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「行雲、初日のまなざし」フォトエッセイ・里山スケッチ(岩手日日新聞 2023年1月20日掲載)+α

岩手県南の地元紙、岩手日日新聞にて連載中のフォトエッセイ。
過去作紹介。2022年4月~2023年5月は「山」をテーマに連載しました。
撮影地:岩手県一関市室根町 大森山

OM SYSTEM OM-1,M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40㎜ F2.8 IS PROⅡ,ハーフND
雲の中、大森山山頂より初日の出を望む。

「行雲、初日のまなざし」

 元日、ふかふかな雪を踏み抜き目指す大森山の山頂(室根町津谷川 759㍍)。夜明けに染まり始めた東の空。青白い樹林、山頂まで続く防火帯を急ぎ登る。小鳥のささやきに歩みを緩め、振り返れば室根から気仙郡の山並み。ところが、一段と神々しく思えた眺望は、たちまち迫りくる雲の中へ消えてしまった。
 初日の出を求め訪ねた大森山。せっかく山頂に到着するも、雲が押し寄せて御来光は拝めず。意気消沈しかけたその時、空の明るさと色合いが様変わり。流れる雲が薄らぎ、太陽が輪郭を現したのだ。雲に乱反射した陽光は、まぶしい朝日色を帯びて情熱的。なおかつ、いてついた草木が厳冬の冷たさを実感させる。まるで夢幻の世界。雲行き次第で見え隠れする太陽は、ゆっ くりとまばたきしているよう。
 やがて、風はうなりを上げ、 頭や肩に雪が積もる。思い描いた景色には出会えなかったが、自然の恩恵を享受し、感謝。結果を導く最善の努力がより良い未来を築くと信じ、同山への再訪を誓う。


・・以下、岩手日日新聞HP版限定の掲載写真・・

OM SYSTEM OM-1,M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40㎜ F2.8 IS PROⅡ,ハーフND

 元日、大森山の防火帯から北東方面を望む。左に室根山、朝焼けのもとに気仙郡の山々が連なる。眼下は気仙沼市川上の田園。数分後、この神々しい景色は雲の中へ消えてしまった。

OM SYSTEM OM-1,M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 IS PRO

 霜が降りたガマズミの果実。冬の大森山山頂をひっそりと彩る。別名、ソゾミとも呼ばれる本種。その真っ赤な果実は酸味があり、焼酎付けやジャムなどに用いられる。

OM SYSTEM OM-1,M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40㎜ F2.8 IS PROⅡ

 枯れ残ったミヤマトウバナ。根は冬を越し、夏から秋に白い花を咲かせる。山頂部は風当たりが強く、雪が飛ばされやすい。加えて、例年より積雪が少ないため、背の低い枯草が目に留まった。

OM SYSTEM OM-1,M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 IS PRO,ハーフND

 8日、大森山の山頂を再訪。南三陸町方面に朝日が昇る。

OM SYSTEM OM-1,M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 IS PRO,ハーフND

 8日、日の出直後の西方面。眼下に室根町津谷川、一関地域に雲海が広がる。右上には、雲間に霞んで沈む今年初の満月(ウルフムーン/狼月)。

OM SYSTEM OM-1,M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 IS PRO,ハーフND

 午前中の好天は、元日より一週間後のことであった。昇りゆく太陽に小泉湾が輝く。その右隣には志津川湾。左隣の徳仙丈山(気仙沼市・710㍍)は、大森山と同じくツツジの名所。




・・・・ 撮影と創作裏話について ・・・・

 同エッセイ内で取材地の再訪を誓っても、全くそれを果たさないことが常でありますが、今回の大森山については別。そもそも、2023年当時以前から何度も訪れている山であります。職場、自宅からでも登山口まで車で1時間前後で行けて、登山口から山頂までは片道20分程度。登山より移動時間の方がかかってしまうわけですが、気軽に良い展望を満喫できる行きつけの山なのです。ツツジが満開になる5月には、毎年登っています。

 冬期間、麓は無雪でも大森山山頂は雪化粧、ということもある同山。山頂の低木は寒さで凍てつき、以前は立派な樹霜ができていたようです。ところが、近年はめっきり暖かくなってしまい、積雪量が少なく樹霜の出来もいまいち。片や、雪が少ないおかげで登山口まで車を入れられて登山も楽だったことは事実です。

 取材は元日と、その一週間後に決行。初日が撮れなさそうな状況に苛まれた時は、どうしようかと困惑しましたが、天に恵まれ何とかなった回でした。初日の写真は、却って幻想的になったので今でも気に入っています。空の赤さと山頂の青白さの対比も絶妙でした。太陽の加減によって現場の色味が様変わりするのは面白かったです。ただ、遠方の景色、特に海側の景色は全く見えなかったので、一週間後に再挑戦。結果、一関側に雲海も見れてよかった!

 特に記事のメインになった初日の写真は明暗差(コントラスト)が大きくなってしまい、このような写真は新聞紙面に印刷すると見事に白飛びと黒潰れが起こります。また、微妙な色味の再現も相当難しく、当時、編集さんに何度も写真の入れ替えと校正刷りをお願いしてしまいました(ごめんなさい!)。それでも、最後まで自分が納得できる仕上がりにならず、かなり妥協して(納得いかないまま)掲載に至った苦い記憶が今でも鮮明に蘇ります。

 あれから3年以上が過ぎ、筆者の編集技術と新聞社の印刷技術がかなり向上して、編集さんに写真の差替えを何度お願いするようなことは少なくなってきました。こだわることは悪いことではないと思う一方で、誰かを巻き込む以上、空気を読むというか、節度を忘れてはいけないと肝に銘じています。


                    (2026年7月11日の思い出し)


<文・写真 久保川イーハトーブ自然再生研究所上席研究員 佐藤 良平>



※リアルタイムの連載記事は岩手日日新聞社HP版からご覧いただけます。⇩
https://www.iwanichi.co.jp/special1/special1_cat/satoyamasketch/

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