マレーシア 【地政学×SCM】半導体不足の鍵を握る国、マレーシアの爆発力と現在地
「半導体不足の問題=台湾やアメリカの動向」だと思っているなら、それは大きな勘違いです。
世界の電子機器の命運を握る「本当の急所」は、東南アジアに潜んでいます。
今回は、日本を猛追するサプライチェーンの要衝、マレーシアの正体を暴きます。
こんにちは、サプライチェーン・マニアの瀬崎健です。
今回は、世界の半導体サプライチェーンを裏で支える「隠れた主役」マレーシアに、スポットを当てます。
日本が少子高齢化で足踏みする中、猛スピードで追い上げる国。
なぜ今、世界中の企業がこの国に熱視線を送るのか。
日本との徹底比較と、経済の推移から、その「現在地」を解き明かします。
若さと多様性が生む爆発力
まず、数字で並べてみましょう。
見事なコントラストが浮かびます。

国土面積は、日本の約9割。
規模はほぼ同じです。
でも、人口は大きく違います。
日本は1億2448万人。
マレーシアは、およそ3340万人(2023年)。
数だけ見れば、日本の勝ちに見えます。
でも、本当の違いは「中身」にあります。
働く人たちの、平均年齢です。
日本の平均年齢は、世界最高峰の約49.0歳。
対するマレーシアは、約29〜30歳。
街を歩く人たちのエネルギーが、もう違います。
公用語はマレー語。
でも現場では、英語も中国語もタミール語も飛び交います。
彼らは、生まれながらのマルチリンガル。
マレー系、中国系、インド系が共に暮らす、多民族国家ならではの強みです。
GDPで見る「今」と「勢い」
経済の総量、名目GDP(2023年)を見てみましょう。
日本は約4.6兆ドル。
世界第4位を、まだ死守しています。
マレーシアは約4000億ドル。
総量では、日本が圧倒的です。
でも、「1人あたりGDP」を見ると、景色が変わります。
日本は約33950ドル。
マレーシアは約12000〜13000ドル。
すでに「先進国の目安」とされる、1万ドルの壁を突破しています。
かつて日本が駆け上がった、高度経済成長の坂道。
今、マレーシアはその坂道を、猛スピードで登っています。
武器は、若い労働人口。
そして、国を挙げた高い経済成長率です。
ASEANの中の「マレーシアの立ち位置」
視野を、東南アジア全体に広げてみましょう。
ASEANの成長を見ると、すさまじい「格差と猛追」が見えてきます。
トップを走るのは、シンガポール。
1人あたりGDPは、約9万ドル超。
日本すら遥かに超える、超ハイテク国家です。
一方、最下位のミャンマーは約1100ドル。
同じASEANなのに、その差はなんと80倍以上。
発展のステージが全く違う国々が、ひとつの経済圏を作っているのです。

このグラデーションの中で、マレーシアはどこにいるか。
答えは、トップ集団の背中が見える位置。
マレーシアは、あの中国と並んで「1人あたり1万ドル超」のグループにいます。
世界の工場から、世界の市場へ変わった中国。
その中国と肩を並べながら、日本との差を、着実に縮めています。

さらにその下には、巨大なエネルギーが控えています。
インドネシア、ベトナム、フィリピン。
人口大国たちは今、4000〜5000ドル帯にいます。
実はこの「3000〜5000ドル」、サプライチェーンの世界では魔法の数字です。
自動車や家電が、一気に普及し始める「モータリゼーションの沸点」だからです。
このゾーンに突入する国がひしめくASEANは、今後最も伸びる巨大市場。
その先頭を走るマレーシアの優位性は、揺るぎません。
半導体サプライチェーンの要衝
最後に、産業の「構造」を見てみましょう。
名目GDPに占める割合に、マレーシアの本当の強さが表れています。

まず、製造業の割合。
成熟した日本は、約2割。
マレーシアは、23.40%です。
特に有名なのが、マレーシアのペナン州。
世界的な半導体の一大生産拠点です。
後工程、つまりパッケージングやテストの分野では、世界シェアの約13%を握っています。
もしマレーシアが止まったら。
世界の電子機器は、供給が止まります。
それほどのインパクトを持つ、サプライチェーンの要衝なのです。
そして、もうひとつの強さが「資源」。
パーム油などの農林水産業が、6.70%。
石油や天然ガスなどの鉱業が、7.40%。
日本にはほぼゼロに等しい、この第一次産業と鉱業。
これがマレーシア経済の、強力な安全弁になっています。
ものづくりと、天然資源。
この二刀流こそが、崩れない基盤です。
若い労働力で、世界の半導体を支える。
豊かな天然資源で、国を潤す。
これが、データから見えてくる「マレーシアの現在地」です。
次回は、マレーシアの貿易状況を見ていきます。
お楽しみに。
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