おばあちゃんは少年院出身①ー少年院を出た日ー
私が女子少年院を出たのは、16才になったばかりの春の日だった。
柔らかな空気に包まれながら、私の胸の中には、はっきりとした思いがあった。
「私って本当に馬鹿だった。これからは真面目に生きよう」
そう決めていた。
10ヶ月ぶりに自由になった安堵は大きかった。
けれど同時に、まだ世の中の流れに慣れない不安や戸惑いも少なからず感じていた。
迎えに来てくれた父の運転する車に、母と私は同乗した。
少年院の門のところでは、担当教官だった文子先生が見送ってくれた。
文子先生は20代半ば、アイビールックにポニーテールの美人で、気さくで話しやすく、入所者からも人気があった。
少年院の建物を出る前に、私は母が持って来た服に着替えた。
それは、10才違いのお洒落な姉が選んでくれた服だった。
「素敵な服ね」
先生は、いつもと変わらない様子でそう言った。
それが文子先生との最後の会話になった。
車が動き出すと、父と助手席の母は話し始めた。
私は、二人が私の出所をことのほか喜んでくれるものとばかり思っていた。
けれど実際には、父と母の間にはどこか私を牽制するような空気が漂っていた。家に帰ったのに、私は迎えられた気持ちになれなかった。
その瞬間、入所前の生活の現実が思い出され、私は心の中で思った。
「ああ、またダメだな」
さらに、家の状況は私を突き放した。
住み慣れた平屋の都営住宅に着くと、10ヶ月のあいだに私の荷物はすっかり処分されていた。
服をしまうタンスすらなかった。部屋の中を見渡しても、そこに私のいた痕跡は、もう何ひとつ残っていなかった。
信じられないことに母は、近所のディスカウントショップでビニール製の衣装ケースを自分で買って来いと言った。
渡されたお金は、確か三千円か五千円くらいだった。
やっと、緊張とストレスの連続だった少年院の日々から解放されると思っていたのに、現実は思いの外厳しかった。
用意された居場所もなく、私は言葉にできない、いたたまれない気持ちでいっぱいだった。
それが、自由になった私の最初の一日だった。
そして私はこのあとまた、自分の本当の居場所を求めて彷徨うことになる。
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※この物語は、私自身の人生を振り返って書いている回想録です。
よろしければ続きも読んでください。
第二章は「私の育った家」です
https://note.com/keen_rose8771/n/n89cb43c733fa
