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【Desperado】(1973) Eagles カントリー・ロックから飛躍したコンセプトアルバムの2nd

高校時代、朝の通学前にLPをターンテーブルに乗せて、好きな一曲だけ聴いて家を出る習慣がありました。学校までの通学時間が長く(約1.5h)、ウォークマンなど持っていなかった私は、自宅にいる間に聴きたい曲を聴いて1日の栄養を脳内にチャージするのです。


4月のまだ肌寒い朝、針を落としたのが本作収録の "Tequila Sunrise" 。イーグルスのアコースティックサウンドと親しみ易いメロディライン、そして美しいコーラスワークに癒されました。丁度同じ頃、同名の洋画が封切られてラジオでも流れていた?と記憶しているのですが、そんな事もあって引っ張り出した1枚でした。
ピンと張り詰めた春の朝には、実にピッタリな選曲。栄養をチャージした私は、いつもより爽やかに家を出たことは言うまでもありません。

邦題『ならず者』

本作はイーグルスの2ndアルバム。当時は彼等の中でも一番売れなかった作品ですが、のちに評価され、今では名盤のひとつに挙げられるようになりました。
私、本作が苦手でした…。イーグルスの初体験は中学の時に聴いた『ホテル・カリフォルニア』、続いて『呪われた夜』。ここまですこぶる順調でしたが、3番手の本作で撃沈。以前にリンダ・ロンシュタットの記事でも書きましたが、その頃の私はカントリーロック系への抗体を持ち合わせておらず、本作も冒頭の2曲で卒倒。そもそもイーグルスの出自すら理解していなかったのです。

それでも不思議なもので、聴き続けている内に味わいが出てきました。何より曲の良さを発見。「歌」を大切にしたバンドなのだと改めて実感したのが本作でした。今では歳を重ねたこともあって、本作が一番聴き疲れしないアルバムです。『ホテル・カリフォルニア』が脂っこい極上ステーキなら、本作はシンプルで香ばしいお茶漬けか素麺でしょうか。

作品のテーマは、アメリカ西部開拓時代に登場したギャング、ドゥーリン=ドルトン一味の物語。ドン・ヘンリーグレン・フライの2人が当時ハマっていたそうで、音楽仲間のジャクソン・ブラウンJ.D.サウザーからのアイデアも盛り込みながら、ギャング達のアウトローな世界を描いています。


(アナログレコード探訪)

我が家の『デスペラード軍団』
米国盤(上段左)、英国盤(上段右)
日本盤(下段3枚)
米国盤のみジャケットがテクスチャー加工。
ザラザラしてます。
米国盤はライトで明瞭、音の一つ一つが元気に主張してきます。天気に例えるなら「晴天」。イーグルスの初期2枚はロンドン録音ですが、マスタリング作業はL.A.でした。私の盤はアサイラムとエレクトラが統合され、親会社ワーナー・コミュニケーションズの「w」のロゴが表記された75年以降の再発盤。それでもシッカリした音です。
A面の刻印「CRAIG SAYS Hi」
イーグルスやジョー・ウォルシュの米盤で頻繁に見られるのが、こうしたエンジニアによる落書き刻印。音も良く、初期スタンパーの証拠なのでは?
というのが私の推察デス。
B面の刻印「SANDY + KATHY」
全米チャートで41位と不振だった点からも、本作は暫く初期スタンパーが使われていたのではないかと勝手な想像。
一方の英国盤。音は重く、中低域を重視した「曇天」のウエスト・コーストサウンドです。ベースが強調されてます。私のはホワイト・アサイラムですが、リム表示の頭が「EMI」なので後発盤。
日本初回盤は、東芝音工株式会社の時代のプレスです。当初アサイラムはアトランティックレコードが配給していた為、日本では東芝が発売。音質は英国盤を少し明るくした「曇り、のち晴れ」な感じ。
東芝盤は、内周部にプレス時期が刻まれています。この「3EW」は、「3」→73年、「E」→アルファベットで5番目なので5月、と解読でき、1973年5月のプレス盤となるらしい。「W」は工場名でしょうか。
残り2枚は「3-GW」で、これは1973年7月のプレスとなります。では、3枚でどれが1番音が良いのか?同じ箇所を10回ほど聴き比べましたが、よく分からず…笑💦 尚、東芝盤は73年中に廃盤。イーグルス初来日直前の75年にワーナー・パイオニアが再発するまで空白期間が生まれています。


Side-A
"Doolin-Dalton"

ドン・ヘンリー、グレン・フライ、ジャクソン・ブラウン、JDサウザー4人の共作。ガンマンについて書かれた本から歌詞のヒントを得たらしく、これが本作のテーマへと繋がったようです。仄かなカントリーフレイバーと霞んだサウンドにひっそりと哀愁が漂います。若きドン、グレンがリードボーカルを分け合う姿……深い絆を感じます。

"Desperado"

初期イーグルスの名バラード。ドン・ヘンリーのハスキーボイス、ストリングスを施した優美なアレンジがエバークリーンの如く輝きを放ちます。「歌作り」のセンスを知らしめた一曲です。ギャングたちに「正気に戻ったらどうだ?」と呼びかける歌詞もイイ。個人的に2004年の東京ドーム公演アンコールで、ドラムセットを離れたドンがマイクスタンドの前で熱唱した姿が脳裏に焼き付いています。

Side-B
"Outlaw Man"

本作のB面はトータルコンセプトな流れです。シリアスな曲と朴訥とした曲が交互に並ぶ緩急のついた構成が秀逸。この曲はディランフォロワーと言われ、当時レーベルメイトだったデビッド・ブルーのカバー。ハードな演奏が後年のイーグルスを思わせるかもしれません。

"Bitter Creek"

昔から私が本作で一番好きなのが、このバーニー・レドンの傑作。アルバムの中に深い陰影を与える異質さが際立ちます。弦をはじくような奏法、変則チューニング(DADGBD)の不穏なコード感といい、単なるフォークを超えた深遠な響きに惹きつけられてしまうのです。エンディングのソロも凄まじい…。
このあと"Doolin-Dalton/Desperado (Reprise)" に引き継がれて、本作は淡くノスタルジックな余韻を残しながら幕を引きます。


グレン・フライの回想に拠れば、本作の製作を以ってドン・ヘンリーとのソングライティングチームが出来上がったそうです。カントリーロックのイメージから脱却して、卓越した楽曲で練られたコンセプトアルバム。イーグルスで一番「歌」の温もりが感じられるアルバムではないでしょうか。

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