尾形光琳 杜若図屏風はなぜ膨張するのか -根津美術館 光琳派展-
数あるnoteの中から
おいでいただきありがとうございます。
今回は
根津美術館(東京・青山)の
開館85周年記念特別展
光琳派
国宝「燕子花図」と
尾形光琳のフォロワーたち
のレビューをお届けしたいと思います。
<概要>
光琳派 国宝「燕子花図」と尾形光琳のフォロワーたち
2026年4月10日(土) ~ 2026年5月10日
残念ながら
現在は会期終了となっております。
私も
終了間際に飛び込みで行ってまいりました。
(今回も
「システィーナ礼拝堂」と同じく
ライトなレビュー記事を
かかせていただきました。
「光琳の杜若図と
ミケランジェロの
システィーナ礼拝堂」については
別記事でじっくり書いてみたいと思っています。)
尾形光琳 杜若図屏風
毎年の恒例として3年目
国宝
尾形光琳の
杜若図屏風は
毎年、杜若の咲き乱れる
この時期
(4月の終わりから5月のはじめ)に
根津美術館で公開されています。
私はこの図屏風が大変好きで
これまで何度か足を運んでいます。
特に、ここ3年は連続で
この時期の公開に伺っています。
杜若図屏風以外の企画の部分は
少しずつ違い、
また展示される場所も
少しずつ、変わっています。
毎年伺っても楽しめると思います。
完璧な構図「夏草図屏風」
今年は杜若図屏風だけでなく
どうしても実物を見たかった作品が
ありました。
こちらのサイトで見つけたのです。
夏草図屏風 尾形光琳筆
(サイトに入ってすぐに見ることができます)
この絵を見た時
驚いたのです。
「この構図、完璧すぎる。」
あるべきものが
あるべき場所へ
ぱちっとはまっている感じ。
見事なレイアウト、余白。
杜若図屏風もそうなのですが
光琳はどうしてこんなに
配置がうまいのでしょうか。
実際に拝見して、
本当に美しかったです。
四季草花図屏風(個人蔵) 尾形光琳
深江芦舟筆の
四季草花図屏風の下に、
参考として
尾形光琳の四季草花図屏風の図版が
小さめに展示されておりました。
これもたいそう美しく。
小さな図版でしたが
目を奪われてしまいました。
ネットではほとんど見つかりませんが、
リンクがあったのでご参考に。
植物がばらばらに無造作に
描かれているように見えますが
すべての生命の力が
見事にレイアウトされ
そのことで
植物はさらに力をもち
どんどん伸びていくかのような絵です。
個人蔵とのことですが。
いつか展示されることもあるのでしょうか。
尾形光琳 杜若図屏風
3年連続で伺う前にも
何度か拝見しています。
初めて見た時は
絵を鑑賞し始めた頃で
絵なのか、デザインなのかも
よくわからず。
どう上手なのかも
なぜ国宝なのかも
理由がわからないまま、
「教科書に載っていた有名な絵だな」
と思いありがたく鑑賞しました。
でも、この絵は
何年も何回も
会いに行くうちに
ある時突然、姿を変えてきたのです。
・3年連続鑑賞の1年目。
異変が起こり始めたのは
さまざまな絵の鑑賞経験も
多少は蓄積されたという頃。
2年前です。
杜若が膨張している
見事に描かれた
杜若の花
青と藍の生命が
ずくずくと、ぶくぶくと
沸騰して
溢れて、広がって
大きくなっていく。
もはや
みにくく、ふくれあがるように。
でもその生命の膨張が
目をそらせなくさせるのです。
ここでやっと
「この絵は相当すごい絵なんだな」
と理解しました。
この膨張現象
見に行った方で
自分もそうだった、という方が
けっこういらっしゃるんです。
「今年は昨年より小さく見えた」とか、
「いや、今年はさらに育っていた」とか。
鑑賞者のコンディションと
リンクするのでしょうか。
面白い現象です。
今年は左隻
杜若図屏風は右隻の方が
花の面積も多く
花も大きく
そして
図屏風の中心に描かれており
存在感があります。
右隻の花の方が少し明るい色で描かれているので
存在感がある、とも受け取れます。
右隻に目を奪われることの方が
多いのではと思っています。
昨年も右隻の方が
ずくずくと、
襲いかかって飲み込まれてしまいそうなくらい
生命力が溢れていていました。
もちろん今年も
相変わらず
生命力が膨張しています。
しかし今年は、左隻がよくて。
右隻よりも少し、
ほの暗い藍の杜若。
主張するでもなく
「ただ自然がそこにあるように」
ちょうど目の前に広がり
凛と咲く杜若は
これもまた、
強い生命力をまとっていました。
左隻と右隻で
違う性格をもちあわせているところも
楽しめる秘訣で
見るたびに
その二つの性格が
自分の精神状態にあわせて
リンクし、共鳴し、惹かれるのです。
システィーナと杜若(予告)
今年は
杜若図の鑑賞の前に
印刷博物館で
システィーナ礼拝堂の
VR作品を鑑賞しました。
そこで私は
ミケランジェロの描く人体について
完璧な構造が「生命を抑えきれなくなる瞬間」
があることに気づいたのです。
そしてその直後に
杜若図を鑑賞したわけなのですが、
二つの作品が
どこか深い場所で
繋がっているように感じました。
このテーマについては
別記事でじっくり書いてみたいと思っています。
(三本立てになる予定です。)
その時はまた
遊びに来ていただけたら
嬉しいです。
※システィーナ礼拝堂を
VR鑑賞した件は
三本立ての記事の前に
ライトなレビュー記事として
アップしております。
お庭の杜若
根津美術館といえば、
入り口も素敵ですし
お庭も素敵。
お庭には杜若図屏風さながら
同じ色の杜若が咲きます。
この時期はもちろん満開。
今年は会期終了間際ということで
少し先終わった杜若も一部ありましたが
この「熟れた状態」は
右隻のじくじくした杜若に
とてもよくマッチします。
とても良い状態のお花を
拝見できたなと
嬉しい気持ちで帰ってまいりました。
まとめ
実物の杜若図は
教科書で見る
「美しい日本画」
とは少し違います。
教科書的な国宝、
「杜若をデザイン的に描いていて美しいですね」
では終わらない。
完璧な構造でありながら、
そこから生命が溢れ、
画面の中で膨張し始める。
毎年会いに行きたくなるのは、
その膨張がその年ごとに
違う表情を見せるからかもしれません。
杜若図の公開は
今年の会期は
終了となりましたが
また来年
同じ時期に公開してくれるのではと思います。
その際は
ぜひ実物を前に、
杜若がどのように膨張していくのか
ご自身の感覚で
味わってみていただけたら嬉しいです。
質問、聞きたいこと、ご感想等、
お気軽にコメントを書いていただけるとうれしいです。
記事をまとめてみました。
ご興味のある記事がありましたらぜひお読みください!
はじめに01 -絵の声を聴く、アート鑑賞について- 好きな画家さん一覧
https://note.com/killamaru/n/n0cb504116a87
書き始めた経緯やこのNoteの説明など
はじめに02 -アートの声を聴く鑑賞について-
https://note.com/killamaru/n/n3b42879699f8
「はじめに」の続きですが、私のNoteの中では、♡率が高くて、ありがたいです。
はじめに03 -審美眼は何年で身につくもの?
https://note.com/killamaru/n/ne9792bc439fe
<ドイツ旅2026>
ドイツから戻ってきました -2026.01.13 近況報告-
https://note.com/killamaru/n/nce677f79afbc
デューラーと話したくて家に2回おしかけた話 - デューラーズハウス -
https://note.com/killamaru/n/n681100d72660
フェルメール報告会 - ドイツ旅で鑑賞した絵のレポート -
https://note.com/killamaru/n/n9509726b7b11
フェルメールに隠された法則 - 嫌いだったフェルメールが好きになれた秘密 - [ディープ]
https://note.com/killamaru/n/nab3fbbd02386
<若冲>
若冲からはじめて呼ばれた話 -泉屋博古館東京-
https://note.com/killamaru/n/n79a61287feed
若冲は、今日も私を呼ぶかしら - 三井記念美術館「円山応挙」展 -
https://note.com/killamaru/n/na07051e46676
若冲は、もう1人の天才にためらう、の話 - 東京藝大美術館 -相国寺展
https://note.com/killamaru/n/n85b940e93ef9
<ゴッホ>
[ディープ]ゴッホのひまわりって、おいしいの? - 西洋美術館 ロンドン・ナショナル・ギャラリー展
https://note.com/killamaru/n/n69330619f156
「あなたはどんな鑑賞タイプ?」と「ゴッホの死相」について ゴッホ展 -東京都美術館-
https://note.com/killamaru/n/na3e315c32ca0
ゴッホ美術館(アムステルダム)に行ってきた -美術館レビュー(絵多め)-
https://note.com/killamaru/n/n4e65dea66a63
おいしそうな絵はここにも(ピエール・ボナール) -「ひまわり」異変の後日談-
https://note.com/killamaru/n/n32920ae6c2de
<美術展>
ブラックホールを作りだせる画家 -仙厓展@出光美術館- [ディープ]
https://note.com/killamaru/n/n576fe4a903b7
絵から音がしない理由 -ユトリロ展(SOMPO美術館)-
https://note.com/killamaru/n/nd086f4b57077
定家にきゅんきゅん -国宝熊野御幸記と藤原定家展レポート(三井記念美術館)-
https://note.com/killamaru/n/ne15a8591b9e4
伊勢物語展 -根津美術館- 岩佐又兵衛に感じるもの
https://note.com/killamaru/n/n522358cdf891
僧侶の背中には、実は何があったのか -特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」-
https://note.com/killamaru/n/nb87fb034c08e
マチュピチュの展示じゃない?!けど、興味深い -マチュピチュ展-
https://note.com/killamaru/n/n5dd9d6de4666
<岡本太郎とウォーホル>
岡本太郎の絵をめくってバックヤードをのぞいた話[ディープ] - ウォーホルの続き -
https://note.com/killamaru/n/ndd21dc5e0255
アンディ・ウォーホル「SERIAL PORTRAITS」展(ルイヴィトン) - 岡本太郎のために力をお借りします -
https://note.com/killamaru/n/ndd1a969b04ba
<ランキング>
[異変の起こった美術展ランキング]2025年行った美術展の中から)
https://note.com/killamaru/n/n853c88ce272c
いいなと思ったら応援しよう!
応援お願いいたします!