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『写生の探究100句』 現代語俳句集

現代語俳句集です。

「写生の探究」をテーマにまとめました。

写生俳句とその風景体験の良さを楽しんでいただけたら幸いです。

「ふだん読み書きする現代日本語」を基本に、現代語・現代仮名遣い・現代切れ字(候補)を用いて詠んでいます。

下記の古語・歴史的仮名遣い・古語切れ字を使用していないこともご確認ください。

や・かな・けり・たる・たり・なる・なり・あり・をり・ぬ・べし・にて・らむ・けむ・とや・てふ・ゐて・ゐし・ありし・なりき、等々


一句ごとの風景体験を
楽しんでいってください


『写生の探究100句』
現代語俳句集


「航跡」
春の部

輪郭のしろじろ富士よ春あけぼの


梅いちりんにりんさんりん天満宮


いちりんよ水面揺れやむうめの花


大空をひっくりかえしつばめとぶ


雪しずくひづめからもよ騎馬の像


アスファルト罅も漆黒黄たんぽぽ


初蝶よ黄の野しろの野むらさき野


池に浮く空いちまいよ木の芽どき


蛙鳴くいけのみなもをふるわせて


そよかぜよ空ふるわせて初ざくら


小ながれがもつれあってよ春の川


スカイツリーふぶく桜の上にこそ


あしもとをさらさらながれちる桜 


雁帰る池の水ばしゃばしゃにして


こでまりよ咲き越えている塀の上


ねこの子と鏡のなかのねこの子と


うぐいすがはばたかす羽水浴び場


ぜっぺきよしぶきをそらに春の滝


はるの鹿くびをのばして飲む淵よ


屑散らすゆうぞら春のきつつきが


来る河のながれにかげよのぼり鮎


たがやすか夕日のなかに影ひとつ


航跡は消えのこるみちかぜひかる


やどかりよ引く波を呑む寄せる波


さくら貝夕日をうつすなみのあと


「山脈」
夏の部

葉ざくらよかげと日ざしの珈琲店


せみしぐれ「こころ」一冊机の上


アイスティー机にのこる水たまり


コンビニのとなりコンビニ夏の月


一本のくきからはらり花しょうぶ


梅雨入りよ色なくしずむにしき鯉


日かげじゅう水鏡してかきつばた


いち族の写真いちまいほたるの夜


せとうちよ島ひとつずつわかば山


はしる蟹ひっくりかえす波来ては


瀬戸内のうみまっしろに西日さす


海光よときに消え入るヨットの帆


黄の蕊のうずもれるまで牡丹咲く


いっぽんのゆびとたわむれ風鈴よ


ひろしまへいわ記念式典蝉しぐれ


仏塔よ透くまぶしさのせみのこえ


かぶと虫角振りながら生まれるか


どの田にもひとりふたりよ大夕焼


打ち水よくろくしずめて石だたみ


紺ゆかたそばにすわって藍ゆかた


金魚すくい千々の赤また千々の黒


尾ひれへと透けて金魚よ水のいろ


けいだいよ掃きのこされて蟻の列


あさの陽をあびてテントと山脈と


飛んでゆくいち羽いち羽が大夕焼


「天文台」
秋の部

そよそよとなみ打つかぜの朝顔よ


もくとうのあしもとにかげ爆心地


うらがえしうらがえすそら桐一葉  


手をすすめいっ歩も引かず阿波踊


そのしたにかおかおかおよ大花火


手をのばし手をおりたたみ風の盆


千光寺千々にあさひのつゆむすぶ


去る猫のふりむきがおよ露の路地


わたりどり陽に映え高層ビル群が


いちまいの大ガラスまど鳥わたる


コーヒーのまめ挽くまどよ秋の蝶


こまごまと赤暮れきらずいわし雲


月見船灯ともしもせず消えもせず


草のさきあけぼのいろよつゆの玉


秋嶺のこだましばらくしてかえす


すすき原うしろのみちもすすき原


空じゅうの絮に夕陽よすすきはら


はずみ来るかぜのたかさを秋神輿


たちあがるリス二三匹木の実降る


象が踏む秋ゆうやけよみずたまり


陽けぶらすダムの放流あかとんぼ


飛騨のバス霧にあらわれ霧にきえ


ゆうやみよ影濃くならぶ稲架の列


風おとのすき間すき間よのこる虫


天文台夜々落ちかかるあまのがわ


「地平」
冬の部

白鳥よ日の揺れうつるみずのうえ


二三咲く窓揺れやまずふゆざくら


関東平野ひとひらの雪てのひらに


子どもらの口からも湯気おでん鍋


窓に付く雪のひとひらふたひらが


乗降客たがいちがいのしらいきよ


信号よ行く灯来る灯のふゆのくれ


日のひかり天地の境ふゆあけぼの


枝さきをぽたりぽたりとふゆの霧


五重の塔五重をつたうふゆのあめ


いっぽんの松迫りくる絵ぶすまよ


雪嶺よさす日よこぎるとりの群れ


点々としぶくうなばらイルカ跳ぶ


冬あかねひろげフェリーの航跡が


飛びたってむすうのかげよ浜千鳥


ホットコーヒー旭が部屋の奥の奥


工場よ掛けのこされてふるごよみ


プロキオンカペラシリウス嶺の影


よこたわる八重雲からよ初日の出


はつがらす一の鳥居を飛び立つか


弾き初めようえへしたへと琴の爪


そのしたにしずんで鯉よ寒つばき


冬木の芽いしがきに影くっきりと


スキーヤー以外うごかず飛騨の山


オリオンよ地平灯ながら街ながら


終わり


◇解説・補足等

この現代語俳句集は、俳人正岡子規が提唱した『写生』の方法を尊重、重視、基本としつつ、

「ふだん読み書きする現代日本語」を基本に、現代語・現代仮名遣い・現代切れ字(候補)を用いて詠んだ作品をまとめました。

主に四季の風景を詠んだ写実的な句、叙景句が中心です。


「575の型、季語、切れ字、切れ」をはじめ、「挨拶、季感、間の概念、機知、余情、言葉の凝縮、省略、緊張、格調」など、

俳句が俳句として長い年月をかけて培ってきた特性を放棄せず、継承して活かすことを重視しながら、現代の言葉を基本にした詠法を探ったものです。

また『写生』の方法が、古典的な言葉に依存するものではない、という点についても検証など行ってみてください。

2018年〜2026年までにnoteに投稿した俳句から100句を選んで収録し、作品記録の1つとしてまとめました。


◇写生の方法の大まかな解説

実際の風景や事物を、感情表現や誇張を加えずに、より具体的に描き出して俳句に詠む方法のこと


◇使用している現代切れ字の候補について

下記は、現代語の俳句で
切れ・間を生むための語を探った記事です


◇探究シリーズ◇
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