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フェルメールって結局、なにがすごいの?生物学博士が語り尽くす/福岡伸一「フェルメール 隠された次元」(翼の王国books)R8-21

フェルメールオタクの生物学者が、作品に隠された謎に迫る…!絵に描かれた楽譜は演奏できるのか?真贋鑑定のために絵の指紋を調べる?微生物を初めて観察したレーウェンフックとの関係は?そもそもなぜここまで緻密に部屋を描き続けたのか?

世界中、とりわけ日本人に絶大な人気を誇るフェルメール。写真もない時代に一瞬の光を捉え、遠近法を駆使して描かれた写実的な作品たち。一枚一枚が持つ魅力だけでなく、作品数が少ないことやスケッチの類が残っていないことなどから、そのミステリアスさがまた私たちを引きつける。今年は国内で見られるのは最後になる可能性大の代表作「真珠の耳飾りの少女」が来日するフェルメール展があり、私も熾烈なチケット争奪戦に巻き込まれながらもなんとか、9月に観に行けることになった。

フェルメール展は2018年の上野の森美術館以来なので楽しみにしている。当時を振り返れば、あまりにも人が多く、しかもフェルメールの作品はすごく小さいので、目前にじっくりと見つめることはできなかった。今回は同じ時間でもよりフェルメールの世界を堪能するためにもきちんと予習しておこうと、本書を手に取った。

福岡伸一は「動的平衡」という概念を打ち出した生物学者だ。生き物は細胞分裂を繰り返し、体を構成する細胞を入れ替えながら個体として存続するというもので、部品が全て入れ替わった時にそれは以前と同じと言えるのかを問う「テセウスの船」へのアンサーとも取れる。そして、大のフェルメールオタクという顔も持つ。科学者として客観的事実を積み重ねて真相を考察して物語を組み立てる。小説ではないが、原田マハ作品のように有り得たかもしれない画家の姿を語るロマンに満ちた一冊となっている。

著者は、フェルメールの作品は見る度に新たな発見があると言う。それが冒頭の謎を生み、探究するモチベーションになる。ひとつ解明されればまた新たな謎が生まれる。小さな作品の中に無限の世界が広がっているようだ。それも、レオナルド・ダ・ヴィンチのように謎が残されているということではなく、フェルメールが純粋に「この一瞬を残したい」と追求した結果なのだろう。

もうひとつ、本書の特徴は、福岡伸一による「リ・クリエイト」、つまり本物そっくりなフェルメール作品全37点の写真が掲載されている点。本文の解説も読みながら、フェルメールの画風・画題の変化に見識も深められる。

今年のフェルメール展でどれだけ絵に向き合うことができるか分からないが、額縁の中に広がる世界に思いを馳せたい。

▼8月21日~9月27日に大阪・中之島美術館で開催されるフェルメール展に関連して、福岡伸一のインタビュー映像


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