Andrei Epure『Don't Let Me Die』ルーマニア、隣人が玄関前で亡くなった…
Andrei Epure長編一作目。2021年製作の短編『Intercom 15』を長編に引き延ばしたような、ルーマニア・ニューウェーブに名を連ねる不条理系社会派映画と思い込んでいたが、どうもそれだけではないらしい。真夜中、郊外の洞窟から出てきた女は一人で夜道を歩いて自宅マンションに帰り、なぜか他の家のインターフォンを鳴らしまくった挙句、玄関前でうずくまるようにして亡くなった。翌朝、遺体を見つけて通報した主人公マリアは、亡くなったイザベラの息子がどこにいるか分からず、連絡先として名前を書かれることになってしまう。イザベラは墓所を予約していたようで、さっそく葬儀屋から連絡が来るが、実は支払いが滞っていたようで、葬儀は再び宙ぶらりんとなる。そんな中、マリアの家では毎晩のように無言インターフォンが鳴り続け…云々。『ラザレスク氏の最期』の精神的続編などと書かれていたが、ダルデンヌ=プイウ系統ではなくアケルマン=ポルンボユ系統の固定長回しの距離感ある映像である。極端に台詞が少なく、それが本作品の不気味さにも貢献しているし、分かりにくさにも貢献していて、中々に評価が難しい。乳白色で統一されたアパートの内装、電気の付かない廊下、赤いライトが印象的な役所の廊下、黒い壁で覆われた狭い霊安室など、統一された色味や陰影などに不気味さを感じさせる画作りは素晴らしく、そこに静けさの中に聞こえるインターフォンや犬の鳴き声などが加わることで、静けさの中に何かが聞こえるんじゃないか?という緊張感があった。しかし、葬儀シーンの直後に葬儀の許可が下りなかったという話が出てきたり、突然仕事先のリハビリ施設を解雇される話が出てきたり、現実の不条理より語りの不親切が勝つ瞬間が多かった。惜しい映画だ。

・作品データ
原題:Nu mă lăsa să mor
上映時間:108分
監督:Andrei Epure
製作:2025年(ルーマニア, ブルガリア, フランス)
・評価:70点
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