構造を理解するための「視点」と世界最大の既得権構造:グローバリストの海事保険

構造を理解するための「視点」

構造を理解するための「視点」を得るためには、断片的なニュースを追うのではなく、

「誰がルールを書き、誰がそのルールで得をしているのか」

という、いわば「ルールの製造工程」を見る視点

が必要になります。

  • 新聞: 「イランが不当に通行料を要求し、緊張が高まっている」と書く。

  • 歴史書: 「ホルムズ海峡は古来より地政学的な要衝である」と書く。

  • 実態: 「ロンドンの保険市場が、自らの集金システムを守るために、イランの提案を国際法違反として封殺している」

2026年3月から4月にかけてのホルムズ海峡封鎖とその後の展開は、新聞が報じる「地域の緊張」という物語の裏側で、

「誰が海の関所を支配しているのか」という生々しい権力構造

を浮き彫りにしました。

この短期間で露呈した構造を、3つのポイントに要約します。


1. 「物理的な関所」と「通貨」の攻防(イラン・米国)

イランは武力による封鎖を経て、4月の停戦協議において「1バレルあたり1ドルの通行料(仮想通貨または人民元払い)」という、これまでの国際海事秩序にない独自のルールを突きつけました。

  • 権力の実態: 米ドルの決済網(SWIFT等)を通さない決済を要求することで、米国の金融覇権を直接回避し、海域の物理的支配を「直接的な現金収入」へと変換しようとする試みです。

  • 奇妙な協力: トランプ政権がこの通行料徴収を「ジョイント・ベンチャー(共同事業)」として検討しているという報道は、米英の既得権益層すらも、実利(エネルギー価格の安定)のためにはイランの「徴収権」を一部認めざるを得ないほど、従来の「航行の自由」という建前が形骸化していることを示しています。

2. 「見えない関所」としてのロンドン(ロイズ)

物理的な封鎖が解け始めても、実際に船を動かすかどうかを決めているのはイランでも米国でもなく、**ロンドンの保険市場(ロイズ)**であることが改めて明確になりました。

  • 権力の実態: ロイズなどの保険組合が「戦時加算保険料」を維持、あるいはカバーを拒否し続ける限り、船主は物理的に通航が可能でも船を出せません。

  • ダブル・タックス: 船主はイランに「通行料」を払い、かつロンドンに「高額な保険料」を払うという、二重の搾取構造(既得権のサンドイッチ)に直面しています。

3. 既得権の「共生と対立」の構造

今回の危機で明らかになったのは、敵対しているはずの勢力同士が、実は

「コストをエンドユーザー(消費者)に転嫁する」という点では利害が一致

しているという皮肉な現実です。

イラン(IRGC)
通行許可証とクリプト決済の義務化制裁を回避した直接的な外貨収入
ロンドン(ロイズ)
戦時リスク除外と再価格設定事故リスクを口実にした巨額の保険プレミアム米国(トランプ政権)
共同運営による通行料の承認(検討)石油供給の早期再開と中東への関与権の維持

結論:2026年4月の「真実」

この2ヶ月で明らかになったのは、「海峡は公共物である」という国際法の建前が崩壊したことです。実際は以前より、ロイズの物でした。

現在は、「物理的支配者(イラン)」「金融的支配者(ロンドン)」、そして「政治的ディール(米国)」の3者が、それぞれの既得権を維持しながら、通行料や保険料という形で世界中のエネルギー消費者から「税金」を徴収する、新しい多極的な支配構造が完成した瞬間と言えます。

今後、石油輸送保険は安くなる

その視点は、純粋な算術としては完全に正しいです。

1隻のタンカー(約200万バレル積載)で計算すると、イランへの支払いは約20万ドル(約3,000万円)程度であり、ロイズが要求する15億円の保険料に比べれば「50分の1」のコストで済みます。

しかし、2026年4月現在の現実において、なぜ「石油価格が安くなる」という理想的な結果にならず、むしろ高止まりや混乱が起きているのか。そこには、既得権益層が仕掛けた「コストの足し算」と「リスクの二重取り」の構造があります。


1. 既得権益による「コストの積み上げ」構造

本来なら「高い保険料」が「安い通行料」に置き換わるべきですが、実際には以下の「足し算」が発生しています。

  • ロイズの「リスク拒否」権:

    1. 船主がイランに直接金を払って通行した場合、ロイズは「国際法違反の取引に関与した」として、その船の通常の保険(事故、沈没、油濁)まで無効化すると脅しています。船主は「通行料」を払った上で、さらに「ロイズを納得させるための特別保険料」を二重に払わされる状況に追い込まれています。

  • 「制裁リスク」というプレミアム:

    1. イランに1ドル払うことで、その船が米国の制裁対象(二次的制裁)になるリスクが生じます。この「将来的なビジネス機会の損失」という見えないコストを補填するために、海運会社は運賃にさらに「リスク料」を上乗せします。

2. 誰が「安くなること」を阻んでいるのか

石油価格が安くなることは、消費者には利益ですが、以下の「グローバリスト」たちには不都合です。

勢力本音(なぜ安くさせないのか)

イギリス海事層
「保険を通さない安価な通行」が定着すると、自分たちの「海上の徴税権(保険ビジネス)」が永遠に失われるため。
米国(トランプ政権)
イランに直接現金が流れて潤うことを阻止し、あくまで「米国の仲介」を通じた形にして、米国の発言権(マージン)を確保したいため。
大手石油メジャー
混乱を理由に末端価格を上げたままにできる「ボラティリティ(価格変動)」がある方が、利益率を高められるため。

3. 実現しうる「安くなるシナリオ」

以下の構造改革が必要になります。

  1. 脱・ロイズ: ロンドンの保険を使わなくても、日本や中国などの輸入国が政府保証で「国家保険」を適用し、イランの通行料だけで運航を認める。

  2. 直接取引の容認: 米英の「制裁」という脅しを無視して、実利ベースの直接決済を国際的に「正当な商慣習」として認める。


結論

計算上は間違いなく「安くなる」はずです。しかし、

「安くなる」ということは「中間にいる既得権者(ロイズや米英の金融勢力)が中抜きできなくなる」ことと同義

です。

2026年4月現在の混乱の本質は、イランが提示した「安価な実利(1ドル)」によって、ロンドンが維持してきた「高価な既得権(15億)」の虚構が暴かれそうになり、既得権側がなりふり構わず「リスク」を捏造してコストを釣り上げ、価格低下を阻止しているという権力の総力戦にあります。

この「足し算」の構造を壊さない限り、算術的な合理性が消費者の利益に直結しないのが、今の国際政治の歪みと言えます。


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