「でべそ」
【閲覧注意】本記事は性的内容を含みます。
ハリウッド映画を観ていてウンザリすることがある。
ジャンルにもよるが、汚い罵語がやたらと多い。
犯罪物や戦争物になると、これでもかこれでもかと four letter words を台詞に突っ込んでくる。
世界的に罵語には幾つかの類型があるが、英語では「性行為」に関わるものがとりわけ多い。
代表格は、言わずと知れた「f★ck」である。
翻って、日本語はどうかと言うと、罵語はいろいろあるが、性行為に関わるものはごく少ない。
その少ないうちの一つが、「お前の母ちゃんでべそ」だ。
子供限定の他愛もない捨て台詞だが、元々は子供が口にして良いような言葉ではなかった。
英語の「motherf★cker」や、中国語の「他媽的」などのように、母親絡みの性行為を罵語として使うことがしばしばあるが、「お前の母ちゃんでべそ」もこの類だ。
身体的特徴をバカにするなら、他にも「デブ」や「ブス」などがある。
出ているものを標的にするなら、「出っ歯」や「出っ腹」などもある。
なぜ「でべそ」なのかと言えば、母親がでべそかどうかは他人には知り得ないはずのことだからだ。
昔はビキニもタンクトップもないから、女性が人前で腹部を露出することはない。
相手の母親がでべそなのを知っているということは、
「オレはお前の母ちゃんの裸を見たぞ」
「オレはお前の母ちゃんを寝取ったぞ」
ということになる。
到底小学生が使うような言葉ではない。
のちに、どういう経緯かは定かでないが、しだいに元の意味が忘れられて、子供の無邪気で微笑ましい口喧嘩の定番フレーズとなった。
昭和時代によく使われたようだが、わたしは至って品行方正な(?)昭和の小学生だったせいか、言ったことはないし、言われた記憶もない。
今どきの子供たちは使うのだろうか?
あまりに前近代的で古くさいので、ほぼ死語になってほとんど使われないのではないだろうか。
「人の容姿をからかうのは宜しくない」という学校教育もあって、そもそもこの言葉自体を知らない子も多いのかもしれない。
余談。
日本語の中で、母親絡みの性行為を表す罵語としてもっと直接的な言い方をするものに、古語の「おやまき」がある。
「母親と枕を共にする」、つまり近親相姦を意味する。
英語の「motherf★cker」と同じで、極めて卑猥で露骨な言葉である。
概して、罵語は昔の方がより赤裸々でストレートであり、時代を経て、婉曲な表現になったり、オブラートに包んだような言い方になったりするのかもしれない。
もう一つ余談。
中国近代の文豪魯迅に「論 "他媽的"」と題するエッセイがある。
「他媽的」は、元来、相手の母親を性的に貶める罵語であるが、これを学術的に考察し、中国文化論や社会批判にまで掘り下げている。
本記事の投稿は少々躊躇したが、魯迅先生も論じているテーマなら私も忌憚なく語ってよかろう、と勝手に言い訳をしてアップすることにした。
「お前の母ちゃんでべそ」の成り立ちや歴史的変遷については諸説があり、本記事の内容は、その一つに私見(邪推?)を加えたものである。
駄文御免!
