【Kindle出版】第1話 「書きたいことはあるのに、まとまらない」——ひらめきは、待つものじゃなかった
今年の2月、「本を書く」と決めました。
手元には、1年分のジャーナルと、書きためたnote記事の山。 素材なら、たぶん人より多いくらいある。
書きたい方向は、ぼんやりとは見えている。 なのに、それを一冊にまとめる形が、なかなかはっきりしませんでした。
「書きたいことはあるのに、どう一冊にまとめればいいか分からない」。 同じところで足が止まっている人、けっこう多いんじゃないかと思います。
僕はそこから4ヶ月で企画をまとめ、原稿を書き、6月に一冊の本を出しました。 うまく教えられる立場ではないけれど、半歩だけ先に通った人間として、そのまま真似できる手順の形で書き残していきます。
連載は全8回。企画→ペルソナ→文章構成→執筆→タイトルと表紙→価格→KDP登録→発売後と、実際の順番どおりに進めます。 第1回は、すべての土台になった「企画」の話です。
いきなり書き始めない。まず「3つの問い」に答える
企画づくりで最初にやったのは、文章を書くことではありませんでした。 先に、3つの問いに答えることです。
・誰が読むのか(Who)
・なぜ自分が書くのか(Why)
・何を伝えるのか(What)
読者の年齢、置かれた状況、抱えている悩み。 そこまで具体的に言葉にしていきます。
そのうえで、もうひとつ書いてみてほしい問いがあります。
「読み終えた人が、この本を友だちに勧めるなら、何と言うか?」
自分が書きたいことではなく、読者の口から出る一言のほうを先に決める。 この一文は、あとで本の紹介文にもなるし、章立てを選ぶときの物差しにもなります。
僕が置いた一言は「無理に明るい自分を演じなくていいと、心から思えた」。 これを先に決めておくと、入れるべき内容とそうでない内容の線引きが、ぐっとやりやすくなりました。
このやり方で、切り口の違う案を3つ作りました。 かかったのは、実質1日ほどです。
・内向型が消耗せずに働くための生存戦略
・報われなかった経験を、自分だけの知恵に変える考え方
・情報にあふれた毎日から離れて、内省する時間の作り方
並べてみると、3つとも根っこは同じでした。 生きづらかった自分が、少しずつ楽になっていった記録。
最終的に選んだのは、1つ目の生存戦略の案です。 決め手は2つ。いちばん「自分らしい本」になると思えたこと。 そして、同じところで悩んでいる人がいちばん多そうだと感じたことでした。
ひらめきを待たない。材料を広げてAIと埋める
とはいえ正直に言うと、問いを前に、しばらく手が止まりました。 頭の中から捻り出そうとしても、気の利いた答えは出てこない。
そこで、やり方を変えました。 ジャーナルは、Googleドキュメントに日ごとに書きためてあります。 その1年分をそのままAI(僕の場合はGemini)に渡して、壁打ち相手になってもらいながら、問いをひとつずつ埋めていったんです。
自分では通り過ぎていた記録の中から、答えの種を一緒に拾ってもらう。 その地道な繰り返しでした。
頭の中だけで考えると、堂々巡りになる。 でも、目の前に材料を広げてしまえば、あとは空欄を埋める作業です。 ひらめきがなくても、手は動くんですよね。
面白いのは、「これだ」と来た瞬間が、ちゃんとあったことです。 それは机に向かった最初ではなく、さっきの3つの案を並べて見比べたとき。手を動かして選択肢を出しきった先に、ようやくやって来ました。
ひらめきは、待っていても来ない。材料を広げて選択肢を並べた先に、向こうからやって来るものでした。
特別な経験を探さない。今日の記録を一行残す
改めてジャーナルを読み返すと、そこには全部残っていました。
うまく言葉にならなかった感情の走り書き。 少しだけ前を向けた日の、小さな気づき。 分量は日によってバラバラで、歩きながら吹き込んだ音声ジャーナルの日は、やたら長い。
悩みの渦中にいた頃の記録は、そのまま「変わる前」の描写になる。 抜け出していった過程は、そのまま本の背骨になる。
本づくりに必要なものは、ほとんどこの中にあったんです。
しかも当時は、本にするつもりなんて少しもなく書いていたものです。 ただ頭の中を軽くするためだけの、自分のための記録でした。
だから、いつか本を出したいと思っている人に伝えたいのは、これだけです。 「本になるような特別な経験」を探すより、今日のモヤモヤを一行書き残しておくほうが、出版にはずっと近い。
その一行が、1年後にあなたの本の一章になっているかもしれません。
第1話のポイントをまとめます。
・書き始める前に、3つの問い(誰が・なぜ・何を)に答える
・「読者がこの本を人に勧めるなら?」の一言を先に決めて、内容を選ぶ物差しにする
・ネタは頭から捻り出さず、日々の記録をAIと一緒に掘り返す
第2話は、この骨組みをさらに研ぎ澄ませた「ペルソナ」の話。 たった一人の読者を決めたら、タイトルにも文章にも、迷いが減った話です。
あなたのメモ帳のいちばん古いページには、いつの悩みが残っていますか。 それ、もう素材です。消さずに取っておいてください。
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