実は世界屈指のコーヒー大国、ノルウェー
「世界で一番コーヒーを飲む国はどこ?」
そう聞かれたら、イタリアやブラジル、あるいはアメリカを思い浮かべるかもしれない。しかし実際にコーヒー消費量で常に世界トップクラスに君臨しているのは、北欧の国々だ。
ノルウェーも、常に世界トップ3の常連であり、独自のこだわりを貫いたコーヒー文化が根付く、知る人ぞ知る「コーヒー大国」である。
今回は、そんなノルウェーの味わい深いコーヒーの世界について書いてみようと思う。
始まりはいつもノルウェーだった。

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世界バリスタ選手権(WBC)をご存じだろうか?
いまや世界中のバリスタが憧れる、コーヒーの格付けや抽出技術を競う最高峰の大会だ。
華やかなステージで繰り広げられる競演は、もはやコーヒーを「淹れる」という行為を超え、ひとつの文化や芸術の領域に達している。
しかし、この世界的イベントのルーツが北欧・ノルウェーにあることは、意外と知られていない。
ノルウェーのコーヒー界の父と呼ばれるアルフ・クラマー(Alf Kramer)氏が、「バリスタという職業の専門性を高め、地位を向上させたい」と考え、1998年に世界で初めてとなるバリスタ競技会を、ノルウェー国内で試験的に開催した。
これが大成功を収め、世界大会発足への第一歩となった。
日本にも大きな影響を与えている。2000年代半ば以降、日本のバリスタたちが世界大会で上位進出を重ね、存在感を着実に高めていった。
そしてついに2014年、丸山珈琲の井崎英典氏が、アジア人として史上初の世界チャンピオンに輝いた。
北欧が生んだ競技文化において、日本の高い技術とおもてなしの心が国際的に評価された出来事となった。
実際、日本のバリスタは技術の正確さと美しい接客カルチャーで、現在も世界トップクラスの評価を常に集めている。
世界最高峰の浅煎り文化があるノルウェー(特に首都オスロ)は、初代世界チャンピオンや、その後も名だたる焙煎士・焙煎所(ロースター)を輩出し続け、コーヒーの名店が密集するエリアもあるほどの「コーヒーの聖地」として知られている。
現地では、ワーキングホリデーを利用してカフェで働きながら、修行に励むがんばり屋の日本人もいるほどだ。
ノルウェー人は最初から「贅沢な舌」を持っていた
北欧の小さな国がコーヒー大国になった背景には、歴史的な偶然と暮らしの文化があるようだ。
私が語学学校に通っていた頃、教科書にこんな話が載っていた。
18〜19世紀、ノルウェーはブラジルへ塩ダラを大量に輸出していた。当時、他国の多くが安価な豆を仕入れていたのに対し、ノルウェーへは、その帰りの船で船体の重り代わりとして「高品質」なアラビカ種の豆が積まれて戻ってきたため、国内には早い段階から良質なコーヒーが広く流通した。
つまり、ノルウェー人は最初から美味しいコーヒーに触れる環境にあったのだ。
それだけでなく、かつての「禁酒運動」において、コーヒーがお酒に代わる「正義の飲み物」として強力に推奨された背景もある。
さらに、寒さが厳しいノルウェーでは、屋内で家族や友人、同僚と過ごす時間が生活の中心になる。温かいコーヒーを囲んで談笑したり、ゆっくり過ごしたりする習慣があり、こうした文化的背景も、コーヒーが日常に欠かせない存在として根付いた理由の一つだと思う。
今も主役であり続ける国民的コーヒー、フリエレ(Friele)

世界最高峰のバリスタを輩出するノルウェーだが、現地の人々が毎日最高級のコーヒーばかりを飲んでいるかというと、実はそうではない。
日常のスーパーマーケットの棚を完全に支配しているのは、国民的ブランド「フリエレ(Friele)」だ。創業は1799年。日本でいうと江戸時代後期ころから、ノルウェー人の朝を支えている。
定番の赤いパッケージの「Frokostkaffe(朝食コーヒー)」は、ノルウェーの家庭やオフィスに必ずある、まさに空気や水のような存在だ。
最近はノルウェーのスーパーでも、1杯ずつ淹れられるタブレット式のコーヒーをよく見かけるようになったが、ノルウェー人のコーヒー愛を甘く見てはいけない。
現地での主役は、今でも圧倒的に「粉」である。なんと言っても彼らは、1日に何杯もコーヒーを飲み干す。
家庭やオフィスのキッチンには、大容量のコーヒーメーカーが必ずと言っていいほど置かれている。フリエレの粉をドサッと入れて、一度に1リットル近くを淹れるのが日常のスタイルだ。
1杯ずつボタンを押すカプセル1杯分なんて、ノルウェー人にとっては味見程度にしかならないのかもしれない。
二つのコーヒーが共存する国
日本のオシャレなカフェでも、ここ最近は「浅煎り(ライトロースト)」のフルーティーなコーヒーをよく見かけるようになった。
スターバックスでいうと「ブロンドロースト」と呼ばれる、酸味のあるさっぱりした豆が、まさにこの浅煎りの仲間だ。
実はこの浅煎り(ライトロースト)文化の源流を作ったのは、ノルウェーのバリスタたちだ。
世界チャンピオンたちの「極上の浅煎り」と、1799年から日常に寄り添い続ける「フリエレの赤いパッケージ」。
この最先端のプロの技と、素朴で温かい日常の定番が、まったく矛盾せずに共存していることこそが、ノルウェーのコーヒー文化における最大の魅力だと思う。

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現地のカフェが、これまた素晴らしい。
木の温もりを感じる家具が置かれ、温かみのある間接照明やキャンドルも相まって、いつまでもそこにいたくなるような、なんとも言えない心地よさがある。
そして何より贅沢なのは、席と席の間にたっぷりと取られたゆとりのある空間だ。隣の視線や会話を気にする必要がなく、自分だけのパーソナルスペースが守られている。テーブルとテーブルの間隔を惜しみなく使うこの贅沢さは、席の効率を優先しがちな東京のカフェでは、なかなか味わえない感覚だ。
その空間をさらに魅力的にしているのが、コーヒーの傍らにある絶品ベーカリー。派手なデコレーションはないけれど、小麦やバターの豊かな風味が活きた、素朴な味わいだ。定番のシナモンロールやカルダモンロールが、コーヒーによく合う。

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日本でなかなか美味しいシナモンロールに出会えないのが寂しくて、自分で時々焼いている。味だけでなく、サイズまで北欧風でデカイ。
自分でいうのもなんだが、ノルウェー仕込みの私のシナモンロールはなかなかの美味しさだ。そこにコーヒーをプラスすれば、おうちのリビングも一瞬でノルウェー風になる。
……なるのだが、やっぱりいつかまた、あの場所で、あの一杯と本場のシナモンロールを味わいにいきたいな、といつも思ってしまう。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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お時間ある時にのぞいてみてください。
