見出し画像

なぜ体育会系出身者より細身の理系院卒の方がタフなのか? 知的労働における体力の正体とその獲得法

noteのもっとも読まれた記事にも選ばれました。ありがとうございます。


はじめに
深夜1時。オフィスの蛍光灯が一部チカチカしているのが目につく。

昼も夜もデスクで簡単に済ませた。コーヒーだけで5杯目。エナジードリンクも飲んだ。Chatは鳴り止まず、上司から飛んできた一言が、頭の中で何度もリピートされる。

労働集約的で激務なプロフェッショナルファームではよく見る光景です。

連日の深夜残業。土日の期日遅れの仕事の対応。こんな環境だから体調を崩して病欠する人もしばしば。

ただ、不思議なことがあります。

100kgのベンチプレスを上げ、学生時代はラグビー部。見るからに体力のありそうな体育会系のタフガイが激務で疲弊して脱落している一方で、細身の理系院卒の人が涼しい顔で深夜も休日も淡々と仕事をこなしている。

なぜ、肉体的には強靭なはずの人が脱落し、弱そうな人が最後まで生き残るのか。

答えは単純です。

筋肉の体力と、知的労働を生き抜くための脳体力は、まったく別の設計思想で動いているからです。

脳は、体重のわずか2%しかありません。しかし、その小さな臓器は、全身の酸素の20%、ブドウ糖の25%を食い潰す、非常に燃費の悪いエンジンです。

知的労働の疲れは、肉体労働やスポーツなどと同じ筋肉の乳酸だけではありません。
長時間の判断、マルチタスク、不安、責任感によって、ワーキングメモリや前頭前野が疲労し、交感神経も常に緊張状態になる。その結果として現れるのが、集中できない、飽きる、イライラする、頭が真っ白になる、といった症状です。

つまり、知的労働に必要なのは、脳のメモリを節約し、熱暴走を防ぎ、低電力で長く走り続ける技術です。

労働集約的で激務な知的労働の現場では、この技術は安定したパフォーマンスを出し、業務から長期離脱しないためにも必須の自己管理スキルともいえます。

学生時代にスポーツで輝いていた人。真面目で、期待され、体育会系の上下関係を叩きこまれ、上司の理不尽に逆らうことなく仕事を任されていた人。そんな人ほど、数年も経たないうちに、突然退職したりします。

逆に、最初は頼りなく見えた理系院卒や、静かで地味な人ほど、10年後も淡々と成果を積み上げている。

後者の方が自分の脳という繊細なデバイスを、どうすれば壊さず、低燃費で、長期運用できるかにたけていたと言えます。

なぜ体育会系でも、ホワイトカラーの激務で潰れるのか

多くの場合、体育会系の人は肉体的な基礎体力(筋力や心肺能力)は、スポーツをしていない一般の人よりは遥かに高く、専門のラグビーの試合などをしたら普通の人は手も足も出ないのは見るまでもなく明らかです。

しかし、その強さは、特定のスポーツの競技に最大出力を発揮するように特化されており、激務系ブルシットジョブの適性とは異なるのです。

多くのスポーツの試合は大体が一日のうちの数時間で終わりそこで最大の出力をむかえるという力の出し方をします。

しかし大体の仕事は毎日朝から晩まで連綿と続くので瞬間的な肉体のパフォーマンスを出すのとは出力の形式がだいぶ違うのです。なので短期勝負のエンジンの駆け方を長期戦でしてしまい燃え尽きるという例も見ます。

また、主なストレスは理不尽なことがあるとはいえ、大体は肉体的な負荷に収れんします。
理不尽な理由で大量の作業を振られただけなら彼らもこなせることは多いのです。
意味のない会議。誰も読まない資料。上司の機嫌で変わる方針。昨日決まったことが、今日にはひっくり返る仕様変更。この辺りの耐性はあると思われます。

ただ上司による、論理の重箱の隅をつつくような指摘や物量でこなせない側面への耐性が弱い気がします。

この数字、前提がおかしくない? 論理が飛んでいる。最初からやり直して。こんな感じの知的労働の現場にある終わりの見えないロジックハラスメント系の激務。

理系の院生などはこの手のやり取りに慣れているのでほぼ無感情でロジックを構築し直したりして淡々とこの手の指示に対峙できますが、体育会系の一部の人はこの手のロジックによる詰めで物量の処理などで逃げられない状況に弱い傾向があると思います。

この手のストレスでは肉体的な乳酸疲労でなく、脳や交感神経などの疲労などで最初の危険信号は、飽きる、集中できない、ミスが増える、頭が真っ白になる、といった微細な変化です(ヤバくなってくるとセルフネグレクトみたいになってきます)。

人によっては、この最初のサインを、甘えだと誤認してしまう。

まだ頑張れる。ここで弱音を吐いたら負けだ。そうやって、脳が発している悲鳴を無視して、さらにアクセルを踏み込む。

すると、休んでいる時間ですら、脳がアイドリング状態になり疲労が蓄積していく。

これが、一部の人が職場から長期離脱したりする原因です。

ここまで読んで、もしあなたが最近、やたらと疲れる、昔のように集中できない、休日なのに回復しないと感じているなら、それは気合い不足ではありません。

頭脳労働における適切な自己管理法を仕組み化できていないだけです。

ここからは、同じ仕事量でも疲れる人と疲れない人がいるのか。そして、脳体力と精神スタミナを、再現性を持って鍛えるには何をすればいいのかといいう激務系ホワイトカラーが必ず身に付けるべき自己管理術について述べていきます。

ここから先は

6,908字
この記事のみ ¥ 1,500
Amazon Payで支払うと最大2%還元のチャンス! 9/30まで

■ Kitty’s Secret Library(秘密の書庫)へようこそ\ ここでは、公開の場では語…

ライトプラン

¥500 / 月

スタンダードプラン

¥1,000 / 月

いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!