水の音|シロクマ文芸部(402字)
期限切れなのですが、
素敵なお題だったので書かせて頂きました。
── 水の音 ──
その夜、街中の水の音が変だった。
コップに水を注げば、滝のような轟音が響く。公園の噴水では、一番偉い学者が頭を抱えていた。高く上がる水柱から「ピチョン……」と寂しい音しか聞こえないからだ。
どこの新人神様よ
こんな間違い
私たちだってしないよ
淡い光を纏った細長いスポイトを取り出すと、空気に差し込む。
濁った大音量が紫の液体となって吸い上げられ、代わりに一滴、澄んだ音が落ちる。
すると、軒下の水滴が、いつもの音に戻った。
女の子の隣で白い鹿が耳を動かす。
今日は忙しいね
次はどこ
少女が背に飛び乗ると、鹿は街で一番高いモミの木へ駆け出した。枝を蹴るたび、濡れた雫が星のように散る。
梢の先まで上り詰めると、鹿はそのまま夜空へ前脚を伸ばした。まるでそこにも見えない枝が続いているように、雨雲の向こうへすーっと昇っていく。
窓辺の男の子は、雲へ消える影を見送りながら、元に戻った静かな水の音を聞いていた。
最後まで読んで頂き、
ありがとうございます😊
