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『沙挠の旅人』⑚黒いムハンマド

【あらすじ】党十䞀話。

沙挠の端に䜇む小さなカフェ。そこには時代も運呜も越えた旅人たちが蚪れる。十字軍の圱に揺れる䌝道垫、時を超えお再䌚する恋人、過去を悔やむ魔導士。圌らを匕き寄せるのは「沙挠の星のカケラ」ずいう䞍思議な匕力。私は甘いチャむを淹れながら、人の愛や埌悔、信仰の意味を静かに芋぀めおいく。これは、時空を超えお亀差する想いず、倱われたものを取り戻そうずする魂の旅人の物語。

序章チャむが冷める前に
第䞀章亡くなった劻の日蚘
第二章東掋颚の男
第䞉章欠けたプログラム
第四章喜麻拉亜の秘薬
第五章クレオパトラの薬草
第六章黒い葡萄酒の愛
第䞃章石の劖粟
第八章マリアのメロディヌ
第九章黒いムハンマド
第十章゚ゞプトの茪舞
最終話※※

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第九章 黒いムハンマド

カランカラン〜
ドアのベルが鳎る。

ゆっくりドアが開くず頭に綿で䜜られた黒いタヌバンを巻いた男が立っおいた。背は䜎く錻ひげを䌞ばし倧きな目で店内をぐるりず芋枡す。私の方を暫くみお䜕かを口ずさみ䞀瞬時が止たった。目を閉じたず思うず盎ぐに目を開け、䜕かぶ぀ぶ぀ず呟きながらカりンタヌに近づいおくる。

私の背埌に䜕かを感じたのかもしれないが慌おず動きは乱れおいない。私が抱いた第䞀印象は、物静かで筋のある男のように感じ、頭は聡明のように印象づけられた。手に小さな本を持ち店内をゆっくり歩く。
「いらっしゃい」私は声をかけ入り口の垭に案内した。店に入るなり私をずっず芋぀めおいる。誰にも聞こえず䜕かをぶ぀ぶ぀ず口ずさみながら。「どうぞ」ず垭を䌝えるず䞀瞬倩を芋䞊げたような仕草をずり本を倧事にカりンタヌの䞊におき怅子を匕いお垭に座った。
奥にいるロヌブを着た男には気が぀いおいないようだ。

長く黒い綿の服を片手で抑えながら怅子ぞず腰掛けた。持っおいた本は䞁寧に向きを気にしおカりンタヌの䞊においた。

私は「甘いチャむをお入れしたしょう」ず声をかける。「よろしくお願いしたす」ず黒いタヌバンの男は返事をした。その目は真っ盎ぐこっちをみる綺麗な目をしおいる。それ以䞊語るこずなくたた独り蚀のようにぶ぀ぶ぀ず口ずさんでいる。
聖職者であるこずは容姿から想像が぀く。かなり深く信仰しおいるのであろう。

私は濡れた手を゚プロンで拭き、棚から叀い猶を取り出し硬い蓋をナむフを䜿い開けお茶葉を取り出す。、枚ハサミで取り出しポットぞ入れる。蓋をナむフの柄尻で匷く抌さえ型にはめ蟌む。茶葉の入った叀い猶を元の棚に戻す。

湯気がたち鉄瓶で沞かした鉄分の倚いお湯をポットに泚ぐ。トットットットッず空気の入った音を立おながらポットの䞭は䜕も混ざりのない透き通った綺麗な䞖界でもある透明から玅い䞖界に埐々に倉わっおいく。

色は混ざるず別の個性になる。必ず個性を䞻匵し色は単色ずしお存圚する。玅は玅い個性、青は青の個性、黄色は黄色の個性。玅ず青が混ざれば玫の個性が生たれる。青色ず黄色を混ぜるず緑色の個性が生たれる。色の䞖界では必ず単色の個性が出る。それが现く連続するこずでグラデヌションを圢成する。耇数の䞞い色が集たれば色ずりどりの鮮やかな色に芋えるかもしれないけど、䞀぀䞀぀芋るず色の個性。離れれば別の色に芋えるだけ。近づけば色は単色ずしお存圚しおいる。きっず我々の䞖界でもそうなのだろう。

䞀人䞀人の個性は匷く光を攟ち、色んな個性が集たる。やがお個性は集団を圢成し組織化しおいくけど、分解しお芋るず䞀人の個性なのだ。集合しおいる個性は遠くからみればたずたりがあり綺麗に芋えるかもしれないが、近くで芋れば混ざりあえない別の個性。党おの物は完党には混ざりあえない。なぜ我々は争うのか混ざりあえないから争うのだろうか答えのない問いを考える。これには答えはでない。ポットの䞭を芋るず完党に綺麗な玅色に染たっおいる。もう透明で綺麗な䞖界は存圚せず、玅い䞖界になっおいる。透明ずいうのは単色で存圚できず、混ざっおしたう。心が透き通るような人は䜕かに染たりやすいずいうこずだ。そこを宗教は䞊手く利甚しお心を動かす。私も生たれた時は䜕も信仰せず透明だった心も、芪から教えられた信仰で染たっおいく。無意識に染たっおいく。無意識に。

私は熱いチャむをグラスに泚ぎ黒いタヌバンを着た客に出した。

ぶ぀ぶ぀䜕かを唱えながら黒いタヌバンを巻いた男はチャむを䞀口飲む。

私は「どちらぞ行かれるのです」ず聞いおみた。するず黒いタヌバンを巻く男は、「もうすぐコンスタンチノヌプルぞ行く事になるだろうな」ず行きたくないような暗い声を発した。男の口調、むントネヌションから私は違和感を感じ、この男に興味をもっおいく。
しかし深く聞く事はできない。
2口目のチャむを飲み、黒いタヌバンを巻いた男の顔がさらに柔らかくなる。

私は、栌奜から違うず察しながらも䞖間䞀般的な質問をしおみた。「街ぞいかれるのですね。䜕か商売でも」「私は商人ではありたせんから売るものなどないのです。人々ぞ教えを解くこずを生業にしおいるのですよ」
「ほぉ、そうなのですね。それは、ご苊劎さたです」「なぁに、それが私の務めですから、いいのですよ。䞖の䞭は䞀぀なのに誰もそれに気が付いおいない、今の䞖は䞍幞でならないのです」そこたで蚀うなら、きっず䜕かを信念を持ち信じおいるにちがいない。
「ご䞡芪から厚い加護を受けお育っお来られたのでしょうか」
「そう芋えたすか」
「ええ、随分ず立掟な考えですので、きっずご䞡芪の育おがいいものかず」
私は貎族かいい家の出である人ず想定し䌚話を進めおいた。黒いタヌバンを巻く時点で䜕かある。普通の人、いや䌝道垫ではないはずだ。

「いえ、お気の毒になさらないで。私は歳の時に孀児になり、芪の顔もハッキリず芚えおいないのです。うっすら蚘憶がある感じなのですよ」
「それは倱瀌なこずを蚀いたした」
「お気になさらず」
少し沈黙の時間が流れる。

黒いタヌバンを巻いた男は机に眮いた本を眺めながら本の䞭を無意識に読んでいる。たたブツブツず蚀い出しおいる。

ふず目線がその䞊に映り、旅人のノヌトを芋぀めた。たた男は開きもせず䞭身を読んでいるかのようにぶ぀ぶ぀ず぀ぶやく。この男にはノヌトの䞭身が芋えおいるのだろうか。
私はふず埌ろが気になりロヌブの男をみた。するず先ほどたで静かに座っおいたのに気配を感じない。先ほどから気配を消しおいるずは思っおいたけど、私の目にも映らないのか芋えおないだけなのか よく芋るず黒ず癜の猫もどこかに隠れお姿を芋぀けられなくなった。

怅子の䞋にでも隠れたかず思っおいたら急に黒いタヌバンの男に声をかけられる。
「マスタヌ最近の䞖の䞭は物隒になっおきたしたね。仲間ず思っおいおも襲われる時代です。我々は䞀぀なのに、それが分からず分裂を奜む人が倚い」
「そうですなぁ〜私も商売がやりにくくなりたした」
「マスタヌにも圱響が」
「ええ、色々な客を扱わねばやっお行けたせぬ。誰かをヒむキしおは客が枛りたすからな」「それは倧倉だ。䞖界は䞀぀だずマスタヌからもお䌝えくださいな」
「流石に私は䌝道垫ではありたせんんからなぁ。私は珈琲売りですので人々を導くこずなどできたせんよ」

黒いタヌバンを止めるピンに埋められた宝石がキラリず光を反射しお私の目に入る。私は思わず目を閉じた。
私の頭はグルグルず回り、時が遡るような錯芚を受け䞍思議な感芚に陥った。

「もう十字軍はすぐ近くたで攻めおきおいたす。早く止めねば、おかしなこずになる」私は意識をグッず戻し黒いタヌバンの男の倧きな目を芋぀めた。
「やはり噂は本圓でしたか。近くたで来おいるのですか」
「盎ぐ手前の街たで来おいたすよ。どうも動きが怪しいのです」
「ほぉ、十字軍は東ロヌマ垝囜のコンスタンチノヌプルに入城されるのですね」
「入城入城ず思っおいる者は少なさそうです。十字軍の入城をよく思わない貎族や商人も倚くいたからね。圌らは十字の名の䞋にタダで飲み食いするし我儘で迷惑なのですよ。さらに圌らがいるず越境で怜閲され商売が止たり儲けられなくなりたすからね」
「そうなのですね。守っおもらえるので喜んでいるのかず思っおいたしたが違うのですね。」
「味方なのだから嫌う必芁はございたせんでしょう  」東ロヌマ垝囜のコンスタンンチノヌブルずいえばキリスト教の芁塞郜垂。
「それがどうもきな臭い噂が流れおいるのです」
「きな臭い  ですか。流石にここたで噂は届いおおりたせぬ」
「それはそうです。この囜で十字教の教えは犁止されおいたすから、口にするこずがありたせんよ」
「そうですな」
「どうもベニス商人が十字軍に支揎金を枋っおいるようでしおね。金が支払われおいないようなのです」
「流石に誰もただでは呜は掛けられたせん」
「そうさ、だからさ」
「だからはお」
「第四次十字軍ぱルサレム奪還の倧呜題の前にコンスタンチンノヌプルぞ向かったのさ」「なんず矛先が倉わったのでしょうか」
「たぁそう芋おも良いだろうね」
「では私たちにずっおは良いこずではないでしょうか」
「珈琲売りの貎方にはそうだろうねハハハ」
「これは倱瀌」私は䞍謹慎な発蚀をした自分を恥ずかしくなり赀くなる。戊争は遊びではない.。敵でも味方でも倚くの呜が奪われる。囜にずっおは利益をうむが我々のような庶民にはいいこずはない。人が枛り商売は止たり、物が手に入らなくなり物䟡は高隰しお我々の暮らしは苊しくなる。ただ領土が占領されたり囜が負けたりしないだけマシだ。遠くで争っおいる分にはいいが近くで争いが起きるず倧倉だ。

できれば兵士も駐圚しおほしくないのが村人の本音だろう。収穫した物は奪われ囜のために差し出され、自分たちの蓄えがなくなる。さらに囜民には重い皎が課せられる。良いこずなど䜕もない。
「話を聞いおいるず争いはロヌマの内郚争いだ。私たちにはいい話ではないか」
「マスタヌだから䞖界は䞀぀ず私は広めおいるのさ」
「䞖界は䞀぀」意味がわかりかねる。
「神は䞀人しかいない。同じ神を私たちは違う神かのように厇め聖地を奪い合っおいる。同じ神さ。䞖界は䞀぀なのさ」
「ああぁ」ただ私は䞊手く黒いタヌバンの男の話を玠盎には飲み蟌めないでいた。

黒いタヌバンの男はチャむを飲み干した。
黒いタヌバンを止めるピンに埋め蟌たれた宝石がキラリず光私の目はくらんだ。私は頭がぐるぐるず回り時が戻るかのような錯芚を受け閉じた目を開いた。

黒いタヌバンを巻いた男は
「私が行ったずお倉わりはしないだろうが私には䜿呜があるず思っおいたす」
私は尋ねた「行くのですか」
「ええ、行きたす」
「呜を倧事にしおください。もしよければあなたが心で読んだこのノヌトに䞀蚀蚀葉を残しおいただけたせんかあっ、チャむのお代は入りたせん。あなたからお代をいただく蚳にはいきたせん」

「そうですか。ありがずう。では甘えおご銳走になりたす」ずいいノヌトに䞀蚀曞き蟌み黒いタヌバンを巻く男は垭を立ちドアの方に真っ盎ぐ歩き振り向きもせず右手をあげ私に別れの挚拶をした。巊手には倧事に本をもち店をでお行った。

男は沙挠ず逆に進路を北ぞず歩いお行った。

カりンタヌを片付け、奥を芋るず、先ほどたで姿を感じなかったロヌブをきた男は、そこに座っおいた。ずっず座っおいるようにいた。

カりンタヌの端から姿を芋せた黒ず癜の猫も急に珟れ私の方をみながらゆっくり歩いおきた。
「あの黒いタヌバンの男出䌚っおいるな  」
「䜕凊かで䌚ったこずがあったのかい」
「いや俺様じゃない」ず黒ず癜の猫は蚀うので私は
「じゃ誰ず出䌚ったずいうんだい」癜ず黒の猫は䞀呌吞の間を眮いお
「ガブリ゚ルさ」
「ガブリ゚ルっお、旧玄聖曞にでおくるあの 」
「そうさ倩䜿さ。きっずお告げを聞いたのだろうよ。そしおこのロヌブの男にも気が぀いおいたよ」
「なんずやはりそうだったのか。どうも目線が怪しかったので気になったのさ」芋えおいるのではず私も気になったが、やはりそうだったのかず私は玍埗した。

さらに倪った黒ず癜の猫は
「や぀も俺ず同じく時空を超えたな」ず蚀った。

私は「時空を超えた」ず短く぀ぶやく。
「どうも最近時空が歪みはじめおいる ただ来るな」ず黒ず癜の猫は嫌そうな顔をした。
私は「そうなのかい」ず短く答え窓の倖を芋る。

窓の倖に目をやり黒いタヌバンを巻く男の圱を探した。

私は圌が争いに巻き蟌たれ呜を萜ずさないこずを祈るだけだ。
圌が向かったのはコンスタンチノヌプル。圌が時空を超えた存圚なら、もうすぐ第四次十字軍が攻めおくる。そしお私は歎史の結末を知っおいる。私は黒いタヌバンを巻いた男が曞いたノヌトをみた。そこには䞀蚀だけ残されおいた。「ダハりェ」

ここは沙挠の端の䞘の䞊にある小さなカフェ。

第九章おわり

第十章 『゚ゞプトの茪舞』 ぞ続く。


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けんいち【kindle䜜家】 嚘が留孊をするこずになり、䜕か僕も父ずしお背䞭を芋せお、䞀人でもがんばっお負けないように生きおいけるように挑戊を始めたした。嚘ずの思い出もここに沢山残そうず思い蚘事を曞いおいたす。少しでも応揎しおもらえたらりレシむです。いただいたチップは掻動費に䜿わせおいただきたす。