このチームで過ごす一年を、意味のあるものにしたい
良いチームをつくりたい。
先日、とある重責を担う管理職の方と、チームづくりについて対話をしました。この記事は、そのときに交わした対話がきっかけとなっています。
その方が願っていたのは、単に成果を上げるチームをつくることではありませんでした。
メンバーが安心して意見を出せること。
一人ひとりが持ち味を発揮できること。
仕事を通じて成長できること。
このチームで過ごす時間を、メンバーにとって意味のあるものにしたい。
そんな思いが、言葉の端々から伝わってきました。
1.良いチームをつくりたい
「良いチームをつくりたい」
チームを任されたとき、そう考えるリーダーは多いと思います。
目標を達成できるチーム。
メンバー同士が助け合えるチーム。
安心して意見を言えるチーム。
一人ひとりが持ち味を発揮し、仕事を通じて成長できるチーム。
何を「良い」と考えるかは、人や組織によって違うかもしれません。それでも、自分が関わるメンバーには、できるだけ前向きな気持ちで働いてほしい。ここで過ごす時間が、その人にとって意味のあるものになってほしい。そんな想いをもつリーダーは多いと感じています。
もちろん、リーダーには成果を出す責任があります。
仕事を滞りなく進めること。
必要な数字を達成すること。
問題が起きたときには、判断して対応すること。
どれも欠かすことはできません。
けれど、成果を出すことだけが、良いチームの条件ではないとぼくは思っています。
たとえ目標を達成していても、一部の人に負担が偏っていたり、誰も意見を言えなかったり、メンバーが充実感や成長を感じられなかったりすれば、「このままでよいのだろうか」という感覚が残るかもしれません。
反対に、雰囲気が良いだけで、果たすべき役割や目標が曖昧になってしまえば、それも良いチームとは言い切れないでしょう。
成果を出しながら、一人ひとりが自分の力を発揮できる。
一人ひとりの強みや自分らしさを活かしながら、チームとして前に進める。
そして、このチームで働いた経験を、次の仕事やその人自身の成長につなげていける。
そんなチームをつくりたい。
それは、制度や目標だけでは割り切れない、メンバーへの愛情に近いものなのかもしれません。
2.自分なりの「良いチーム」は考えられる
リーダー自身が、「良いチームとは何か」を考えることはできます。
これまで働いてきた中で、
「あのチームでは、安心して意見を言えた」
「あの上司のもとでは、新しい仕事に挑戦できた」
「忙しかったけれど、みんなで同じ方向に進んでいる感覚があった」
そんな経験をもっている人もいるでしょう。
反対に、情報が一部の人にしか共有されなかったり、誰かに負担が集中したり、目の前の仕事を終わらせることだけで精一杯になったりした経験もあるかもしれません。
うまくいった経験と、うまくいかなかった経験。その両方を振り返ることで、自分が大切にしたいチームの姿が自然と頭に浮かぶリーダーも多いと思います。
先日対話をした管理職の方にも、自分なりの「良いチーム」のイメージがありました。
メンバーが安心して意見を出せること。
一人ひとりの強みを活かせること。
仕事を通じて成長できること。
チームとして必要な成果を出せること。
リーダーとして経験を重ねてきたからこそ、目指したい姿を自分の言葉で考えることができる。それは、チームを率いるうえで大切なことだと、ぼくは思います。
けれど、その方は、自分なりの答えを持っていたからこそ、立ち止まりました。
自分が考えた「良いチーム」をメンバーに示し、そこへ向かってもらう。
果たして、それでよいのだろうか。
メンバーには、リーダーが決めた理想像にただ賛同してもらうのではなく、一人ひとりに「自分たちのチーム」について考えてほしい。
その方が目指していたのは、自分の答えを伝えることではなく、メンバー自身がチームの理想像を考えることを促すチームづくりでした。
3.リーダーの理想と、みんなの理想は同じだろうか
リーダーが自分の考えを言葉にして伝えることは、チームにとって大切なことです。
何を目指しているのか。
何を大切にしたいのか。
どのようなチームをつくりたいのか。
リーダーの考えが分かれば、メンバーも自分の仕事とチームの方向性を結びつけやすくなるでしょう。
一方で、リーダーが最初に完成した理想像を示すと、その言葉がメンバーの考える範囲を決めてしまうこともあるかもしれません。
リーダーが、
「こういうチームをつくりたい」
と話したあとで、
「みなさんはどう思いますか」
と尋ねる。
すると、メンバーは自分の考えを一から探すのではなく、リーダーが示した理想像について考え始めます。
「その考えに賛成です」
「自分も大切だと思います」
「この部分を付け加えると、もっと良いと思います」
そこに嘘があるわけではありません。本当に共感していることも多いと思います。
また、リーダーの考えを尊重し、チームに貢献しようとするからこそ、その方向に沿って発言する人もいると思います。
けれど、その場で出てきた言葉は、その人が最初から考えていたことではないかもしれません。
もし、リーダーの理想を聞く前だったら、別のことを大切だと考えたかもしれません。違う言葉で、自分の仕事やチームへの願いを語ったかもしれません。
先日対話をした管理職の方が大切にしていたのは、全員から同じ答えを得ることではありませんでした。
一人ひとりが、自分にとってこのチームはどんな場所であってほしいのかを考えること。そして、その違いも含めて持ち寄ることでした。
リーダーの理想と、みんなの理想は、最初から同じでなくてもよいのだと思います。
それぞれが考えたことを知り、重なるところや異なるところを確かめながら、「私たちの理想」をつくっていく。
そのためには、リーダーが答えを伝える前に、メンバー自身の考えが生まれる時間をつくることが必要なのかもしれません。
4.「どんなチームにしたいですか」の、その先
メンバー自身にチームの理想像を考えてもらう。
そのための問いとして、最初に思い浮かぶのは、
「どんなチームにしたいですか」
という言葉かもしれません。
シンプルで、まっすぐな問いです。
この問いをきっかけに、それぞれが感じていることや、チームへの願いが出てくることもあるでしょう。
一方で、先日対話をした管理職の方は、「みんなの言葉から作りたい、自分の考えを押しつけたくない」という姿勢を持っていました。
「どんなチームにしたいですか」と尋ねられたとき、メンバーは何を手がかりに考えるだろう。
会社から期待されていること。
チームが担っている役割。
上司が大切にしていそうなこと。
一般的に良いとされているチームの姿。
そうしたことを考えながら、できるだけ適切な答えを探す人もいるかもしれません。
「助け合えるチーム」
「意見を言いやすいチーム」
「一人ひとりが成長できるチーム」
どれも大切なことです。
けれど、その言葉が、その人自身の経験や願いから生まれたものかどうかは、言葉だけを見ても分かりません。
その方の言葉から、模範的なチーム像を集めたいわけではないのだと、ぼくは受け取りました。
一人ひとりが、このチームで過ごす時間に何を望んでいるのか。
どのように働き、何を経験し、どのように成長していきたいのか。
それを、自分自身のこととして考えてほしい。
「どんなチームにしたいですか」よりも、もう少し一人ひとりの内側から考えられる問いはないだろうか。
問いかけたいことは見えている。
けれど、それをどんな言葉にすれば、メンバー一人ひとりが自分のこととして考えられるのか。
この日の対話は、それがテーマになりました。
はい。質問が「ぼくのひらめき」として目立たず、コーチングにおける視点の転換として自然に伝わります。例示も、チームや仕事の特性に合う表現に差し替えます。
5.未来から、この一年を振り返ってみる
コーチングでは、よく対話の相手の視点を変えることを意図した質問をします。
今回の対話でたどり着いたのは、こんな質問。
「10年後に振り返ったとき、この一年がどんな一年だったら、自分のキャリアにとって重要だったと思えますか?」
「どんなチームにしたいですか」と、チームの理想像を直接尋ねるのではありません。
少し先の未来から、これからの一年を振り返ってみる。
そうすることで、今の役割や目の前の業務から少し離れて、このチームで過ごす時間を自分自身にとっての意味から考えられるかもしれません。
新しい仕事に挑戦できた一年。
自分の専門性の今までと違う活かし方を経験した一年。
新しい視点から会社を観察できるようになった一年。
誰かの成長に関われた一年。
自分のこれからを考えるきっかけになった一年。
同じチームで働いていても、どんな一年を意味のあるものだと感じるかは、一人ひとり違うでしょう。
その違いは、揃えるべきものではないと、ぼくは思います。
それぞれが仕事に何を求めているのか。
どのような経験を大切にしているのか。
これからどのように成長していきたいのか。
一人ひとりの答えの中には、普段の業務だけでは見えにくい、その人なりの願いが表れるかもしれません。
この質問は、チームの理想像を決めるためだけのものではありません。
メンバーの一年を、リーダーや会社から与えられた目標だけで捉えず、その人自身の時間として考えてもらうための問いでもあります。
リーダーが考えた「良いチーム」に近づいてもらうのではなく、一人ひとりが意味のある一年を思い描く。
その言葉を持ち寄った先に、みんなにとっての「良いチーム」が少しずつ見えてくるのかもしれません。
了解です。前章の例示を、実際に出た意見のように引き継がないよう削除します。また、対話の副次的な意味と、記事で伝えたいぼくの主張との強さを分けます。
6.それぞれの意味を持ち寄って、チームの理想像をつくる
「この一年が、どんな一年だったら自分のキャリアにとって重要だと思えるか」
この問いへの答えは、一人ひとり違うでしょう。
まずは、それぞれが自分の答えを考える。
そして、出てきた言葉を持ち寄ってみる。
そこには、リーダーが一人で考えていた「良いチーム」の中にはなかった視点が含まれているかもしれません。
同じチームにいても、それぞれがこの一年に求めるものは異なります。
その違いを一つに揃える必要はないと、ぼくは思います。
お互いが何を大切にし、どんな経験を得たいと考えているのか。それを知ること自体にも意味があるのだと思います。
それぞれの答えを見渡していくと、重なる部分も見えてくるかもしれません。
新しいことに挑戦できること。
自分の持ち味を活かせること。
互いの経験から学べること。
仕事を通じて視野を広げられること。
そうした共通点を手がかりにすれば、リーダーから与えられたものではない、「私たちのチームの理想像」を言葉にしていくことができます。
もちろん、全員の言葉をきれいな一文にまとめることだけが目的ではありません。
大切なのは、理想像を掲げることよりも、それをつくる過程に一人ひとりが参加すること。
自分の考えたことが、そのチームのありたい姿に含まれている。
ほかのメンバーが大切にしていることも、そこに含まれている。
そう感じられたとき、チームの理想像は、誰かが決めた言葉ではなく、自分たちで育てていくものになるのだと思います。
リーダーの中にあった「良いチームをつくりたい」という想いは、答えとして示すのではなく、みんなが考えるための問いとして手渡すことができます。
一人ひとりにとって意味のある一年を考える。
それぞれの言葉を持ち寄る。
その中から、自分たちが大切にしたいものを見つけていく。
そんな対話の積み重ねから、みんなにとっての「良いチーム」が形になっていくとぼくは思います。
はい。「リーダーが守るべき手法」ではなく、ぼくがコーチングで大切にしている姿勢を差し出し、チームでの対話にも共通するかもしれない、と置く形にします。「例えば」を加えることで、質問も一つの選択肢として扱えます。
7.問いを置いたあと、すぐにまとめない
メンバーに問いを投げかけ、出てきた言葉を持ち寄る。
コーチングの対話で、ぼくが気をつけていることがあります。
それは「待つ」ということ。
それは今回のような、チームでの対話でも共通する大切なことの一つかもしれません。
リーダーには、対話を前に進める役割があります。
発言の共通点を見つける。
話の流れを整理する。
チームとしての言葉にまとめる。
限られた時間の中で話し合いを形にしようとすれば、どれも必要なことです。
そして、経験を重ねたリーダーほど、メンバーの発言を聴きながら、
「つまり、こういうことだろう」
「この意見とあの意見は、ここでつながる」
「みんなが言いたいのは、こういうことではないか」
と、対話の先にあるものが早く見えることもあるでしょう。
けれど、リーダーが見つけた共通点が、その場にいる全員にとって同じ意味を持つとは限りません。
一見似ている言葉でも、その背景にある経験や願いは違うかもしれません。
発言した本人にも、まだ言葉にできていないことが残っているかもしれません。
沈黙が生まれたときも、すぐに言葉を補わない。
出てきた意見を、すぐに評価しない。
分かりやすい一つの表現へ、急いでまとめない。
もう少し待ってみる。
例えば「それは、あなたにとってどんな意味がありますか」と尋ねてみる。
ほかのメンバーが、その言葉をどう受け取ったのかを聴いてみる。
そうすることで、最初に出てきた言葉の奥にあるものが、少しずつ見えてくることがあります。
ぼく自身も、相手の話を聴いていると、自分なりに見えてくるものがあります。質問したいことも、伝えたいことも浮かんできます。
それを返すことで、対話が動くこともあります。
一方で、こちらの理解を早く示すことで、相手が自分の言葉を見つけようとしている時間を、埋めてしまうこともあるかもしれません。
今、言葉を返すことが相手の助けになるのか。
それとも、もう少し待つ方がよいのか。
いつも明確な答えがあるわけではありません。
だからこそ、問いを置いたあとの時間をどう扱うかは、リーダーにとっても、コーチにとっても、大切なテーマなのだと思います。
問いを投げかけることと同じくらい、その問いから生まれてくる言葉を待つこと。
そこにも、一人ひとりの考えを大切にしようとするリーダーの姿勢が表れるのではないでしょうか。
そうですね。読者が「自信のなさ」と受け取る前に否定しているため、かえって不要な見方を持ち込んでしまいます。削除した方が、メンバーへの想いへ自然につながります。
8.このチームで過ごす時間を、誰のものにするか
良いチームをつくりたい。
その想いが強いほど、リーダーは真剣に考えます。
どのようなチームを目指すのか。
何を大切にするのか。
メンバーにどんな経験をしてほしいのか。
自分なりの答えを持つことは、チームを率いるうえで大切なことだと、ぼくは思います。
一方で、その答えをそのまま示すのではなく、メンバー自身にも考えてほしいと願うリーダーがいます。
メンバー一人ひとりに、このチームで過ごす時間を自分自身のものとして受け取ってほしいからです。
会社から与えられた役割を果たすだけの一年。
リーダーが示した目標へ向かうだけの一年。
そうではなく、自分にとってこの一年にはどんな意味があるのかを考えながら働く。
そのための問いのひとつとして、今回の対話でたどり着いたのが、
「10年後に振り返ったとき、この一年がどんな一年だったら、自分のキャリアにとって重要だったと思えますか?」
というものでした。
この問いに、全員が同じ答えを出す必要はありません。
それぞれの答えを持ち寄り、互いが大切にしていることを知る。重なる部分や異なる部分を確かめながら、自分たちのチームの理想像をつくっていく。
そして、リーダーも自分の答えを持ちながら、メンバーの言葉が生まれるのを待つ。
それは、リーダーが責任を手放すことではありません。
むしろ、メンバーをチームづくりに参加する一人の主体として信頼することなのだと思います。
良いチームとは、リーダーが描いた理想を実現したチームだけではないのかもしれません。
一人ひとりが、このチームで過ごす時間を自分のものとして捉えられる。
そして、それぞれにとって意味のある一年を、ともにつくろうとする。
ぼくは、そんなチームもまた「良いチーム」だと思っています。
