
私も決められませんでした。
決まっていないこと自体は、何の問題でもありません。
決まっていないうちに、できること
問題があるとすれば、決まっていないことにすら気づいていない状態です。
前提が未定でも、20代の人には共通して有利な条件が一つあります。
時間です。
例外なく全員が持っていて、しかも年々減っていく資産です。
前提が決まったときに動けるかどうかは、それまでに何を積み上げてきたかで決まります。
決まってから貯め始めるのでは、この一番効く要素を使い損ねます。
だから、決まっていない時期にやるべきことは、金額を確定させることではありません。
何が決まったとしても対応できる状態を、時間をかけて作っておくことです。
具体的なやり方は別途扱います。
結論だけ先に言えば、意志の力に頼らない仕組みを作る、という話です。
私も、設計してから生きてきたわけではない
正直言うと、私自身、人生を設計してその通りに生きてきたわけではありません。
結婚した時期も、住む場所も、家を買ったことも、どれ一つとして20代のうちに計画していた通りではありませんでした。
それでも大きく崩れずに来られたのは、決まった時点で動けるだけのものを、少しずつ用意していたからだと思います。
今日できることを一つだけ挙げるとすれば、先ほどの七つを眺めて、自分の場合はどれがまだ決まっていないのかを確かめてみることです。
それが分かるだけで、「2,214万円」という数字との距離の取り方が変わってきます。
江乃元 叶多(えのもと かなた)
50代の子持ちのパパ
幸せに生きる為の仕組み、未来の安心、自分らしい生き方(Beautiful Life)、健康、着実な運用、節税のヒント、お金のリテラシー、幸せのタネ、キャリア、スキル、について、若かりし頃の自分に向けて発信しています。
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