2012年、哨戒機P-1開発失敗の予言の書
はじめに
2012年当時防衛省は現用の海自の哨戒機、P-C(川崎重工がライセンス生産)の後継として、国産の哨戒機P-1を開発中してた。だがP-1は開発が遅延し、調達単価が高騰しているだけではなく、そもそもプログラム自体に問題があった。
このままP-1の開発・調達を行えば、海自の海上哨戒および対潜能力を大きく減退させ可能性が高い。プログラムをキャンセルしてP-1の開発、配備は中止すべきだ。
その後機体の価格は高騰し、多くの費用が費やされてきたがP-1の稼働率は上がらなった。筆者は2012年に朝日新聞のWEBRONZAにそれを指摘した「予言の書」を寄稿した。
2025年には会計検査院がP-1の稼働率に関する報告書を出して「答え合わせ」となった。
本書はその原稿に加筆訂正を行い、また会計検査院の報告を解説した記事を付け加えている。
目次
開発する前からP-1の失敗は約束されていた
初めにP-1開発ありきで、嘘をついてP-3C近代化案を検討しなかった海幕
用期の近代化、延命化は珍しいことではない
商社に嘘の見積もりを出させる海幕
国内企業の能力欠如が目立つシステム
どんぶり勘定、しかも費用高騰を隠蔽しきた防衛省と海幕
石破茂防衛庁長官もP-1開発に反対
IHIは防衛省に寄生する寄生虫か子供部屋おじさん
会計検査院P-1報告書を読む
開発する前からP-1の失敗は約束されていた
P-1は機体、エンジン、搭載システムすべてを新たに国産開発している。
これは世界的にみて非常に贅沢だ。調達機数が少ない哨戒機で専用の機体を開発するのはコストが掛かりすぎるので、大抵旅客機や輸送機の機体をベースに開発される。海自が使用しているP-3Cも旅客機エレクトラが原型となっているし、英空軍のニムロットも旅客機コメットが原型だ。
P-3C哨戒機
また米海軍がP-3Cの後継として開発したP-8ポセイドンもベストセラー旅客機737をベースに開発されている。世界の軍事費の4割を消費している米軍でさえ、そのような「贅沢」をおこなっていない。P-8は既に英国、カナダ、オーストラリア、インド、韓国などに採用されているが、我が国ではP-1は輸出はできないので自衛隊が採用する機体のみの製造となり、量産によってコストが下がるわけでもない。
しかもP-1ではエンジンも専用に開発された国産だ。このためエンジンの調達単価は、旅客機になどに使用され何千と生産されているものに比べて極めて高くなる。量産品というよりもカスタムメイドといったほうが良い。
当然ながら維持費も高い。しかもP-8ですら双発なのに4発エンジンなので、単純にエンジン整備の手間は2倍かかることになる。
現在海自のP-3Cは稼働率が落ちている。それは予算の不足で十分なパーツ代を含めた整備費が確保できないからだ。このため一部の機体からパーツを取り外して別な機体に使用するという共食い整備までして凌いでいる。このため役90機を保有P-3Cの稼働率はかなり下がっているようだ。
しかもP-1の調達コストは約200億円と高い。このため予定した調達ペースでは調達が出来ず、一年あたりの調達数を減らして調達数を減らすことになる。となれば更に単価は上昇する。いつものような自衛隊の装備調達に隘路に陥ることになる。
P-1は約60機調達される予定だったが、毎年の調達数は2~4機程度だろう。となれば調達年数は15年から30年に及ぶことになる。その間P-3Cとの併用期間が長くなることとなり、訓練・整備・兵站が二重となり、これまた維持コストが上がる理由となる。
もっともP-1の調達数は財務省によって大幅に減らされるだろう。事実P―1の調達は遅れており、このため既存のP-3Cの延命を行っている。この予算も実質的にP-1導入の予算といってよい。
P-1の開発検討時でも既に、バブルの宴は終わっており、高度成長期のような防衛費の右肩あがりは期待できなかった。実際現在の海自の予算は当時よりも下がっている。特に装備調達予算は増大する人件費と、装備の高度化に伴う高騰に圧迫されて右肩下がりだ。
P-1の高コストはわかりきっていた。
初めにP-1開発ありきで、嘘をついてP-3C近代化案を検討しなかった海幕
P-1はP-3Cの寿命が尽きるから後継が必要だと海自は説明してきたがそれは事実ではない。我が国のP-3Cは80年台から調達が開始され、米海軍のそれよりもかなり機体年齢が若い。またP-3Cの定数は80機だが、それ以外に10機ほどの余剰機があり、これをローテンションで回している。しかも先述のように部品とりをした機体は飛べないので、平均飛行時間は決して長くない。ある程度の機体延命措置を行えばまだまだ十分に使用が可能だ。
実際、P-1の開発遅延のために海自は近年既存のP-3Cの機体延命のための予算を要求している。
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