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#36 残った提灯、押される夜。

連載:「今夜も歩く」第36回

夜が短くなってきた。
温かいので、
ちょっとだけ遠くまで歩く。

もう散ってしまったというのに、
さくら祭りの提灯が並んでいる。

街を歩き、
休憩できる場所を探す。

少し休んで、
外に出ると、
風が変わっていた。

強く当たる風は冷たい。
季節が逆戻りしたように寒くなってきた。
昼のままの服装では、
少しきつい。

予想出来た人も少ないようで
両腕を巻いたり
パーカーを被ったり
抱きついたりしている。

ビルの角に差し掛かると
一段と風が強くなる。

後ろから、
キャッと小さい叫び声が聞こえる。

風に煽られたような、
短い声。

振り返ると、
数人が肩をすくめている。

ワンピースが揺れ、
ジャンパーがはためき、
髪が乱れている。

誰の声だったのかは、
よくわからない。

人の顔を、
少しだけ追う。

さっきまでの暖かさは、
もう残っていない。

風に押されるように、
少しだけ歩く速度が上がる。

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