街裏ぴんくの『読みも奇妙な物語』 第22回
【暗力】
今回、東京以外にお住まいの方には理解しづらい話になってしまいます。すみません。
どうしても伝えておきたいことがあるんです。
東京に三鷹という街があります。
ありますよね?
三鷹ってね。本当にいつ行っても曇ってるんですよ。
これ分かる方、いらっしゃいますか?
三鷹にお住まいの方、以前三鷹にお住まいだった方、三鷹に何度も行く機会のある方、いかがでしょうか?
僕は今まで少なくとも300回は三鷹に行ったことがあるのですが、いつ行っても見事に曇ってるんです。
三鷹に行くたびに「ほらまた」と声に出てしまうんです。
雨も降ります。
しかし雨が降っているということは曇っているということなので、結局ずっと曇ってるんです。
雨が降るなら雷や雪もあるのかもしれませんが、実際に体験したことはありません。
僕は、三鷹で雨が降っていると嬉しくなるんです。
雨なら雨だと割り切れるからです。
曇っているだけの不穏な三鷹がとにかく怖いのです。曇っているだけの三鷹を見たくないのです。
急に不安になってきたのですが、これわざと独特なことを言って変人ぶってるわけじゃありませんよ。確かに昔はそんな時期もありましたけど僕ももう41歳です。こんな安易に奇をてらったりはしません。
三鷹は確実にずっと曇ってます。嘘ではありません。
変なことを言いますが、僕の目を想像してみて下さい。文の行間から僕の目を覗いてみて下さい。
まずはメガネが見えましたでしょうか?
そのメガネの奥にある目は細くて一重でしょうか?
それが僕です。
同じ意味になりますが、僕は今まで快晴の三鷹を見たことがありません。
もしも曇りが好きな方がいたら三鷹に引っ越されることをお勧めします。行くだけで手軽に曇りを味わえます。
三鷹は曇り続けているので、街全体がずっと、ねずみ色なんです。
これに気付き始めた頃は、まだ迷いがありました。ただの勘違いかもしれないとも思っていました。グレーな状態でした。
少しねずみ色と掛けてみました。今回は真剣な回なのにふざけてすみません。
ふざけていないと気が沈んでしまうので、ふざけてしまいました。
まだ半信半疑だった頃は、どこまでもねずみ色の街を歩きながら淡い期待を抱くこともありました。
本当は快晴にも関わらず、立ち並んでいる建物の高さや角度、並び方などの妙で暗いような気がするだけなんじゃないか?建物が遮っていることによって十分な太陽光が下まで届いていないだけなんじゃないか?と期待を込めて空を見上げても、やっぱり曇っているんです。
三鷹がずっと曇っている理由、その答えを自分なりに出してみたので聞いて下さい。
三鷹駅の南口には高架があります。それに伴い駅前には大きな高架下が存在します。
この高架下の暗力(あんりょく?あんりき?)が空にまで影響しているように思うのです。
三鷹の高架下の暗力は、高架下としては相当しっくりくる暗みなのです。高架下の暗みの正解のような暗みです。それは確かです。
空が、「高架下として満点を叩き出している暗み」に対して何かしらの理由で負けを確信し、高架下の暗みに引っ張られている。それによって空も曇りになっている。そう思うのです。
空は暗力を高架下と同レベルにする為に、雲を増やして太陽光を遮っていると考えています。
芸人の世界で言うと、ライブでみんなでトークしている時、自分よりウケている芸人がいたらそいつのペースに合わせるしかないという状態が多々あります。あの感じと同じだと思っています。
なので、空もしっかり悔しさを感じていると思います。空から見れば高架下なんてとんでもなく後輩ですから。
実は一度だけ、いや一瞬だけ。三鷹の空が明るくなる瞬間を見たことがあるんです。
三鷹駅から歩いて五分ほどの住宅街に、だだっ広い建築現場がありました。
その中に、あずき色のショベルカーが一台停まっていたのです。
もちろん空は曇っていました。
すると一瞬、空がパッ!と強く光ったのです。
そしてすぐに雷のような「ガォーン!!」という轟音が響き渡りました。
僕は我が目を疑いました。
空が、あずき色になっていたんです。
そして、ショベルカーがねずみ色になっていたんです。
あの瞬間、空とショベルカーは色を交換したんです。
それを目の当たりにした時、空は何かしらの理由でショベルカーへの負けを認め、あずき色を貰って、ねずみ色を渡したんやと思ったんです。
そう考えると、空が高架下の暗力に引っ張られて雲を増やしても何ら不思議じゃありません。
三鷹の空は意識が高い気がするのです。
ここまで、僕なりの見解を述べてきました。
正直言って三鷹がずっと曇っていようが、僕には一切の害がありません。
僕が一番不快だったのは、僕がこの事に気付いている事に三鷹市長が気付いている。にも関わらず、市長が僕から逃げ回っていること。それが一番嫌です。
現、三鷹市長は河村孝さん。金メダルをかじって丸飲みして「プハー!」と言いながら気絶した河村たかしさんと同じ名前ですが、別人物です。
一度、三鷹で河村氏とすれ違ったことがあるんです。
河村氏は歩きながらセブンイレブンのホットスナック、揚げ鶏を食べていました。
食事中に申し訳ないと思いながらも、僕は「河村さん、三鷹ってそうですよね?曇り続けてる事はこのまま公表しないつもりなんですか?」という腹で、決してそれを口にしてはいませんが、河村氏の至近距離まで近づいて無理やり目を合わせにいったのですが、一切目が合わなかったのです。
河村氏は早歩きで避けるように路駐していたタントカスタムに乗り込みました。そして発車しながら窓を開け、僕の目を見てベロを出してきたのです。
有事に備えて一応ナンバープレートは写真に収めたのですが。
必然か偶然か?
その瞬間に大雨が降り出したのです。
「これ以上関わるな」という空からのメッセージと捉えて、そこからしばらくは三鷹の曇りについて考えることを止めていたんです。
しかし、今回この場でお話させて頂きました。
それは僕が日常でさまざまな悩みを抱え、何かから逃避したいという気持ちの表れなのかもしれません。
