掌編小説|お弁当
朝五時半に起きて、卵焼きを巻きます。
だし巻きにするか、
甘い卵焼きにするか、
いつも迷うんです。
あの子は甘い方が好きだったから、今日も砂糖を多めに入れます。
冷凍のブロッコリーを解凍し、ミニトマトのヘタを取ります。
詰めすぎると蓋が閉まらないから、彩りを考えながら少しずつ。
隅にウインナーでタコを作るのは、もう何年もやめられない癖です。
あの子が中学生になってからは
「子供っぽい」
と笑われたけれど、それでも作ります。
笑われるのが嬉しいんです。
弁当箱に蓋をして、布で包みます。
リビングの椅子に座らせてある、あの子の学生鞄の横にそっと置きます。
「今日も一日、頑張ってね。」
そう声をかけて、いってらっしゃいの代わりに頭を撫でます。
夕方になると弁当箱は空になって戻ってきます。
いつも綺麗に食べてくれます。
残さず食べる子に育てた覚えはあるけれど、育てた記憶の方はここ数年、驚くほど薄いです。
洗い物をしながら、ふと思います。
『あの子の顔、最近ちゃんと見ていない気がするな。』
声も、思い出そうとすると輪郭がぼやけるような気がするんです。
でも大丈夫です。
空になった弁当箱がその証拠!
今日もちゃんと、生きて、食べてくれています。
夕方、玄関の鍵が開く音がした。
仕事から帰ってきた夫が、リビングを覗いて足を止める。
椅子の上の、
空になった弁当箱、
鞄、
頭を撫でられた形に少し乱れたクッション、
いつものように表情をこわばらせる。
「……今日も作ったのか」
夫はそれ以上何も言わず、黙って弁当箱を片付け始めた。
台所の隅、賞味期限の切れた調味料と一緒に積まれた同じ空の弁当箱が、もう何十個も並んでいた。
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すみません。初めて小説ってやつ書いてみたんですけどどうでしたでしょうか?すこしでもおもしろいと思っていただけたらうれしいです。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
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