見出し画像

Neko no ote|賛美歌 猫の御手 ――笑える曲に、なるはずだった

この音楽寓話は、ある日のコメント欄から生まれた。

お世話していた猫さんの得意技が「お手」だったこと。

私のもうひとつのアカウント、
ねこのーと「neko note」に一文字足したら、
「neko no ote」になるという話になった。

neko no te

neko no ote。

なんだかフランス語かラテン語みたいで格好いい。

それならいっそ、猫のお手を讃える賛美歌を作ろう。

そんな冗談が、きっかけだった。


昔かわいがっていたモモちゃんという猫が、  

人の指に、そっと「お手」をしていたそうです。

そこから、

Digitus meus petit,  
 manus tua respondet.

「私の指が求めると、  
あなたの手が応える」

という歌詞ができました。

猫のお手が、いつの間にか神聖な交信になっていた。

猫を讃える時、人類はだいたい正気を失います。


そんな感じで、最初はただの猫賛美歌を作っていました。
一緒にお話していた人に、できた曲のURLを渡して。

それで満足するはずだったのに、
私はこれを音楽寓話にしたくなりました。

お手をする「モモちゃん」のために作った歌でしたが、
話を聞くうちにハチワレ猫さんであることが発覚。

昔、実家で一緒に暮らしていた子も、ハチワレでした。

その子は、私が2歳の頃から一緒に育った犬が、いなくなってしまう少し前にうちへやって来ました。

おっかなびっくり、
少しずつ仲良くなっていく犬と猫。
けれど猫が成長しきる前に、犬は亡くなりました。

14年間、姉妹のように育ってきた犬です。
私はしばらく、立ち直れませんでした。

でも、その猫がいてくれたから、私は少しずつ前を向けたのです。

犬と比べて、小さな手。
頼りない存在。

でも、いつも変なことをして、みんなを楽しませてくれました。

ひとつの気配が消えた家に加わった、小さな気配。
それは全然、小さくなんてありませんでした。

記憶が押し寄せて、止まりません。


その子は、お手をする猫ではありませんでした。

それでも白い前足を描いているうちに、

窓辺で眠る姿や、  
こちらへ伸ばされた手や、  
年を取って少し細くなった身体が、  

少しずつ映像の中へ混ざっていきました。

歌詞の中の名前は、きっかけをくれたモモちゃんから。

けれど、映像の猫は、  
私が知らないモモちゃんの生涯を描いただけのものではなくなりました。

モモちゃんと、凛と…
全ての猫に捧げる歌になりました。

私の中に残っていた家族の記憶から生まれた、音楽寓話です。

みんなを、忘れない。


猫の手は、積極的に人間を助けてくれるわけではありません。

けれど、疲れてもう何もできなくなった時、  
ただそこにある小さな手に、救われることがあります。

ubi labor deficit,  
feles regnat.

労働が尽きるところ、  
猫が君臨する。

これは、猫のお手を讃える、  
無駄に荘厳な賛美歌です。

そして、私の中に残っていた、猫の手の記憶です。


歌詞と和訳

neko no ote

Neko no ote,
lux parva in nocte.

Manus mollis,
silentium dormit.

O felina gratia,
in pulvere venit.

O parva potentia,
cor meum tenet.

Neko no ote,
neko no ote,
ubi labor deficit,
feles regnat.

Momo, parvus rex,
in camera lucet.

Digitus meus petit,
manus tua respondet.

O manus felis,
non impera,
sed mane ibi,
sicut stella.

Neko no ote,
lux parva in nocte.

Neko no ote,
pax in domo mea.

和訳

猫のお手。
夜の中の、小さな光。

やわらかな手。
静けさが眠る。

ああ、猫の恩寵よ。
それは埃の中からやってくる。

ああ、小さな力よ。
私の心をつかんで離さない。

猫のお手。
猫のお手。

労働が尽きるところ、
猫が君臨する。

モモ、小さな王。
部屋の中で輝く。

私の指が求めると、
あなたの手が応える。

ああ、猫の手よ。

命じることなく、
ただそこにいて。
星のように。

猫のお手。
夜の中の、小さな光。

猫のお手。
私の家の平和。

※ラテン語をもとにした創作詞です。
和訳は、映像と物語に合わせた意訳です。


令和8年熊本地震の支援先のご提案

音楽寓話



いいなと思ったら応援しよう!

こはる観測所|音楽寓話と、ねこのおと。 観測にご協力いただき、ありがとうございます。 いただいたチップは、ねこ観測員たちのおやつ代と、 観測所の運営に大切に使わせていただきます。