いつからか、急がなくなった
もし、20代の自分に会えるなら。
何を言うだろう。
「もっと頑張れ」
とは言わない。
あの頃だって、それなりに頑張っていた。
「もっと貯金しろ」
とも言わない。
たぶん、そんなことを言っても聞かない。
だから、
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」
と言う。
20代の自分は、
「何が大丈夫なんだよ」
と笑うかもしれない。
仕事のこと。
お金のこと。
これから先のこと。
あの頃は、今よりいろんなことを心配していた。
友達と出かける約束も、よくしていた。
仕事が終わってから飲みに行ったり、
休日に遊びに行ったり。
「次、いつにする?」
なんて話していた。
今は、そういう約束をほとんどしない。
しようとも思わない。
自分から友達に連絡することもない。
向こうから連絡が来ることもない。
みんな、それぞれの生活がある。
たまに、昔の写真を見る。
そこには、今よりずっと若い自分がいる。
髪はまだ太い。
まさか将来、毛が細くなって、
マンバンヘア(笑)にすることになるなんて、
あの頃は知る由もない。
そもそも、
マンバンヘアは毛が細いほうが似合うわけでもない。
太い髪のほうが、さまになる。
ただ、
イケオジになりたかっただけ(笑)。
顔も、ずいぶん変わった。
ほうれい線が増えて、
少し覇気もなくなった。
それでも、
娘には老け込んだと思われたくない。
数か月会わないだけで、
「なんか老けた?」
なんて思われるのは、やっぱり嫌だ。
別に、若く見られたいわけじゃない。
ただ、
「変わらないね」
くらいは言われたい(笑)。
20代の頃は、
そんなことを気にする日が来るなんて、
考えたこともなかった。
夜、家に帰る。
テレビをつける。
昔は音楽番組をよく見ていた。
好きな歌手が出てくると、
そのまま最後まで見ていた。
今は、あまり見なくなった。
テレビを消す。
イヤホンをつける。
音楽を聴きながら、
noteを書く。
書いたものを読み返す。
少し直す。
また書く。
気づけば、夜も遅くなっている。
昔なら、
この時間に何をしていただろう。
誰かに連絡していたかもしれない。
どこかへ出かけていたかもしれない。
今は、
イヤホンから音楽が流れている。
noteを書いている。
それだけだ。
休みの日も、
予定がなければ、そのまま過ごす。
昔は、
どこかへ行ったほうがいいような気がした。
誰かと会ったほうがいいような気もした。
今は、
何もしない時間を、
何かで埋めようとは思わない。
20代の自分に、
今の自分を見せたら、
きっといろいろ聞くだろう。
「仕事はどうなった?」
「結婚した?」
「幸せか?」
僕は少し考えて、
「まあ、それなりだよ」
と答えると思う。
それ以上は、
あまり話さない。
20代の頃に思っていた未来と、
今いる場所は、
少し違う。
でも、
その違いを、
今さら直そうとも思わない。
30代の頃は、
50歳なんて、まだずっと先だった。
40代の頃は、
まだ自分には関係ないような気がしていた。
それが、
気がつけば50歳を超えている。
何か大きな出来事があって、
ここまで来たわけじゃない。
いつもの朝が来て、
仕事をして、
家に帰って、
眠る。
その繰り返しの中で、
いつの間にかここにいる。
もし、20代の自分に会えたなら、
最後にひとことだけ言う。
「そんなに急がなくていいよ」
たぶん、
信じないだろう。
僕も、
あの頃なら信じなかった。
だから、
それ以上は言わない。
ただ隣に座って、
一緒にコーヒーでも飲む。
そして、
それぞれの時間に戻る。
僕は家に帰る。
イヤホンをつける。
音楽を聴く。
noteを書く。
今日も、
いつもの夜だ。
友達から連絡も来ない。
自分からもしない。
娘にも、
まだ「老けた」とは思われたくない(笑)。
そんなことを少し考えながら、
文章を書いている。
20代の自分は、
こんな夜を過ごしている自分を、
きっと想像していない。
僕だって、
想像していなかった。
noteを書き終える。
イヤホンを外す。
スマホを伏せる。
そして、
眠る。
明日になれば、
また明日が始まる。
そういえば、
いつからだろう。
急がなくなったのは。
