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世界に一つだけの価値を生み出すために

 自分は何者かということは、自分で決めればいいと私は思います。自分ができることの中で得意なことや、楽しいと思えることなどを続けていくとだんだんとそれが形になっていきます。

 私の場合は美術でした。物心ついた頃から紙に絵を描いて遊んでいました。特別絵が上手かったわけではありません。でも描くことが好きだったのです。中学生になって美術という教科を学習することになりました。中学校2年生の時には、美術の世界で仕事がしたいと思うようになりました。

 美術の教員として働いて、定年後に再任用としてさらに1年働きました。様々な人との出会いから学ぶ中で、自分の作品に向き合う時間をもっとつくりたいと考えて造形作家への第一歩を踏み出しました。

 大好きな美術の世界でどのように生きるかを考えて、退職前から少しずつ準備をしてきました。真鍮を素材とした鋳金(ちゅうきん)といって溶かした金属を型に流し込んで形を作る技法で制作したペーパーウエイトはこれまで世界に存在していなかった形のものです。正多面体は5種類しか存在しません。その中の一つである正五角形が12個集まってできた正十二面体を半分にしてさらに5回スライスして捻った形をもとに形を考えた「ひねり」と名づけた作品は、試行錯誤の末に出来上がりました。5種類のイメージカラーと5つの言葉で彩られています。私のラッキーナンバーである5を造形の要素としてたくさん使いました。

 制作の試行錯誤の中で作ったサンプルの一つを実験的に普段から持ち歩いてエイジングをしてきました。それがタイトル画像のものです。「ひねり」の着色は塗装ではなく、真鍮の表面に化学的な処理をしてあります。本来のペーパーウエイトの使い方ではありませんが、お守りのように持ち歩いて使い込む中で、地金の色がトップの面の角から現れてきました。いい感じに育っています。

 裏面にはロゴマークである覚悟の悟をもとにデザインした刻印を施しています。サンプルなので裏面にも着色してありますが、この面を研磨して最初から磨いた真鍮の美しい肌を見せることも考えています。この場合には、酸化によって時間と共に表面がくすんできます。これを味と捉えるか、定期的に金属磨きで磨き上げてピカピカの状態を保つ手入れを楽しむかは手にした人の自由ですが、真鍮という素材の持ち味をどちらを選んでも楽しむことができるので、裏面の処理を着色か研磨かで悩んでいます。研磨の方が手間がかかるので大変ですが、その分着色された鋳肌と研磨された金属の肌のコントラストを楽しむことができます。あなたならどちらのバージョンが好みですか?

着色バージョンの裏面です。


 覚悟の悟を元に発想したオリジナルデザインのロゴマークは、刻印で入れてあります。この面をフラットに美しく仕上げるために、熟練の職人技が使われています。篆刻(書道の仕上げに使う落款)に使用される篆書で心の形を左側に配置して、右上は漢数字の五ではなく世界的に通用する算用数字の5をデザインに取り入れて、右下の口は口角を上げて笑顔を表現するデザインになっています。

 世界に一つだけの価値を生み出すために、作品が生まれた後から使う人それぞれが育てていくことができる作品というコンセプトです。○○さん愛用のペーパーウエイトということで、持ち主の付加価値も期待できるかもしれません。使う人を笑顔にするラッキーアイテムになってほしいという願いを込めて丁寧に制作しました。


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