見出し画像

虫歯奮闘記 〜100万円かけて歯の健康を手に入れた話〜

2023年から2024年にかけて虫歯の治療に100万円以上払った。

なんとなくたくさん払った気はしていたが、病院の領収書の束をみて目を疑った。イタリアで豪遊ピザできる。

自分の中で歯に100万円払ったという事実を風化させたくないのでここに過程を記す。

はじまり

2023年の夏、引っ越したばかりの私は歯医者に通っていた。慣れぬ土地だったので、Google Mapで調べた駅近の歯医者に通って虫歯を治療していた。

院内はざっと20,30は診察室があるんじゃないかとおもうくらい広くて、たくさんの歯科医師がいるなか、なぜだか院長に診てもらってた。大きく「院長」と書いた名札をしている。

院長「症状はそこまで重くないので軽い詰め物で問題ないでしょう」

の一言とともに軽く削って軽く詰め物をして終わり。それから2,3回検診しても問題なく、あとは1年後にしましょうとなったので、そこまで症状が重くなくてよかったとおもっていた。

それから数ヶ月が経ち、冷たいものを食べたときに治療したはずの歯が沁みるようになった。はじめはなんとか我慢できていたが、だんだん痛みが増していく。

水を飲んでも痛みが出てきてしまい、これは耐えられないと思い歯医者に連絡するも、

「早くて一週間後になります」

のひとこと。歯医者には急患がないのか。こんな痛いままでは食べることも働くこともゆったりYouTubeみることもできない。

すぐに別の歯医者を予約した。

歯が痛むことを伝えると新しい歯医者は当日の夜に診てもらえることになった。患部を診てもらって一言。

担当医「これは虫歯ですね」

嘘だろ。
治療したはずなのにもう虫歯になってる。
慌てるのはまだはやい、再発した可能性もある。

私「元々、別な歯医者さんで虫歯を治療してもらったんですが、再発したんでしょうか」

担当医「いえ、きっと以前から完治してないです」

私「(どういうことだ…?院長だったのに…?)」

担当医 「他にも少なくとも3箇所は深刻な虫歯があるのでまずはレントゲンを撮りましょう」

私「(院長だったのに…?)」

このときはすべて完治するのに1年もかかるとはおもってなかった。

たくさんの虫歯がみつかる

レントゲンを撮った私は、先生からそれぞれの歯の症状の重さと治療方法を教わった。虫歯知識0な虫歯持ちに丁寧に教えていただけてありがたい。

レベル1: 治療の必要なし、経過観察
レベル2: 治療の必要あり、患部を削ったあとに簡易的な詰め物
レベル3: 治療の必要あり、患部を削ったあとに型をとったしっかり詰め物
レベル4: 治療の必要あり、歯の神経を切除して疑似歯に入れ替え

レベル2までは一回の治療で済む軽症といえる。

レベル3からが厄介で、虫歯菌に侵食された領域を削り、詰め物の型をつくり、詰め物ができるまで仮歯で生活し、ようやく治療がおわる。

レベル4は歯の神経が虫歯菌にやられてしまっている。少しでも神経が虫歯に侵されると完治できないので、神経をすべて切除し、歯のほとんどを削り取って疑似歯に差し替え。

この詰め物/疑似歯の値段が高い。材質を銀歯・金歯・セラミックから選ぶのだが、セラミックは保険適用外なので高くなる。

レベル3とレベル4それぞれの治療代は以下

  • レベル3: 15万円

  • レベル4: 30万円

高!虫歯を放置してた私が悪いのだが代償が大きすぎやしないか。

銀歯、金歯は見た目が悪く、耐久性がセラミックより低いので、正直セラミック一択にならざるを得ないのも納得してない。
なんで保険適用外なの?なんでなんで保険適用外なのか。適用なんで保険なのか。

この時点で私はレベル3の歯が2本、レベル4の歯が2本抱えていた。総額75万円。ここまでの大型出費は人生初。もっと前向きなことに使いたかった。

新歯医者からの帰り、ようやく状況を飲み込めた私は前歯医者への困惑と怒りでいっぱいだった。

歯の神経まで虫歯まみれの歯を2本も見逃して軽い治療をしていたなんて。もはやあの院長はわかってて見逃した可能性もある。近所の歯医者のおすすめを聞かれたら「ここだけは行かないで!」と熱くなってしまいそうだ。

ほんとうの虫歯治療は麻酔が大一番

新歯医者ではじめての本格的な治療の初日。

これまでの軽く削るとは比にならない治療が待ってると聞いていたのでとても緊張していた。

受け付けを済ませて待合室に座る。他にも患者さんがいて妙な仲間意識が芽生える。みんなで一緒に歯を削ったり差し替えたりするんだ。

5分も待たずに呼ばれると、最初に診察してくれた歯科医師の方1人に歯科助手が2人待機していた。2畳くらいのスペースに大人が3人も待ってる。この手厚さが歯の重症さを物語っていそうで入室に躊躇した。

席についてうがいをしたあと、今日の流れの説明。予告どおり1本削れるだけ削る。削れるだけ。削れるだけ?

タオルを顔にかけて、まずは麻酔を染み込ませた脱脂綿を患部にあてて表面麻酔。本格麻酔のための麻酔だ。麻酔のための麻酔のための麻酔ではない。

1,2分で脱脂綿を外して歯茎に注射麻酔。歯茎に針がブスッと刺さる感触がして、そこまでいれる?というくらい奥まで刺した後に、麻酔の液体が出てくる圧力で歯茎がグググっと押される。

麻酔 for 麻酔は効いてたんだろうか。これから本番というのにちゃんと麻酔が効いてるのかわからなくて心配になる。

担当医「痛い時は左手をあげてくださいね」

これまで何回も耳にしたおきまり文句。普段なら「どうせ上げることもないだろう」と思っていただろうが今日は違う。すでに手汗まみれだ。

先生がドリルを調整する。「ヴィーン!ヴィーン!」と試し運転したあとに、ドリルを歯にあてて狙いを定めている。

この時点でドリルの感触がやけに感じられた。歯よりも小さそうな三角形の表面がザラザラになっている。こんなにザラザラを感じられていいんだろうか。

麻酔の効きが弱いかもしれないが、まだ確信にいたらない。

先生がドリルをONにする。

「ヴィーン!ゴゴゴゴゴ…!」

一瞬のできごとだった。気がついたら先生はドリルを止めていて、自分の左手があがっていた。

頭の中でアウトレイジのワンシーンが流れる。今まで使ったことのない表情筋が動いてるくらいすごい顔をしていた気がするが、タオルで隠れていたのできっと見られていない。

どうやらおもったように麻酔が効いてなかったらしい。より強い麻酔をより太い注射針で打たれた。最初の麻酔注射の1.5倍くらいだった。

それから5分後。先生はドリルをONにして躊躇することなく歯を削り出す。

反射で左手をあげる。さっきとほとんど変わってない。もう少し慎重にドリルしてよ。

最後の手段といわんばかりに、今度はホチキスみたいなのをほっぺたに打たれた。口を塞がれてるんじゃないかとおもった。

治療開始から30分くらいが経過し、ようやく麻酔が効いて、問題なく治療が進んだ。3回目はさすがに先生も慎重に麻酔が効いてるか確認してくれた。

どうやら麻酔が効きにくい体質らしい。歯の治療で気づけてよかった。大事な手術のときは絶対に自己申告しようとおもう。

2回目の虫歯治療からはいきなりホチキスを打たれるも、なんとか通い続けてレベル3, 4の歯をすべてなおすことができた。

この時点で治療を開始して半年ほど経っている。

使い物にならない歯が虫歯の原因

私は永久歯が揃った頃から、普通の歯と90度内側に傾いて生えてる歯があった。みんな上を向いてるのに、ひとりだけ完全に横を向いてる。全く噛み合わせには参加せず、ただただ舌とぶつかる存在。

怒涛の虫歯治療を終えたあとの検診で担当医の方からお話があった。

担当医「(90度歯を差しながら)この歯が虫歯の原因なので抜いちゃいましょう。」

ゴミはゴミ箱に捨てますよねくらい当たり前のように言う先生に対して、親知らず以外の永久歯を抜くなんて全く選択肢になかった私は意味がわからず詳細な説明を求める。

私「虫歯の原因ですか?」

担当医「この歯を磨くのがすごい難しいので、常にプラークが溜まってしまっています。隣の奥歯は大きいので抜いてしまっても問題ありません」

私「…」

こうして私は親知らずすら抜いてないのにいきなり永久歯を抜くことになった。

どうやら奥歯がビッグサイズすぎて歯が生え揃うときに横に押し出されたらしい。

今考えると、噛むという役割に一切参加せずただただ周りの歯に菌を撒き散らす存在など抜いたほうがいいにきまってるのに、全くその発想のなかったので青天の霹靂だった。

永久歯を抜こう

抜歯の体験はすさまじいものだった。麻酔は効いてるから痛くはないが、歯をペンチで掴んでゴリゴリする音が生々しく聞こえる。

それからスポンッと抜けたあとに「きれいに抜けましたね〜」と元凶と対面。片面が想像よりも黒々としていて、これまでの虫歯の出荷元であることは間違いなかった。

抜歯すると抜いた箇所が穴になる。術後にゼラチン状のパテを埋めてくれるが、隙間があるのでひじきとか青のりが侵入しかねない。なのでなるべく細かいものは食べれなかった。もし穴にひじきがはいってそのまま歯茎が回復したら、一生歯茎にひじきを仕込んだ人間になってしまう。

術後はごはんをたべることがしんどかった。痛み止めを飲まないと触れるだけで痛い。なるべく抜いた跡に食物も箸も触れないよう顔を傾けながら食べていた。顔も厳しいし、疑問系にみえるし、はたから見たらおいしくなさそうにみえただろう。レストランには申し訳ない。

ある程度、回復してくると今度はとても痒い。痒すぎて一度パテをすべて剥がしてしまい、翌日新しいパテを埋めてもらってしまった。

その後は歯茎にかさぶたができる。これまた強い刺激でやぶれそうになるので、またまた顔を傾けながらご飯をたべる生活だった。原始的だが一番効果がある。

それから2週間くらい、食事の痛みに耐え、ようやく完治した。これで虫歯は無くなった。担当医にもお墨付きをもらって歯が染みないライフを満喫できる。

治療をはじめて半年以上、ようやくきれいな歯を手に入れた。このときはそうおもっていた。

虫歯の最終形態

治療をおえて数カ月おきの定期検診をしていたある日、就寝中の私は燃えるような歯の痛みで目覚めた。

奥歯の歯茎が熱を帯びている。

いまにも破裂しそうなくらいパンパンに腫れている。

歩く振動だけで激痛が走る。

歯を冷やすと少しはマシになるのでアイスノンを患部にまいたり、冷水を口に含む。

歯の熱が水に吸収されていく気持ち良さでうとうとするが、水が完全に常温になると再び歯が燃える。

すでに数十万円も払って歯が平和になったはずなのになんで痛みの最高記録を更新しているんだ。

慌てて歯医者に向かった。

担当医「これは歯髄炎(しずいえん)ですね」

私「シズイ…エン…?」

担当医「前回、治療した歯の神経に虫歯菌が残っていて、そこから炎症がおきました。」

私「…」

担当医 「こちらの歯も神経を切除する必要があります」
担当医 「こちらもセラミックにしますか?」

私「…(一本だけ銀歯なのいけるかな、おかしいかな)はい」

担当医「こちらも30万円になります」

私「はい(少しは安くならないのかな…しょうがないか…)」

このときのことは今でもどういうことなのか考えている。言い方的に申し訳なさはなかったので、治療の判断ミスではないのかどうなのか。

最終的に総額100万円を支払い、1年がかりでようやく平穏な歯を手に入れた。

すべての治療を終えて

治療を終えてはや1年、3ヶ月に1回は定期検診に通っている。いまのところ新たな虫歯は見つかっていない。これまで染みるからしばらく避けていたガリガリ君を何も気にせずに食べられるようになった。

私は歯磨きだけでは足りない体質らしく、必ずフロス、できれば歯間ブラシもかけてほしいとのことで毎日やっている。

世の中には雑に磨いても虫歯になったことない人もいるらしい。うらやましいことこのうえない。そんな人も歳を重ねると歯の本数が3分の1になるらしいので、ここから1本も失わないペースで守りきりたい。毎日10分で30万円予防できているとしたらかなり効率いいじゃないか。


いいなと思ったら応援しよう!