見出し画像

【保存版】官公庁の「調査・コンサル」入札データブック2026〈後編〉── 攻め方の地図: 3つのレイヤーと競争構造

この「データブック」は、官公庁・自治体の「調査・計画策定」入札市場を公開データで一望する保存版の後編です。前編(市場の規模・府省ごとの買い方・季節)を踏まえ、本編は「自社はどこを狙うか」を決める地図に進みます。

◀ 前編はこちら: https://note.com/kanju_datalab/n/nbefc4b387414

本書は、官公庁の調査・コンサル入札を毎週追う無料ニュースレター「調査入札ウォッチ」の既刊分析を再構成した保存版です。毎週の新着と落札相場は note フォローで無料で届きます。

§4【本書の核】どこを・いつ・いくらで攻めるか ― 3つのレイヤー

調査・計画策定の公共入札は、大きく3つのレイヤーに分かれます。それぞれ、案件の規模・求められる強み・価格帯・動く時期が違います。まず自社がどのレイヤーで戦うかを決めると、追うべき公告と準備すべき体制がはっきりします。

レイヤー1: 国の大型調査(全国区・実績勝負)

・規模感: 国の機関だけで1,000億円規模(直近12か月924億円・拡大中)。落札額の中央値は1,596万円で、1,000万円超が全体の66.6%。小口はほとんどなく、下限でも数百万円規模から。
・向く会社: 過去実績と体制のあるシンクタンク・大手コンサル。ただし落札709社のうち395社(56%)は「1件だけ」の落札で、初参入で1件取っている会社が多数派。「大手しか取れない」市場ではありません。
・攻め方: 件名の定番テーマ(毎年繰り返し出る調査)に狙いを定め、前年の落札額を相場観にする。上位5社シェアは件数ベースで18%と寡占ではなく、専門特化で食い込む余地がある。

レイヤー2: 府省特化(特定省庁の"クセ"に張る)

・規模感: 府省ごとに買い方が全く違う。件数で狙うなら環境省(406件)、単価で狙うならデジタル庁(中央値4,250万円)、金額規模なら総務省(約14か月で384億円)。
・向く会社: 特定分野に土地勘のある中堅。1つの府省の定番案件・テーマに継続的に張れる会社。
・攻め方: §5(環境省の例)のように、同じ省庁でもテーマによって件数も単価も違う。「数で入るテーマ」と「単価で狙うテーマ」を見極め、毎年出る定番案件で実績を作れば継続受注につながりやすい。1つの省庁の"常連"になるのが勝ち筋。

レイヤー3: 自治体・地元(全国に薄く分散・地の利)

・規模感: 自治体発注は特定県に集中せず全国に分散(直近7週間で38/47都道府県に需要)。人口あたりでは佐賀・高知・熊本など中規模県が上位で、大都市圏ほど人口比はむしろ低い。
・向く会社: 地域に根ざした中小コンサル・地元事業者。国の大型とは別の「地元密着」の入口。
・攻め方: 自分の県・近隣県の自治体案件を継続的に押さえる。1件の規模は国案件より小さいことが多いが、地の利と継続性で取りにいくレイヤー。「大きな案件は東京だけ」ではありません。

いつ動くかは全レイヤー共通で「12〜2月仕込み・3月集中」が基本形です(詳細は前編§3)。

まとめ: 3レイヤー × 自社の強みで決める

・レイヤー1 国の大型: 中央値1,596万・累計1,072億(約14か月)/ 実績ある大手〜専門特化 /毎年の定番テーマ・前年相場
・レイヤー2 府省特化: 府省で単価バラつき(〜4,250万)/ 分野に土地勘のある中堅 /1府省の定番の"常連"化
・レイヤー3 自治体・地元: 小口中心・全国分散 / 地元密着の中小 / 自県・近隣の継続捕捉

まず自社がどのレイヤーで戦うかを決め、そのレイヤーの定番案件と仕込み時期(12〜2月)を押さえる ―― これがデータから読める、この市場の歩き方です。

§5 深掘り例: 環境省 ― 同じ買い手でもテーマで攻め方が分かれる

府省特化(レイヤー2)の実例として、件数最多の環境省(406件・107.6億円)の中身を見ます。

・相場は中央値1,475万円、主戦場は1,000〜3,000万円(143件・35%)。100万円未満はゼロ。
・テーマ別では「数で入るなら循環経済・廃棄物(65件)、単価で狙うなら脱炭素・温暖化(中央値4,372万円)」と、同じ省内でも件数と単価の地図が全く違う。
・毎年繰り返し発注される定番案件があり(税制グリーン化、災害廃棄物対策、化学物質実態調査など)、初年度に実績を作れば継続受注の入口になる。
・落札者は154者に分散、上位5者合計でも20%(件数ベース)。寡占ではない。

1つの府省の「常連」になるとはどういうことか ― テーマ×単価の地図を持ち、定番案件に毎年張る、という具体像がこの省の例から見えます(詳細は環境省特集号)。

§6 自治体は全国に ―「大きな案件は東京だけ」ではない

自治体(都道府県・市区町村)の発注は、落札価格の公開データが無いため件数で見ます。直近約7週間(2026年5月13日〜7月3日)の政策・社会調査系公告185件の分布:

・公告が確認できたのは47都道府県のうち38県。最多の県でも25件で、突出した一極はない。
・人口100万人あたりでは佐賀7.4件・高知7.2件・熊本6.3件と中規模県が上位。東京都は0.4、大阪府0.2 ― 大都市圏ほど人口比ではむしろ少ない。
・公告ゼロの9県も「市場ゼロ」ではない(期間7週間の制約。年間では全国で案件が出る)。

需要は一極集中ではなく全国に薄く分散。地方の事業者にとって「自分の県・近隣県の案件を継続的に押さえる」入口(レイヤー3)が、データ上も確かに存在します。※件数のみ・直近スナップショットという制約つきの数字です(数件差の順位は入れ替わります)。

§7 競争構造 ― 件数の6割超は「上位20社以外」のもの

国の機関・約14か月(2025年4月〜2026年6月)の落札者709社の内訳:

・1件のみ落札: 395社(全体の56%)/ 2〜5件: 245社 / 6件以上: 69社
・上位5社のシェアは件数ベースで18%、上位20社でも37%

上位は大手シンクタンク・コンサルが並びますが、件数の6割超は中堅・中小が取っています。「初参入で1件取った会社が395社ある」― 常連の世界に見えて、データ上は一見さんが多数派。本書の3レイヤー(§4)は、この「最初の1件」をどこで取るかを決めるための地図です。

前編(市場の規模・府省ごとの買い方・季節)とあわせて、この2本があなたの会社の「公共入札の地図」になれば幸いです。

付録 データソースと方法

・用語の説明(公告と落札実績の違い・中央値/四分位・対象セグメントの定義)は前編の「用語と読み方」をご覧ください。
・「一見さん」: 集計期間中の落札が1件のみの事業者(本書の造語。参入のしやすさの指標)。

・公告データ: 官公需情報ポータルサイト(中小企業庁)の公開APIより取得
・落札実績: 調達ポータル「落札実績オープンデータ」(公共データ利用規約に基づく利用。国の機関のみ。自治体分は落札価格が公開されないため、自治体の分析は公告件数による)
・対象期間: 落札実績=2025年4月〜2026年6月落札決定分 / 自治体公告=2026年5月13日〜7月3日
・抽出は件名に基づく独自の分類ルールによる。分類基準は継続的に改良しており、集計時点により件数が数件単位で異なることがある(本書は各号公開時点の数値を記載)
・本書の数値は公開データの集計であり、個別案件への応札判断はご自身でご確認ください

既刊のご案内

発行: 官需データラボ / 調査入札ウォッチ毎週の新着案件と落札相場は、noteのフォローで無料で届きます。既刊: 創刊号(市場の全体構造)https://note.com/kanju_datalab/n/na7580843af73 /環境省特集 https://note.com/kanju_datalab/n/n9358be3cb880 /第2号 47都道府県 https://note.com/kanju_datalab/n/n300d53b15953 /第3号 14府省横断比較 https://note.com/kanju_datalab/n/n38cf5b381957

---

いいなと思ったら応援しよう!

この記事は noteマネー にピックアップされました

noteマネーのバナー