「リゾートバイト離婚」の話
50代になると、本当に離婚の話をよく耳にする。私だけか・・?
子育てが終わり、夫婦二人だけの生活になる頃。そのライフスタイルが変わったタイミングで、長年見ないふりをしてきたものが一気に表に出てくるのだろう。
私自身も熟年離婚を経験しているせいか、「実はね……」と打ち明けられることが本当に多い。
最近、まったく別々の家庭なのに、驚くほど似た話を続けて聞いた。
一組目は、子ども二人が独立した50才目前の夫婦。奥さんはパート仕事をしながら、自営業の旦那さんを支えつつ子育てをしてきた。
最後の子どもが結婚して家を出た時、ようやく思ったそうだ。
「これで自分の時間が持てる。」
友達とランチへ行く。
旅行する、好きな予定を入れる。
長年家族を優先にしてきた時間を、自分のために使いたかったそうだ。
ところが、それを面白く思わなかったのが旦那さんだった。
旦那さんは、「子どもも独立したんだから、これからは夫婦で過ごしたい。」そう考えていた。
出かける機会が増えた奥さんをオモシロく思わない旦那さんは、ついには浮気を疑い出した。根も葉もないことに奥さんは激怒。奥さんは実家へ戻り、現在は別居状態だ。家族は、このまま関係修復はかなり難しいだろうと言っているそうだ。
そして、もう一つの話。こちらも子どもが全員独立した50代夫婦の家庭。
奥さんは二世帯同居で、義父母の食事、家事、子育て、旦那さんの身の回りの世話までこなしながら、パートも続けてきた。まさに家族を支える人生。二世帯で腐らず、ブラボーでしかない。
子どもが巣立ち、ようやく少しだけ自分の人生を考えられるようになった時、旦那さんにこう話したそうだ。
「リゾートバイトをしてみたい。」
リゾートバイトとは、ホテルやスキー場、観光地などで一定期間働きながら、その土地での暮らしも楽しむ働き方らしい。期間は数週間から数か月といろいろ。
すると旦那さんの第一声は、「俺の飯、どうするの?」「親の飯もあるし」だったそうだ。
その一言で奥さんは心の中で何かが切れたそうだ。
長年、やりたいことも我慢して、家事育児に優先的に自分の時間を費やしてきた。なのに、子どもが独立しても、私はまだ家政婦のような扱いなのか。私は、自分の人生を生きてはいけないのか?
そう思った瞬間、離婚を決意したという。まだ離婚届は出していないが、家族にも義父母にも意思を伝え、着々と準備を進めているそうだ。
この話を最初の夫婦の旦那さんに伝えたところ、「うちの嫁がリゾートバイトなんて言い出したら、俺も即離婚だ。」と言ったそうである。
リゾートバイトって、そんなに離婚ワードなの?もちろん問題はリゾートバイトではない。夫婦が見ている「これからの人生」が、まったく違っていたことだ。
「これからは自分の人生を生きたい。」「これからは夫婦の時間を過ごしたい。」どちらも自然な考えだ。でも、その話を一度もしてこなかった。
子ども中心の何十年間は、それでも何とかやっていける。ところが子どもが巣立った瞬間、「夫婦だけ」が残る。その時初めて、お互いがまったく違う未来を描いていたことに気付くパターンのやつだ。
昔なら女性は経済的な理由で我慢したかもしれない。でも今は働いている女性も多く、選択肢が出来たのだと思う。
「これからも自分を後回しにしてまで、この生活を続ける意味はあるのだろうか」と考える人が増えるのは、ある意味自然。
結婚した頃は価値観が合っていたとしても、人は何十年も同じではいられない。年齢とともに価値観も夢も変わる。だから本当は、夫婦も定期的にアップデートしなければいけないのだ。私もそこを怠った。
熟年離婚を経験した一人として、夫婦が壊れるのは、「今、何を考えてる?」「これから、どう生きたい?」そんな会話を、何年もしなかったことの積み重ねがキッカケになることもあるのだ。あ、マズいと思ったときには、もう相手は遥か彼方に見える感覚になっていて、もう歩み寄ることすら途方もないことに思えてしまうのである。
50代はまさに、夫婦の第二章が始まる年代。あらたな幕開けをするのかしないのか、できないのか。いやはや、いろいろあります人生模様。
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