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#14 人の願いは二十四時間営業らしい夜

連載:「今夜も歩く」第14回

住宅街の外れにある神社まで歩いてきた。
昼は公園のように使われている場所だ。

境内の奥に石の階段があり、
数段登ると本殿がある。
夜でも灯りが残っていて、
静かに浮かび上がっていた。

本殿近くの喫煙所で電子タバコを吸いながら、
ぼんやりと眺めていた。

やがて、
黄色いエコバッグを持った老女が
ゆっくり階段を登っていく。

参拝するのかと思ったが、
バッグからワンカップ酒を取り出した。

蓋を開け、
それを賽銭箱の縁に置く。

しばらく目を閉じ、
両手を合わせて祈り始めた。

見たことのない作法だ。
そのまま、動かない。

五分ほど経っただろうか。
境内に若い声が響いた。

振り返ると、
笑いながら歩いてくる男女がいる。
そのまま本殿の前へ進み、
賽銭を投げ入れる。

拍手の音が夜に広がる。

気づけば、
老女とカップルが並んで祈っていた。

何を願っているのかは分からない。
神様も深夜にまとめて願いを聞くのは大変だろう。

カップルは一礼すると、
すぐに階段を下りていった。

入れ替わるように、
今度はフードを被った男が二人現れる。
顔は見えない。

老女は、まだそのまま祈っていた。

夜の神社は、
思っていたより人が多い。
人の願いは年中無休、二十四時間営業らしい。

電子タバコを吸い終えて顔を上げると、
老女の姿も消えていた。
境内だけが、急に広く見えた。

私は本殿に近づき、
なけなしの小銭を賽銭箱に入れた。
軽い音が響く。

二拝二拍手をしたところで、
何を願えばいいのか分からなくなった。

少し考え、
「元気でいられますよう」と
小さくつぶやく。

一礼して階段を下りる。

境内を抜けながら、
缶チューハイを開けた。

健康とは逆のことを、
もう始めている。

それでも私は、
夜の街を歩いた。

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