タイムリープのミステリー小説『Y』。こういう伏線の入れ方は、個人的に好きですね
今回紹介するのは佐藤正午さんの『Y』です。
佐藤正午さんは『月の満ち欠け』で第157回直木賞を受賞、『熟柿』は2026年の本屋大賞にノミネートされています。
『Y』は1998年11月に出版された書籍が、2024年10月に再文庫化されたものです。既に読んだことがある人もいると思います。
『月の満ち欠け』の「ジョン・レノンが死んだ日……」まで遡りませんが、『Y』の設定は今読むと少し古さを感じます。
さて、『Y』の特徴はこの2つです。
・伏線が並行世界にある
・男性には恋愛小説、女性には?
いつものように、ネタバレなしで、本書の特徴を紹介します。
・概要
文庫本の裏表紙には次のように紹介されています。
秋間文夫のもとに不審な電話がかかってきた。北川健と名乗るその男は、かつて秋間の親友だったと言うが、秋間には心当たりがなかった。読んでほしいものがあると告げられた秋間は、原稿が記録されたフロッピーディスクと、500万の現金を渡される。北川が何度も時間を逆戻りしているという不思議な物語を読むうち、秋間は18年前に起きた井の頭線の事故のことを思い出す――。直木賞作家が紡ぐ、時間を超えた傑作ミステリ。
なお、文体は『熟柿』とはかなり違います。「エロくない村上春樹」風といえばいいのでしょうか。佐藤正午さんの作家としての歴史を感じますね。
・伏線が並行世界にある
『Y』は、ケン・グリムウッドのSF小説『リプレイ』の設定を利用して、ミステリー小説にしています。
『リプレイ』は43歳で死亡した男が18歳に逆戻りし、25年間を生き直します。
「人生をもう一度やり直せたら」、という夢を実現した男の人生を描いています。
『Y』はタイムリープにおける並行世界、その中に伏線を入れています。
図にすると、こんなイメージです。

こういう伏線の入れ方は、個人的に大好きです。いいミステリーですよ。
・男性には恋愛小説、女性には?
『Y』は1998年に40代だった人をターゲットに書かれています。
佐藤正午さんが70歳なので、同世代に向けたオマージュ作品といえるでしょう。
『Y』を恋愛小説と捉えるかは、男女差がありそうです。
『月の満ち欠け』の映画を観ているとき、2回転生する瑠璃について、妻はこう言いました。
「ちょっと知り合った不倫相手のために、2回も転生する?」
男性は、瑠璃は哲彦を愛していたのだろう、と納得するでしょう。
でも、女性にそういう感覚はありません。
男性はロマンチストです。女性はリアリストです。
男性は『Y』を恋愛小説と考えるでしょう。でも、女性は恋愛小説ではなく、純粋なミステリー小説と捉えるような気がします。
・個人的に気になった部分
出版された当時(1998年11月)は問題なくても、2026年に読むと「コンプラ的に大丈夫?」な記載がいくつかありました。
2024年10月の再文庫化の際に修正してもよかったのかな? と思いました。
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ということで、今回は『Y』を紹介しました。
興味のある人は書店で買ってください。古本屋にもあると思います。
念のためにリンクを貼っておきます。
それでは!
