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【ショートショート】息づかいのカウント(364文字)

ひとひらの雪が、彼女の黒髪にそっと落ちた。

ふと、その儚さを指先で受け止めたい衝動に駆られたが、僕はただ見つめることしかできなかった。

みぞれ混じりの風が通りを抜け、ふたりの間に冷たい線を引く。

よるの帳が降りる前に伝えなければならない言葉が、胸の奥で震えていた。

いつかは笑って思い出せる日が来ると信じたいけれど、それが今日なのか明日なのかは分からない。

むかし、彼女が僕にくれたマフラーは、まだ柔らかな温もりを持っていた。

ななめに差し込む街灯の光が、彼女の横顔を金色に縁取る。

やさしい笑みを浮かべるその唇が、遠くの灯りのように僕を惹きつける。

ここのところ、言葉を飲み込むたびに、心の雪解けは少しずつ遅くなっている気がする。

とうとう僕は、声を震わせながら「今でも好きだ」と告げた。

「……待って! この話、数え歌みたいになってる!」

(了)


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五十嵐雉虎(イガラシ・キジトラ)|準文筆家|掌編小説・ショートショート作家 よろしければ、ぜひ応援をお願いします!

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