第10話 導かれる者

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【目次】 https://note.com/kato_hazime_11/m/m57bc528a784c

◆ シンクロニシティ ― 見えない力に気づく瞬間
その日、加藤は何気なく動画サイトを眺めていた。
特に目的があったわけではない。
ただ、疲れた心を紛らわせるように、
流れてくる動画をぼんやりと見ていた。

ふと、動画内の先生が言った。
「神秘十字線、地丘に向かう生命線、
そして聖職紋……  
この3つが揃う人は“導かれる人”です」

加藤は思わず左手を見た。
手の中心付近に、確かに十字の線がある。
生命線は地丘へ向かって伸びている。
人差し指の下には、
細い横線と縦線がいくつも並んでいた。
(……全部、ある)

胸の奥がざわついた。
直感が働いた。 これは偶然ではない。
• 危機を察知し、避ける力
• 先祖からの強い守護
• 見えないものに守られている
動画の言葉が、妙に自分に当てはまる気がした。

◆ 加藤の“見抜く力”と、普通の人の“見えなさ”
加藤には、鷲世や入先が
「仕事をしていない」
「中身が空っぽ」 ということが、
数分で分かってしまう。

言葉の端、視線、態度、資料の扱い方――
そのすべてが“仕事をしていない人間”の特徴を示していた。

しかし―― それを見抜けない人が普通なのだ。
この事実に、加藤は少しショックを受けた。
(……みんな、本当に見えていないのか)
自分が“特別な感受性”を持っていることを、
このとき初めて自覚した。

◆ 陰口による評価の低下 ― 辞めようかと考えた日
鷲世、入先。 この二人の陰口によって、
加藤の会社での評価は底辺に落とされていた。

実際には、加藤が誰よりも早く出社し、
誰よりも丁寧に仕事をしている。
しかし―― 陰口は事実を上書きする。
(……もう辞めようか)
そんな考えが、何度も頭をよぎった。

◆ 倉田ふみひこ部長 ― ダメ部署の黒幕
ラグビー選手のような体格。
しかし自力通勤はせず、奥様の送り迎え。
夜遅くに迎えに来させても、
待ち合わせに遅れても、
悪びれる様子は一切ない。
奥様の不機嫌な表情にも気づかない。

そして何より――
自分の目で人を見ず、噂話だけを信じる。
この性質が、会社の闇を加速させていた。

倉田は「会社を良くしたい」と口では言うが、
その判断は常に見当外れで、
結果として “ダメ部署の黒幕” になっていた。

◆ 倉田と田辺 ― 個室での“謎の説明”
倉田は、何かあるたびに田辺を個室に呼び出していた。
ドアが閉まると、長い説明が始まる。

資料もメモもない。
ただ、倉田が思いついたことを、
思いついた順に話すだけ。

加藤は心の中でつぶやいた。
(……口頭で話したことなんて、
半分も覚えてないだろうな)

倉田の説明は、説明ではなく“説教”に聞こえた。
内容は薄く、論点は揚げ足取り。 結論もない。
それでも倉田は満足げに頷き、田辺を送り出す。

◆ 加藤から見た田辺 ― 優秀なのに“成長を阻害されている”
田辺は優秀だ。 理解力もあるし、
図面を読む力もある。
本来ならもっと伸びる人材だ。
しかし―― 倉田という“ノイズ”が、
田辺の成長を阻害していた。

加藤には分かっていた。
(……あの頷き、理解じゃなくて“聞いてますよ”の合図だろ)

倉田は、頷きの種類の違いすら読めない。
• 納得の頷き
• 反論を飲み込む頷き
• 早く終わってほしい頷き
• とりあえずの相槌としての頷き
田辺はその“ノイズ”を処理するだけで疲弊していた。

◆ 加藤 ― 「読めない」倉田に対して、心の中でアドバイスを考える
倉田は今日も田辺を個室に呼び出し、
長い説明を続けていた。
田辺は静かに相槌を打っている。
しかし加藤には分かっていた。

(部長へ……)
(① 相手の呼吸を読んでほしい   
呼吸を読むことで頷きの意味も理解しやすくなる)

(② 噂話じゃなく、自分の目で心で人を見てほしい  
先入観で人を見るから関係が歪む。会社も歪む)

(③ 田辺の力を信じてほしい。
成長を止めているのは……  
無能部長、ふみひこおめえだよ!)
  
加藤は心の中で静かにそう呟いた。

◆ 母の入院の日程 ― 思い出す“あの出来事”
自宅で母と入院の日程の話をしていた。
母は言った。「元が一人だと心配だよ」
その言葉で、加藤は“あの日”を思い出した。

◆ 突然の異変
2階で昼寝をしていたとき、
突然胸が苦しくなった。
胸が硬くなり、呼吸ができない。
とても苦しい。 声が出ない。

枕元の携帯を手にし、
自宅に電話をかけた。
這いつくばり階段のところまで来た。

母は電話のディスプレイを見たのだろう。
息子の番号を確認し、
電話に出ないまま階段を上がってきた。

◆ 死の間際に見た“映像”
死ぬ間際、
色々な場面を見せられると言われている。

加藤が見たものは、あるテレビ番組だった。
意識を失った女性が深い水たまりに落ちて助かる話。

白衣の人物が説明していた。
「十数分間呼吸ができない状態で、
なぜ彼女は助かったのか?
 
彼女の場合、意識を失っていたためです。  
体を動かすパフォーマンスが少ないほど、
体内の酸素を使い切らずに済むのです」

コメンテーターが言った。
「そりゃ苦しければ体をもがき回すでしょう」

白衣の人物は続けた。
「極限まで苦しい状態だと、体をもがきます。  
しかしそのパフォーマンスが体内の酸素を使い切り、  
寿命を早く縮めます。
 
彼女の場合、意識がなかったことで酸素が保たれ、  
十数分間耐えられたのでしょう」

その話を思い出した加藤は、覚悟を決めた!
無駄なパフォーマンスを止めた!!! 
体を動かさず、酸素を使わないように。

◆ 母の救い
「どうしたの〜!」
上がってきた母は、
壁に寄りかかっている息子を見て、
すぐに救急車を呼んだ。

◆ 体と心が分離する感覚
救急隊が到着し、
加藤をタンカーに乗せた。
その瞬間――
自分の体と心が分離したような感覚があった。

タンカーに乗せられている自分を、
“外側から”見ているようだった。
救急隊の行動も、会話も、すべて覚えている。

◆ 救急隊と医師の会話が聞こえる
救急隊員が人差し指に何かをはめ、
受け入れ先の病院の医師と連絡を取っていた。
「35歳くらいの男性。中肉中背。
呼吸停止。意識不明。  
血ガス……33。いや、30です」

医師の声が聞こえた。
「30か……かなりまずいな。管を通すかもしれない」

救急隊員が答える。
「10分くらいで着きます」

その会話を“外側の自分”が聞いていた。
救急車内で酸素マスクを当てられたとき
―― 呼吸が戻った。
(これで助かりそうだな)

◆ 母への想い
息子の心配より、自分の体を心配してくれ。
手術を無事に済ませて、またビールで乾杯しようぜ。
(母さんには悪いことをしたな……  
息子の死顔を見せてしまった)

加藤は静かに目を閉じた。
(強い守護か……  いや、超ドSの守護だな……
死ぬほど苦しかったぜ
 ……いや 死んでいたのか? 苦笑)
その後、加藤は携帯電話を買い、
母と入院中でも連絡できるようにした。

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