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序曲は鳴り止まない ──櫻坂46「1st YEAR ANNIVERSARY LIVE」へ寄せる期待

改名から早1年。驚異的な速度で進化を続ける櫻坂46が、武道館という聖地で何を見せるのか。 その「熱狂の正体」と、セットリストに隠された緻密な戦略を読み解きます。

櫻坂46として生まれ変わってから、早一年。彼女たちはこの短期間に驚くべき密度のライブを重ねてきた。

だが、冷静に考えれば、これは異常な事態だ。手元にあるシングルはわずか3枚。持ち歌の数が圧倒的に限られる中で、90分から120分という長尺のショーを成立させなければならないのだから。

その困難なパズルを、彼女たちはどう解いているのか。 そこには、欅坂46時代から総合演出を務めるTAKAHIRO氏の手腕と、彼女たち自身の「ライブこそが主戦場である」という矜持が見え隠れする。

「待つ時間」さえも演出に変える

古くからのファンであれば、会場に足を踏み入れた瞬間から「儀式」が始まっていることを知っているだろう。

開演を待つ場内。流れているのは、彼女たちの持ち歌ではない。重低音が響く、独特のインストゥルメンタル・トラックだ。 一般的なアイドルライブであれば、既存曲のオフボーカルを流して場を温めるところだが、チーム櫻坂(欅坂)はそれをしない。

あえて不穏で、しかし高揚感を煽る未知の音を流すことで、「これから日常とは違う世界へ連れて行く」という無言の宣言を行っているのだ。 配信ライブの待機画面においてさえ、このこだわりは貫かれている。細部に宿るこの美学こそが、私たちが彼女たちを信頼する理由の一つだ。

そして、暗転。 メンバーによる影ナレを経て、あの「Overture」が鳴り響く。

改名前から受け継がれる伝統だが、この導入曲の完成度は異常だ。映像と音が同期し、観客の心拍数を強制的に引き上げる。 それは観客だけではない。以前、メンバー自身がインタビューで語っていた。「Overtureを聴くとスイッチが入る」と。

あの音は、少女たちが「アイドル」から「表現者」へと変身するための変身音であり、会場にいる全員を共創関係にするための合図なのだ。 ライブごとに刷新される映像演出も含め、これほど贅沢な導入を私は他に知らない。

「櫻エイト」システムの課題と進化

しかし、熱狂の裏には常に課題が潜んでいる。

楽曲数の不足は、どうしてもダンストラックやMCでの「繋ぎ」を必要とする。加えて、櫻坂46が採用している「櫻エイト(全曲に参加する8人のフロントメンバー)」というシステムは、特定のメンバーに過酷な運動量を強いる諸刃の剣でもあった。

激しいダンスナンバーの連続。衣装チェンジの猶予さえないタイムテーブル。疲労はパフォーマンスの精度に直結しかねない。

誰もが願っていた。「彼女たちを休ませつつ、ライブの熱量を維持する方法はないか」と。 その回答こそが、3rdシングル『流れ弾』であり、カップリングに収録されたユニット曲やBACKSメンバーによる楽曲だった。

先日完走した『1st TOUR 2021』ファイナルにおいて、その効果は遺憾なく発揮されていた。 BACKSメンバーが披露した『ソニア』。

この楽曲がパフォーマンスされている間、櫻エイトのメンバーには貴重な休息と、衣装を着替える時間が与えられる。単なる場繋ぎではない。質の高い楽曲で観客を魅了しつつ、主力の体力を回復させる──。

結果として、その後に続く後半のハードなセットリストにおいて、櫻エイトは再びトップギアで暴れることができたのだ。 『ソニア』というピースが嵌まったことで、ライブ全体の構成強度は劇的に向上したと言えるだろう。

武道館という名の通過点

武器は揃いつつある。 ファンとしての欲望を口にするならば、この勢いのままアルバムを制作し、セットリストの選択肢がさらに増えることを願わずにはいられないが、それは贅沢な悩みかもしれない。

『流れ弾』という強力な銃弾を装填し、ライブの構造的な弱点すらも克服しつつある櫻坂46。

来るべき日本武道館での「1st YEAR ANNIVERSARY LIVE」。 まだ披露されていない新曲たちが、あの八角形の聖地でどのように響くのか。

進化の速度を緩めない彼女たちの「現在地」を目撃できる瞬間が、今はただ楽しみで仕方がない。

(了)


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